続・今日もこの店、あけときます。〜❸このこのおうちは〜
ぽつ。
ぽつぽつ。
扉の向こう側は、
雨だった……
小さな公園。
少し錆びた滑り台。
水のたまった砂場。
濡れたベンチ。
「ここ……。」
少年は、
ゆっくりと辺りを見回した。
ベンチの下から、
小さな声がする。
「にゃ。」
濡れた段ボール箱。
中には、
か細い声で鳴く
小さな子猫がいた。
少年は、
しばらく見つめていた。
「おまえ、ひとりなの?」
子猫は、
小さく震えている。

もう大丈夫だよ。
少年は、
着ていた上着を脱いだ。
そっと、
子猫を包む……
それから二人は……
いつも一緒だった。
学校へ行く前。
帰ってきてから。
宿題のとき。
テレビを見るとき。
眠るとき。
猫は、
いつも少年のそばにいた。

これが終わったら、遊ぼうな。
「お前の名前さ……」
少年が笑う。
「今日から────」
その先だけが、聞こえない……
……また、景色が変わる。
少年は、
少し大きくなっていた。
玄関の外から、
友達の声。
「早くしろよー!」
「今行く!」
少年は、
急いで靴を履く。
猫が、
いつものように足もとに寄ってくる。

にゃ?
早くいかないと……
「帰ったら遊ぼうな。」
カチャ。
玄関の扉が閉まる。
猫は、その場に残った。
………
次の日も。
その次の日も。
少年は、
友達と遊びに出かけた。
猫は、
────ただ、窓際で待っていた。
ある日。
少年が帰ってくる。
「ただいまー。」
でも。
いつもの場所に、
猫はいなかった。
その日、
少年は近所のあちこちを探し回った。
次の日も探した。

おぅい。どこ行ったのー……
近所も。
公園も。
路地も。
でも、
猫はどこにも見つからなかった……
しばらくして少年は、
猫を探さなくなった。
そのまま、
季節は移りゆく……
それから……
2人がまた出会うことは、なかった。
❹に、……続く
