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惜春――今日この春は二度と来ない ~京極派スペース テキスト版~

この記事は、X(旧Twitter)で毎週おこなっている

京極派スペース
(京極派和歌をテーマにした音声配信)

の音声をもとに、内容を整理し、読み物としてまとめたものです。


スペースでは特に台本も用意していませんし、話し言葉のまま思考を進めているため、
専門用語が多かったり、要点のつかみにくかったりする部分もあります。

本記事では
配信を文字起こしし、読みやすく構成を整理
それとは別に簡単な目次を冒頭に付けました


無料部分では
「この回ではどんなテーマを扱っているのか」
「どこが読みどころ・聴きどころか」
などがわかるよう、全体の見取り図を示しています。

文字起こしを整理した全文は、有料部分に掲載しています(一部無料です)
じっくり読みたい方はぜひご覧ください。


無料部分、有料部分、いずれも音声を聴きながら理解を深めたり楽しんだりする補助として、ご活用いただけたらと思います。


続けてご購入くださる方のご負担を減らしたく、マガジンをご用意しました。
各テキスト版の単発購入も可能ですが、4記事以上読まれる方はマガジンを購読するとお得になります。




惜春――今日この春は二度と来ない ~京極派スペース テキスト版~

今回のテーマは「春を惜しむ京極派和歌」です。


京極派スペース「春を惜しむ京極派和歌」

2026年5月2日放送のスペースを整えたポッドキャスト音声です。


「春を惜しむ京極派和歌」ガイド

1.京極派は「変わった歌を詠む人たち」?

2.『玉葉集』──今日の春は、今日しかない

西園寺実兼「なごりの花」――宵闇に消える残花

章義門院「心のとも」――鶯も春を惜しむ?

京極為子「と山の朝け」――明日も春を残して霞め

伏見院「おくりのつばさ」――春を見送る鳥の翼

京極為兼「今日のこよひは」――また春は来る、けれど

3.『風雅集』──花のあとにも残る春

京極為兼「こぎわかれ行く舟」――春も、舟もうらめしい

進子内親王「花ぞ残れる」――苔の上の、春の形見

藤原教兼「春のなさけ」――春の見せた「情け」


京極派スペース「春を惜しむ京極派和歌」テキスト版

・ぜひ音声を聴きながらお楽しみください。
・文章だけでも読めるよう整えてあります。
・文字起こしデータをもとに整形しているため、読みにくい箇所や漢字変換などがあるかと思います(梶間がふだん仮名表記している副詞が漢字になっている、など)。ある程度整えてはありますが、諸々ご了承ください。
・本記事の書籍リンクにはAmazonアソシエイトを利用しています。


今年は5月5日が立夏だったかな。
もうほんの数日で暦の上では夏になります。
なかなか春と秋の短い昨今でございますが、
やっぱり和歌は春を愛し秋を愛し、行く春を惜しみ行く秋を惜しみ、夏と冬はあまり歓迎しないのがお約束ではあります。

そんな中、「春を惜しむ京極派和歌」というテーマで、今日も京極派スペースをやってゆきたいと思います。


最近新しくスペースを聴いてくださる方も増えてきましたし、
このスペースをやっている時系列(2026年5月)で言うと最近、ポッドキャストも始めました。
「京極派の和歌を読む」というポッドキャストです。
内容は、こちらの京極派スペースで放送した音声をほんの少しだけ整えて、前後に簡単なご挨拶の音声もくっつけて、ほぼ転用したような形です。

なので、そういう意味で新しく聴き始めてくれた方もいらっしゃると思うんですね。
京極派スペースを前から聴いていらっしゃる方だけでなく、最近聴き始めたよという方もいるかと思うので、
この放送について簡単にご紹介します。


私は和歌の歌人で、梶間和歌と言います。
和歌を勉強し、自分でも詠むということをしています。
そんな私がいろいろな時代、それに派閥とか流派と言ったらいいかな、和歌のいろんな歌風のある中で、
一番尊敬し愛しているのが京極派という和歌グループなんですね。

その京極派の人たちや京極派の和歌がどんな風に魅力的なのか、または魅力的じゃないのか、
ということを、各回テーマを設定してお伝えするXスペース(生配信)を週1回やっています。
(2026年5月時点で)2年ぐらい続けてきました。


今日のテーマは「春を惜しむ京極派和歌」ということで、早速春を惜しんでゆきましょう。

伝統的に行く春は惜しまれるものである、ということをさっき言いましたが。


京極派というのは、従来の和歌の伝統をものすごく踏まえ、内面化して、常識として持っている人たちが、
それを一旦脇に置いてもう一度
「私の心は本当にはどう見ているか、どう感じているか」
というところを問うて歌にしていった、
当時としてはちょっと独特な、異端的なことをした人たちです。

じゃあそんな人たちが、自分たちの常識を問い直して
「行く春は惜しむべきものだろうか。いや、そんなことはない」
とやったかというとそんなことはなくて、やっぱり春は惜しむものなんですよ。
ただ、それをどんな風にことばにし和歌にしていったか、というところですね。


常識にとらわれないとか先例にとらわれないとかって、もちろんすごく大事なことでもあるし意義のあることだけど、
だからといって何でもかんでも奇をてらえばいいというわけでも、当然ないですね。

私たちは大人で、社会人で……もしかしたら学生さんもいらっしゃるかもしれないけれど、学生さんだってそうじゃないですか。
個性が大事だ独自性が大事だ、と言ういっぽうで、社会とハレーションを起こすような独自性を発揮されてもちょっと……ということもありますし、
本当に意味のある「常識を疑う」という行為と、
ただただ反発したり奇をてらったりする程度の「常識をぶっ壊す」「常識にとらわれない」というのとは、やっぱり意味が違いますよね。

その結果人の心にどのくらい残るか、訴えるか、というのも、
もちろん必ず一致するわけじゃないけど、一致することも多いです。
意味のある形で常識を疑ったものは人の心に訴えやすいし、
ただ奇をてらっただけのものは独りよがりで、長く残りません。

「だからこうすべきだ」というのも一言で言えるものではなく、難しいところではあるんですけれども、
京極派というのがただただ珍しいことをやった人たちだとは、あまり思わないでほしいかな。


隠岐後鳥羽院和歌大賞という和歌の大会があります。
日本で唯一じゃないかな、和歌の大会がありまして、冷泉家の先生がずっと選者をやっていらっしゃるんですが。
冷泉貴実子先生がご高齢なので、ある年に姪御さんがご後嗣になり、冷泉渚先生になるんですが、その年の表彰式ツアーのときはまだ野村渚先生でした。
私がそちらで大賞を取ったときの表彰式ツアーのある日、渚先生と大賞受賞者の私が1対1で食事するようセッティングされたんです。
表彰式ツアーでは、だいたいの食事で席が決まっているんですよ。
大賞の人が選者……そのときは渚先生が「選者代理」でしたけど、冷泉家の先生とゆっくりお話できるように、と配慮されたんでしょうね。

いろいろ話すなかで、「どうして和歌を始めたんですか」と尋ねられますよね。
「もともとは私は新古今から入ったんですが、今は京極派に人生捧げています」
ぐらいのことを申し上げたら
「まあ、じゃあちょっと変わったお歌を詠まれるの? 」
と言われました。

渚先生はもともと、幼い頃から和歌の家を嗣ぐために研鑽を積んできた、というお立場ではなく、
数年前に伯母様から急に「嗣いでくれないか」と言われてご後嗣に定まった方だから、
京極派についてなんてそんなに知らないですよね。
伝統的な和歌についてはもちろんご存じだし、勉強なさっていると思うけど、京極派についてはたぶんそんなに知らない。
なので仕方ないんですが、

「うーん。世間一般の認識だと京極派は『変わった歌を詠んだ人たち』になっちゃうのかな」
という気持ちにはなりました。
その場では簡単に訂正しましたけれど、世間の認識はそんなものかもしれない、と思った出来事でした。


ですので私も、詠み分けというほどではないですが、歌を出す場によって歌風は多少調整しています。
隠岐後鳥羽院和歌大賞は選者が冷泉家の先生だから、そんなに京極派っぽい和歌は詠みません。
もう少し穏当な詠み方を心がけて投稿したりします。

それでも私が真剣に愛しているのは京極派ですよ、ということで前置きが長くなってしまいましたが、
「京極派とは、奇をてらったことをした人たちではない・・・・
ということを覚えておいていただけたらと思います。

また今度、「今更改めて、京極派をざっくり説明する」みたいな回を設けてスペースをするのもいいですね。


京極派の勅撰和歌集は、『玉葉和歌集』『風雅和歌集』と2つあります。
その中から、全部は無理ですが、京極派歌人の詠んだ春を惜しむ和歌を紹介しましょう。


古寺残花といふことを
入道前太政大臣

春をしたふなごりの花も色くれぬとよらの寺のいり相の空

入道前太政大臣、西園寺実兼です。


豊浦とよらというのは大和の国の歌枕だそうです。
奈良県明日香村豊浦、日本最初の仏寺。

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