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春のドラマで思うこと  680

庭に面した廊下を歩いていたら、ふわっと花の蜜の香りが鼻に届いた。
「これは…まぎれもない春だ…」
桜が葉桜になるくらいなんだから、なんならツツジだって花をつけてるんだから初夏も近いくらいだけど、この「香り」が届く感触、ムワッと甘い空気が鼻の周りを包む感じ、この体感が来ると「揃った」感じがする。
何が?って…春が…。

見えるものって当てになるようで当てにならないというか、それだけだと片手落ちというか。
「きれいだなー」なんて眺めてたさまざまな色の花、その香りが風に、空気に混ざり始めたら、今度はその花の色さえも強い光に飛ばされ始める。
緑が鮮やかになって、空気にだんだん湿度が混ざり始めて…梅雨が、夏がやってくる。

色の隣には香りもあるんだよ、うん…なんなら、肌で感じる湿度や暑さも…。
五感をダイナミックに渡りながら季節はうねるように進んでいっているってことを今更ながら思い出した昼間だった。


そんなこの春はドラマ「しあわせは食べて寝て待て」を味わっている。

原作の漫画を今年に入ってから我が家に迎え、まだオンタイムで連載も続いているということで「これからゆっくりしたお付き合いになりそうだねー、楽しみだねー」なんて言っていたら、この4月からドラマ化とな?と、スルスル進む流れとタイミングを面白がっていた。

原作の漫画や小説がいい場合、実写化されてどうなるか…はみんな気になるところだとうと思うのだけど。
このドラマは見るたびに「はぁ…今回も良かったねぇ…」と満足度の高いため息をついているので、原作ファンとしてはうれしい着地だと思っている。
小さなエピソードが雑に扱われていないとか、オシャレすぎず日常すぎずの塩梅がよきとか…ちっちゃなことだけど大事なポイントがしっかり守られているのがいいなぁ…なんて思っている。
あ、ご飯が飯島奈美さんっていうのもうれしくなるポイントだけど。

主演の桜井ユキさんは「虎に翼」の華族令嬢があまりにもハマっていて美しかったことが印象に残っていた。
ドラマの中で彼女が言っていた「お気立てに難がおありでしょう?」というセリフを言いたくても、わたしの日常ではさっぱり言うチャンスがなかったことを思い出す。
そして、あのドラマの彼女がきっかけで「わたしはピンカールが思いっきり好きなのだ」ということにも改めて気づいた。

そんな彼女が地味目な…いや、地味な主人公の麦巻さんを演じるっていうのが全くイメージできなかったんだけど…。
女優さんとは、ドラマとは、ほんとにすごいもんだなぁ…と思うほど、麦巻さんなのだ。

不器用でたどたどしくて、手探りしながら今までとは違う人生を進んではうずくまり、また顔をあげて歩き出す…。
病気で思うようにならない自分の体、そこに絶望したり、「なーんて嘘だけど」なんて力なく言ってみたり。


このドラマを見ていると、この麦巻さんをはじめ登場人物のみなさん、そのご本人はもどかしく思ったり、進んでいないように感じているかもしれないけれど、それをテレビっていう箱(板?)の外から見ているわたしからはどの人も「変化のラインに乗っている」、ドン詰まっているようで「動き出す気配に包まれている」ように見えるから不思議だったりする。

箱の中だか外だかわかんない「ここ」で暮らしているわたしたちも、どこかから見たらそんな風に見えているのかもしれない。

力なく涙がこぼれても、「もう知らない!」ってふてくされても、それでもどこかのタイミングで待ってるであろう変化につながっているんだと思うと、ドラマの登場人物に感じる愛おしさのようなものはすべて、わたしたちにも降り注いでいるのかもしれない…なんて思うとちょっとくすぐったい。

今の自分には変化のように思えなくても、この先どうなるかなんてわからない。
それは不安にもなることだけど、同時にギフトだったりもする。

どっちにしても、一歩ずつ歩いていくのだ…歩いていけるところまで。






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