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頼みたいのに、説明する時間がないから自分でやる

「これ、お願いしようかな」

そう思ってメールを書き始めたのに、途中で手が止まる。

何から説明すればいいのか。
どこまで書けば伝わるのか。
前提から書いていくと、やたら長くなる。

書きかけの文面を消して、結局その作業を自分でやる。

説明している時間で、作業のほうが終わってしまうからです。

一人で仕事をしていると、同じところで何度も引き返していませんか。

頼む相手を探す前に、頼み方を考えるところで毎回止まっている。

この時間は、忙しさとして数えられません。作業時間にも入らないので、あとから振り返っても何に使ったのか思い出せないままになります。

説明が長くなるのは、手順が頭の中にしかないから

毎月やっている作業なら、手は勝手に動きます。

どのファイルを開いて、どこを見て、何を確認して、どこに保存するか。考えなくてもできる。

ただ、それを一度も言葉にしたことがない。

たとえば、届いた資料から必要な数字を拾って一覧に足していく作業。自分でやれば15分で終わるとします。

これを説明しようとすると、途中でいくつも枝が出てきます。

その項目が空欄だったらどうするか。
前月と数字が合わなかったらどうするか。
先方の書式がいつもと違ったらどうするか。
どこまでやったら「終わり」なのか。

自分でやっているときは、その場で見て決めています。決めているという自覚すらありません。

だから説明しようとすると、急に長くなる。

長くなるのは仕事が複雑だからではなく、判断をぜんぶ自分の頭の中だけで済ませてきたからです。

15分で終わる作業の説明に、その倍の時間がかかる。作業の手順を書いているつもりで、実際に書き出しているのは、これまで言葉にしてこなかった判断のほうだからです。

分かりすぎているから、省略してしまう

説明がうまくいかない原因は、たいてい逆の側にあります。

分かりすぎているせいで、初めての人に何が要るのかが見えなくなる。

「先月分のデータ、表に入れておいて」

自分にはこれで十分伝わります。

でも受け取る側には、先月分がどこにあるのか、表はどのファイルなのか、入れるというのはどの列のことなのかが分かりません。

省略したところは、省略したと気づきにくい。自分の中では、もう説明した扱いになっている。

そして案の定、質問が返ってきます。

そこで「これを説明するくらいなら」と感じてしまう。質問に答える時間まで含めると、たしかにその日は自分でやった方が早く終わります。

一度そこへ戻ると、次に頼もうと思うまでにかなり間が空きます。

一度で説明しきろうとすると、いつまでも頼めない

引き返す理由は、もう一つあります。

頼む前に、完璧な手順書を作ろうとしていることです。

例外も、判断基準も、イレギュラーの対応も、全部書いてから頼もうとする。

そうすると書き終わる日はきません。思い出すたびに項目が増えていって、そのうち作りかけのまま忘れます。半年後に見つけて、内容が古くなっていることに気づく。

1回目は、その1回分の指示だけで足ります。

この資料の、この項目を、この列に入れる。
どこまで埋まったら終わりなのか。
判断に迷ったら、そこで止めて聞く。

これだけで1回は回ります。

想像で先回りして書いた例外は、たいてい出番がありません。実際に出てきたときに決めれば間に合います。

手順は、頼みながら言葉になっていく

1回目に、相手がどこで止まったか。何を質問してきたか。

それがそのまま2回目の指示になります。

この質問は、手順書を一人で書いていても出てきません。自分では見えなかった省略を、外から具体的に指してもらえます。

自分の説明のどこに穴があるかを、他人が点検してくれている。 そう思えば、質問が来るのはむしろ得なほうです。

2回、3回と重ねると、説明はどんどん短くなります。

最初は30分かけて書いていた指示が、数行で済むようになる。

そのころには、その手順は自分の頭の外にも残っています。言葉になった手順は、頼む相手が変わっても使えます。人が入れ替わるたびに、一から説明し直さずに済む。

説明できるようになってから頼むのではありません。

頼んだから、説明できるようになります。

順番が逆になっているだけで、足りないものがあるわけではありません。

直近で一度やった作業を思い浮かべて、最初の3行だけ書いてみる。全部を思い出そうとしなくても、あと何を書き足せば頼めるのかが見えてきます。

説明する時間がない、は本当のこと

説明する時間がないというのは、気のせいでも言い訳でもありません。

実際、1回目は自分でやるより時間がかかります。

ただ、その1回を引き受けないと、その作業は来月も再来月も自分の手元に戻ってきます。今月で終わらせたつもりの15分が、毎月同じだけかかり続ける。1年で3時間です。

先に引き受けるかどうかは、その作業が今後も繰り返し出てくるかどうかで決まります。作業の大きさは、あまり関係ありません。


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「頼みたい作業はあるけれど、説明する時間がない」という方は、どこまで頼めるのかだけでも見てみてください。

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