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私と福祉 知る、つながる、混ざり合う。 福祉をひらくワークショップ2025 開催レポート

「福祉を地域へひらく」をテーマに、福祉の新たなネットワークを広げるワークショップ「私と福祉 知る、つながる、混ざり合う。福祉をひらくワークショップ 2025」が、2025年10月9日、エキパル倉吉 多目的ホールで開催されました。主催は鳥取県、企画・運営は株式会社めぐが担当しました。

鳥取県内には、福祉活動に取り組む人々はもちろん、福祉の看板を掲げずとも、地域に寄り添いながら居場所や機会を提供している個人・団体が数多く活動しています。今回はそうした多様な担い手が一堂に会し、情報共有や関係づくりを行いました。

まず精神科医療、人と動物の共生、若者の就労支援といった異なる立場から福祉に関わる3名がトークセッションに登壇。続いて、登壇者と多彩な参加者がテーブルを囲み現場の知恵やアイデアを交わすワールドカフェの時間を設けました。

このレポートでは、福祉と地域の新たなつながりが生まれた一日の様子と、参加者の声をお届けします。

孤独・孤立と身近な福祉

今回のイベントは、とっとり孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム※の活動の一環として開催されました。

孤独・孤立は、特別な誰かの問題ではなく、私たちの日常に静かに潜んでいるものです。
「福祉」は、誰か特別な人が行う活動ではなく、図書館やアート、カフェ、スーパー、農業など、私たちの暮らしのあちこちに息づいています。

企画のコンセプトは「ホーム」。「鳥取県全体がまるで家のように、自分らしくいられる地域になれば」、そんな願いを込めて、広報物には家に人が集う様子を描いた温かなイラストを使用しました。

また会場のテーブルには、「寝室」「リビング」「こども部屋」「書斎」など、家の中の空間をイメージした名前がつけられています。秋晴れの光が差し込む会場には、 多くの参加者が続々と集まり、5人ほどのグループに分かれて、各テーブルに着席。開始時刻まであちこちで名刺交換や挨拶が交わされ、和やかな空気に包まれました。

初めて参加する人もいれば、前回に続いて参加した人、この場以外ですでにつながりのある人もいて、さまざまな関係性が自然に交差しました。時間が進むにつれて会場のにぎわいは増し、司会者が開会のタイミングを見計らうほどでした。

オープニングでは、鳥取県 孤独・孤立対策課の中島 真子さんが登壇。

「鳥取県は令和4年に『孤独・孤立を防ぐための条例』を制定したことをきっかけに、行政だけでなく地域や支援機関、企業などと連携しながら課題に向き合ってきました。
このワークショップは昨年度に続いて2回目の開催です。今年度は新たに関心を寄せてくださる団体からの参加も増えました。この場をきっかけに心のつながりを広げ、お互いを知り、支え合う関係を築いてください」と呼びかけました。

※鳥取県の孤独・孤立対策に取り組む、さまざまなNPO法人や社会福祉法人等の支援機関と協力し、取り組みの推進につなげることを目的として設置されています。

私と「つながりづくり」トークセッション

ワークショップの前半では、3名のゲストによるトークセッションが行われました。
トークセッションの一部をご紹介します。

ゲスト 
・社会医療法人仁厚会 医療福祉センター 倉吉病院 運動療法士・社会福祉士 河本 耕一 さん
・認定NPO法人 人と動物の共生センター 理事/鳥取支部長 松本 温子 さん
・とっとり・よなご若者サポートステーション 総括コーディネーター 永見 陽平 さん

きっかけは、目の前の一人との関わりから

ー今の仕事をするきっかけややりがいを教えてください。

【河本さん】私が孤立や引きこもりがちな方への支援に取り組むようになったのは、居室からなかなか出られない患者さんの活動づくりを任されたことがきっかけでした。

ある50代の女性が、挨拶もできなかった状態から少しずつ会話や集団に参加できるようになり、やがて地域の農作業にも関わるように変化しました。

そのときに「河本さん、ありがとう」と笑顔で声をかけてくださったことが本当にうれしくて。「もっとこうした関わりを増やしたい」「ありがとうと言い合える関係を広げたい」という思いが強くなりました。
私が大切にしているのは、顔見知りで挨拶を交わすような「緩やかなつながり」です。支援する・されるという関係だけでなく、ちょうどいい距離感のなかで関係を築くことで、いざというときに、ふと思い出してもらえる存在になれたらと考えています。

【松本さん】私はもともと犬が好きで、「自分の会社でペットホテルをやれたらいいな」という気持ちから、動物に関わる仕事を始めました。そのうちに、ネットで「鳥取 保護犬」と検索した方からの、犬猫を保護してほしいという相談が増えていったんです。

「保護依頼ってずっと続くのかな……」と疑問を持つようになり、いろいろな勉強会やオンラインセミナーに参加するようになりました。「そもそも保護される動物がいない社会を目指さなきゃいけない」という、人と動物の共生センターの考えには衝撃を受けました。

それがきっかけで本部である岐阜に半年間学びに行き、人と動物の共生センター鳥取支部を立ち上げました。

【永見さん】もともとは地元のケーブルテレビ局で20年ほど働いていました。あるとき、高校生と大人が一緒に課題解決に取り組むワークショップに参加して、最初はあまり話せなかった高校生が最後には堂々とプレゼンする姿に感動しました。

若い人のサポートをしたいと思ったのが、就労支援の仕事をはじめたきっかけです。

また、身近な子どもの不登校をきっかけに、「もっと学んで子どもたちを支えたい」という気持ちが芽生えました。ちょうどコロナ禍で大学生がキャンパスに通えない時期だったこともあり、「このままだと若者たちの未来はどうなるんだろう」という危機感から、キャリアコンサルタントの資格を取得しました。

地域とつながりながら、今できることを形に

ー今の関心ごと・エネルギーを注いでいることは何ですか?

【松本さん】前回のワークショップに参加したことがきっかけでご縁をいただき、日南病院のチームに加わって「人と動物の医療福祉を豊かにする研修事業」に参加するようになりました。

また動物の「殺処分ゼロ」の課題にも力を入れています。表面的な数字の達成の裏では、保護団体やボランティアに大きな負担が集中しているのが現状です。根本的な予防と仕組みづくり、いわば「蛇口を閉める」ことを進めています。人と動物が安心して暮らせる社会を、多くの方と連携しながら目指しています。

【河本さん】倉吉病院では、世界自閉症啓発デーや世界メンタルヘルスデーなどに合わせて建物をライトアップしています。

これを一方向の発信で終わらせず、双方向のやり取りが生まれる企画にしたいと考えたんです。そこで、就労支援事業所の利用者さんたちと一緒にシンボルカラーのゼリーを作り、関係機関へ届ける取り組みを始めました。ゼリーを味わいながら、馳せた思いやメッセージを当事者やご家族、関係者から寄せていただいています。それらを広報誌などで発信し、地域全体で思いを共有・広げています。

精神科医療はまだ敷居が高いと感じられることも多いですが、「ゼリーを届けてくれたあの病院に相談してみようかな」と思ってもらえるような、気軽で緩やかなつながりづくりを大切にしています。

※イベントの翌日、10月10日は世界メンタルヘルスデー。シンボルカラーである緑にちなんだゼリーを、参加者の皆さんのために会場へご用意くださいました。

【永見さん】サポステに来る方は、まずアルバイトやパートから始めて、正社員を目指す方がほとんどです。でも、正社員は1日8時間働くのが基本。今はパートやアルバイトでも時給が高くなり、求められるスキルも上がっています。そのプレッシャーの中でなかなか一歩を踏み出せない人も多くいます。

そこで、アルバイトと正社員の「間」を埋めるような新しい機会をつくりたいと考えています。

たとえば、単発の仕事であっても、同じ地域で繰り返し働けて、地域の方と顔の見える関係を築きます。そしてその安心感の中から、次のステップへ進めるような仕組みです。みなさんと一緒に、そうした場を少しずつ増やしていけたらと思っています。

人によって得意なことは本当にさまざまです。ものづくりに集中できる人もいれば、黙々と作業するのが得意な人もいる。それぞれの特性を生かしながら柔軟な働き方を広げていくと、出会いや居場所を見つけることにつながります。それは、孤独・孤立から抜け出す大きなきっかけになる、そう感じています。

つながることで生まれる支援の新しい形

ーこのプラットフォームを活かしてやっていきたいことは何ですか?

【永見さん】以前、「コモンってなーに?」をテーマにトークイベントを開催したことがあります。そこで印象的だったのは、物や自然環境、社会インフラだけでなく、人も公共財なのではというお話です。

まちの書店や図書館がそうであるように、私たち一人ひとりも公共財。今日集まった一人ひとりが公共財として地域の中で機能し、誰でも自由にこのプラットフォームを使える仕組みになればと思っています。

【松本さん】犬や猫に関する支援に入るときに、飼い主さんから相談を受けることもあります。私は人の支援は専門分野ではないのでわからないこともあり、自分では抱えきれないときには、専門の方や支援機関に相談させていただいています。

たとえば、ご本人は「仕事をしたい」と言いながらも、実は今の環境に満足しているケースがありました。支援機関の方に相談するなかで、自分が焦りすぎていたことに気づかされることもあります。

支援が必要な人を専門機関へつなぐだけでなく、支援者同士が相談し合えるのもこのプラットフォームの強みです。アドバイスを受けることで気持ちが軽くなり、長い目で支援を考える安心感にもつながっています。今後もこうした機会を通じて、さまざまな方とつながっていけたらと思っています。

【河本さん】今後もこのような場に参加し、みなさんの取り組みを伺いながらつながりを広げていきたいと考えています。

ライトアップ企画に合わせてゼリーを作ったような取り組みをお知らせして、「私たちもやってみようかな」「届けてもらえて嬉しかった」といったキャッチボールが、双方向に生まれる仕組みを作っていけたらと思っています。

また、近年は統合失調症だけでなく発達障害の方など訪問介護の対象が多様化し、小学生への自宅への訪問も増えています。病院だけでは対応しきれない課題も多いため、他分野の方々と現場を行き来しながら情報を共有し、支援のヒントを得ていければと考えています。

ワールドカフェ ~参加者同士の対話~ 

後半はワールドカフェ形式のワークショップが行われました。ワールドカフェとはカフェのようにリラックスした雰囲気の中で少人数のグループに分かれて自由に対話する手法です。

参加者は各テーブルでテーマを元に話し合い対話を深めました。話し合いながら気になったワードやフレーズは、模造紙にメモしておきます。意見やアイデアを自由に書き留めることで、他のグループへ共有しやすくなり、気づきやヒントも明確になりました。

1ラウンド目テーマ「今の仕事をしているきっかけ、やりがい」

7つあるテーブルの一つでは、不登校が話題に上がりました。

息子さんが不登校になったことをきっかけに、親の会を立ち上げた女性はこう語ります。
「私は専門職でもない、ただの『経験した親』なんです。専門機関に行って余計にしんどくなってしまう親も多くて……。だからこそ、当事者同士で話せる場が大切だと感じています」

民生委員を務める女性は、「今はスクールカウンセラーなど専門職に任せるという風潮もあり、私たちのような立場では関われない部分もあります。でも、地域のおじいちゃん・おばあちゃん的な立場だからこそ、子どもたちが自然に寄ってきてくれることもあるんですよね」と話されました。

2ラウンド目テーマ「今の関心ごと・エネルギーを注いでいること」

次はメンバーをシャッフルした別のテーブルへ移動します。前のグループで出た意見を共有しながら、新たなメンバーで交流します。

外国人支援に携わる参加者のいるテーブルからは、「目指しているのは、外国の方と地域の方が『自然に出会える場』づくり。その方のことを『知りたい』と思うきっかけを増やしたい」という声が上がりました。

同席した、地域包括支援センターで働く参加者は、自治会活動の担い手不足という地域の課題をあげ、地域の関係づくりや世代・文化を越えた交流の重要性を共有しました。

同じテーブルの参加者と意見を交わす中で、「相手を変えるより、自分の味方が変わる瞬間を増やしたい」といった印象的な言葉のやり取りが生まれていました。

3ラウンド目テーマ「このプラットフォームを活かしてやっていきたいことは」

3ラウンド目は1ラウンド目のテーブルに戻り、再び対話を深めました。あるテーブルでは、多様な立場の人々がつながり合うことの価値が、改めて確認されていました。

具体的な行動として上がったのは、「業種業態が違う団体や個人が、蜘蛛の巣のようにつながり合うことで、支援を必要とする人とどこかしらでつながれるのではないか」「今日名刺交換した方に、困ったら連絡してみようと思えた」などの意見です。このワークショップで生まれたつながりを、地域の新たな動きにつなげていこうとするポジティブな声が聞かれました。

トークセッションやワールドカフェを通して強く感じたのは、福祉に関わる人々が、それぞれの現場で悩みながらも前向きに歩み続けているということです。立場や経験の違いを超えて交わされた対話からは、大きなエネルギーが伝わってきました。

印象的だった感想に、「みなさんはそれぞれ、強い使命感をもって活動されていると思います。私たちは活動する立場にいるからこそ、ときには『休む』ことも大切にしたい」というものがありました。

この言葉から感じたのは、「支える立場にいる人にも、安心して力を抜けるつながりや場が必要」ということです。地域の福祉を支える活動は、一人ひとりの持続可能な歩みによって成り立っています。支える人が安心してつながれる場、そこへ向ける視点の大切さを改めて教えられた気がしました。

孤独や孤立が社会課題となるなか、福祉の枠を超えて人と人とのつながりを育む取り組みが、地域のあちこちで広がりつつあります。日々の何気ない行動が、誰かにとって思いがけない支えになることもあるでしょう。

次回のワークショップは、2026年1月28日(水)にエースパック未来中心にて開催されます。みなさまのご参加を心よりお待ちしています。

とっとり孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム

【2026年1月にもワークショップを開催🎪✨】

鳥取県内で福祉活動や、福祉の看板を掲げずとも、県民に寄り添い、
居場所や様々な機会提供をしている個人・団体が集まり
「情報共有」「関係作り」ができればと企画いたしました。
みなさまのご参加、お待ちしております。

■ワークショップ概要
 日時: 2026年1月28日(水曜日)15時〜17時
 場所: エースパック未来中心 セミナールーム3
    〒682-0816 鳥取県倉吉市駄経寺町212-5
 内容: つながりや発見、協働に向けたアイデアを生み出すことを
    テーマに参加者主体の対話プログラムを実施します。
    オープニング
    グループワーク 「つながり発見」
    グループワーク 「プラットフォームで育む、共創のアイデア」

【お申込みはこちらから】
https://forms.gle/SzrgUsZN3PHuL5VEA



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