筆を折ろうとした夜に、心の中の友人が現れた
今年は覚悟を決めて、三つの公募展に応募した。
どれも、自分の中でできる限りの力を注ぎ込んだ作品だった。
けれど、結果はすべて予選落ち。
結果のメールをひとつずつ開くたびに、胸の中が静かに冷えていった。
努力は報われないのか。私は絵を描く力がないのだろうか。
そんな言葉が、何度も頭をよぎった。
アトリエの片隅に並ぶ絵具や筆を見ても、手を伸ばす気になれなかった。
「もう、やめようか」
そう心の中でつぶやいた夜、私はいつものように瞑想を始めた。
10分ほど、ただ呼吸を見つめながら目を閉じる。
浮かんでくる思考は追い払わず、ただそのまま流していく。
やがて心の中に、ひとりの“友人”がふっと現れた。
その人はいつも静かに、私を見守ってくれている存在。
姿形はないけれど、不思議とあたたかく、
心の奥で小さな灯りのように寄り添ってくれる。
私はその友人に、思わず語りかけていた。
「私には、絵を描く力がないのかもしれない」
すると、友人は少し笑ってこう言った。
「あなたが絵を描くのは、誰かに褒められるためじゃないでしょう?」
「あなたにとって、絵を描くことは“生きること”そのものだったはずだよ。」
その言葉を聞いたとき、胸の奥で何かがほどけた気がした。
そうだ、私は評価のために描いているわけじゃなかった。
目の前の空や森の静けさ、光の粒のような記憶を描きたかっただけだ。
外の誰かに認めてもらうためではなく、
自分の中にある“なにか大切なもの”と繋がるために筆を取ってきた。
それを、いつのまにか忘れていたのかもしれない。
翌朝、私は静かにアトリエに入り、
まだ乾ききっていないキャンバスにそっと筆を置いた。
絵の具の匂いがふたたび部屋に満ちていく。
その瞬間、あの夜の友人の言葉が静かに蘇った。
たぶんあの友人は、私の心の奥にいる「光」そのものなのだろう。
見えなくても、消えることのない灯。
絵を描くことは、呼吸をすること。
そして、描く理由を見失ったときこそ、
心の奥にいる“静かな友人”の声に、耳を傾けたいと思う。
もし、私の描く風景や光の絵が、
あなたの心にもそっと寄り添えるようでしたら、
こちらからご覧いただけたら嬉しいです。
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