誰の担当でもない汚れが、いちばん重い。
Photo by tomomiishikawa
こんな会社じゃダメ──でも、それでも私は現場を信じたい。
お客様がチェックインした部屋の洗面台に、髪の毛が数本残っていた。
バスルームの隅には、水垢がうっすら残っていた。
「これくらい大丈夫」と思った誰かの油断が、
お客様にとっては“信頼を失う瞬間”になる。
それを知った瞬間、
胸の奥がぎゅっと痛くなった。
「私たちはいいんですけど、他のお客様だと印象が悪いと思います」
そう言ってくださったお客様の優しさに、
顔を上げることができなかった。
ホテルの現場は、いつも誰かの“当たり前”の裏側でまわっている。
「施設課の範囲です」
「客室清掃の管轄外です」
「ローテーションの問題です」
責任の境界線ばかりが引かれていく。
でも、お客様にはそんな線なんて関係ない。
“ここで過ごす一泊”がすべてだ。
私は思う。
会社が変わらないなら、せめて自分だけは現場を見捨てたくない。
怒りではなく、恥ずかしさでもなく、
“悔しさ”をちゃんと感じていたい。
清掃は汚れを落とす仕事じゃない。
信頼を積み重ねる仕事だ。
その信頼を、
誰かの「これは自分の担当じゃない」で
崩したくない。
現場に立つ限り、私は逃げない。
どんなに組織が鈍くても、
誰かが声を上げ続ける限り、少しずつは変わる。
そんな“人の力”を、私は信じたい。
💬「きれいごと」でもいい。
それが、ホテルをもう一度“人の居場所”に戻す言葉になるなら。
