【ぶんぶくちゃいな】「不明白播客」元中国共産党校教授の蔡霞氏に聞く(前編):中国による台湾侵攻は本当に起こるのか
ここ1週間、日本では高市早苗首相の台湾有事にまつわる国会答弁を受けた中国の態度をめぐって、さまざまな声が飛び交い、大変かしましい。
正直、筆者はその様子に既視感を感じている。
というのも、中国の取った手段はどれもかつてとったものの繰り返しであり、新意が感じられないからだ。
もちろん、中国の目的は日本経済への「数の上での」インパクトを意識したものであり、それによって日本社会に不安を巻き起こし、それをてこにして高市氏に揺さぶりをかけて「前言撤回」させたいのであろう。この制裁措置は、日本の関連各業界の各者(社)に、今後の予測を含めて大きな影響および損失をもたらすのは間違いない。だが、どう見てもそれ以上の損失を被るのは中国国内なのだ。
「観光客の引き上げ」や「アニメなど文化交流の停止」は、これまでにも何度か講じられてきた手段である。また、「日本産海鮮物の輸入停止」も、福島第一原発冷却水の海洋排出をきっかけに始まったそれが、「解禁された」と半年前に日本メディアが大騒ぎしたものの、実質的にはこの11月に一部が再開されたばかり。正直、「停止してどうなるほど再開されてたっけ?」というのが実情だ。
新意といえるものがあるとしたら、中国系航空会社や旅行会社が、日本行きキャンセルや変更に対して無条件で全額返済に応じると高らかに宣言したことだろう。日本メディアがそのままそれを伝えたことによって、「中国ではそこまでして政府の主張を支持する機運が高まっているのか」と受け取った人も少なくないはずだ。
だが、その前提として理解しておきたいのは、中国の航空会社のほとんどは国有であり、海外ツアーを組めるのもまた大手国有であることだ。中国メディアが報じている「50万枚の航空券キャンセルに応じた」も、ほとんどがそんな国有旅行会社が一方的にツアーを取り消した結果、国有航空会社の航空券がキャンセルされたものだ。
簡単に言えば、国策の執行に協力して国有企業同士が「痛み」を分け合っている図である。
一方で、「輸入アニメ前売り額新記録達成」と伝えられていた、日本アニメ『鬼滅の刃 無限城編第一章』(以下、「鬼滅」)の上映が続けられていることにも留意したい。
今回の騒ぎが起こる直前の報道によると、『鬼滅』は14日の封切り前の前売りだけで、売り上げ約1億2000万元(約26億円)を達成したという。
騒ぎが大きくなってからの20日夕刻には、「当日チケット売り上げが前日比1000万元(約2億2000万円)以上減り、集客率もわずか1%」(https://x.gd/fPkhJ )との報道も流れているが、興行成績を見ると、同日、翌日ともに当日売上トップのまま。22日になって国産映画が封切られたこともあり、売上トップの座を譲ってはいるものの、2位につけている。
なぜ、『クレヨンしんちゃん』などの上映は延期されたのに、『鬼滅』の上映が続けられているのか。なぜ、観光ツアーや航空券のように前売券の無条件全額返済の措置が取られないのか?
その理由は、『鬼滅』人気が不振にあえぐ映画業界に久しぶりの好景気をもたらしていること。そして、同作品の興行権は、業界興行ランキング統計などを扱う民間企業「猫眼電影」が上映権を買い取る形で輸入したもので、中国での興行額の多寡は日本側の売上には影響しないこと。
さらに重要なのは、国は国有企業に求めたのと同じように、民間企業に対して損失の自己負担を強要することができないことが最大の理由だ。
もちろん、国がその損失への補填策をとればできなくはないが、そこは社会主義国。もとより政府は国有企業の国策遂行による損失に対して金銭的な補償を行うわけではないため、民間企業に対してもその損失を補填するシステムが存在していないのだ。
ただ、『鬼滅』は今後、当局によって上映範囲(上映館数や上映回数)を減らされるのではないかとの噂も流れている。
しかし、コロナ以降経済不振が続く中、政府が本気で民間企業に巨額の損失を負わせてコワモテを続けられる余裕があるのか。さらに、楽しみにしていた旅行や大好きなアニメを取り上げられたり、またはその他の制裁によって庶民が被る損失に対する不満を抑え続けられるほど、中国政府は強気でいられるのか。いや、その不満をいつまで抑え続けられることができるのだろうか。
そのせめぎ合いを見る意味でも、各種「制裁措置」の背景をもっと細かに理解し、その動向の変化に注目して論じるべきだろう。
そんな状況理解の一環として、今回また「ニューヨークタイムズ」の記者、袁莉さん主宰のポッドキャスト「不明白播客」のコンテンツを、袁さんのご許可をいただいて日本語で提供したい。
今回のゲストは、中国共産党幹部を養成する中央党校の元教授、蔡霞さん。これまでご紹介してきた同ポッドキャストでも、共産党内の政治状況について、外部からは測り知れない内部の視点を提供してきた人物である。
今回のテーマは、10月に行われた、中国共産党の中央委員会第四回全体会議(四中全会)だが、ここで今話題の「台湾有事」に関わる大事な党内政治事情が語られている。外から中国を眺め、中国の示威活動に踊らされて大騒ぎする前に、ぜひ読んであなたの意見の参考にしていただきたい。
なお、いつものように、中国の体制や政治に疎い方にはわかりにくいであろう用語や人物名などに[]で注釈、補足を加えた。
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◎「不明白播客」「不明白播客」元中国共産党校教授の蔡霞氏に聞く(前編):中国による台湾侵攻は本当に起こるのか
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