『 ワインソムリエ、芸術家になる。』 Day3 創ることは、私の生き方だった【後編① 】
カラフルが得意な私が、あえて『 無機質 』を創った。


前回のDay2では、ラッピング展示会やオイルランプ等。
これまで私が「創ること」と共に歩んできた時間の軌跡について書きました。
今回は、
その中でも少し異色だった作品のお話。
「あるものを綺麗にする」のではなく、
一度すべてを剥がして、
そこから自分の世界を創った作品です。
それは、
ビーチクルーザー。
自転車のカスタムでした。
「自転車カスタム。してみない?」
きっかけは、当時お世話になっていた美容師さんからの軽い一言。
けど、何か面白い事を私に期待してるような。。w
そんな一言でした。
「自転車のカスタムコンテスト出してみない?」
と改めて。
当時の私は、自転車のカスタムといえば、どちらかというと男性がやるもの。
実際、私がネットで見た、
過去のビーチクルーザーのカスタムコンテストも、出展者の9割9分が男性でした。
そして私自身も、
自転車カスタムといえば、ブランド品パーツを買って取り替える。
ペイントをプラスで少しする。
そのくらいしかカスタムをしてきませんでした。
でも。
私は何故かこういう時に限って、
「面白そうだな。今までと違う事なんかやってみるか。」
と、面白アンテナがピン!と出てしまう人間。笑
物を創ることが好きだった私は、
『 なんか面白い。唯一無二の物が創れるかもしれない 』
と、小さな闘志と炎が着火した。
そんな瞬間でした。
とりあえず、
新品のビーチクルーザーを購入。
価格は約6万円。
普通なら、そこから
好きな色にプラスで塗装したり、タイヤやサドル、スポークなどのパーツを交換したりして、自分らしい一台に仕上げていくのだと思います。
私も最初は、そうあるべきなのか。とやはり考えていました。
でも違うな……
と悩みながら、ふと直感で思ったんです。
「プラスの価値を与えるだけじゃ、つまらんな。」と。
私はもともと、カラフルな世界を創ることが得意でした。
だからこそ今回は、
あえて逆の世界を創ってみよう。
そう思いました。
プラスの華やかさや個性ではなく、
無機質。
鉄そのものが持つ、
圧倒的で静かな存在感。
機械的で、少し無骨な世界。
それを、このビーチクルーザーで表現してみようと思ったのです。
まず、
『 全部剥がす。』
ここからが、私にとって一番過酷な作業でした。
新品の自転車に施されていた綺麗な新品塗装を、
剥離剤とグラインダーを使って、
ひたすらに。
剥がしていく。

せっかくの新品なのに、
一度、鉄そのものの素材が出る状態まで戻す。
地味です。
地味過ぎます。😭笑
でも、やり抜くと決めた以上、
ここで妥協することはできませんでした。
なぜ妥協できないのか?
この後、
自分で鉄のパーツを作り、
溶接して取り付けたかったからです。
鉄と鉄をしっかり接合するためには、塗装が残っていてはいけない。
そして私は、
「作品として眺めるだけではなく、この自転車を実際に毎日乗りたい!」
そう思っていました。
だから、安全性だけは絶対に妥協したくなかった。
見た目だけではなく、
ちゃんと乗れる作品にする。
それが私の中では、とても大切でした。
『 鉄から、パーツを創る 』
塗装を剥がし終えたら、
今度は鉄をカットして、
フロントフォーク。
サドル。
チェーンケース。
その他のパーツを、
自分のイメージに合わせて創っていきました。
そして溶接。
少しずつ形になっていく自転車を見ながら、
「もっとこうしたい。」
「ここは、もう少しこうしたら?」
と何度も考える。
完成形を頭の中に思い描きながら、
手を少しずつ。
着実に動かしていきました。
「どうやって無機質な世界観を表現する?」
形ができてきた次に悩んだのが、
塗装でした。
最初はいろいろな塗料を試しました。
塗ってみる。
違う。
また違う塗料を塗ってみる。
やっぱり違う。
メタリック感を出すだけなら、シルバースプレーを吹きかければ簡単です。
でも、
それでは私が表現したいものとは違いました。
綺麗すぎる。
人工的すぎる。
どこか作品がチープに見えてしまう。
この自転車が持っている、
鉄。
溶接。
パーツ。
メカニカルな雰囲気。
それらが全部消えてしまう気がしました。
だから、ひたすら「ポンポン」しました。
最終的に選んだのは、
車のマフラー用のシルバー塗料。
ベースを塗ったあと、
スポンジを使って、
手で、
少しずつ、
ポンポン。
乾いたら、
またポンポン。
一気に均一に塗るのではなく、
あえてシルバーの濃淡やムラを残す。
鉄に少し赤錆が出てきたら、
また錆を落として、
その上からシルバーを重ねる。
またポンポン。
またポンポン。
ものすごく地道な作業でした。
でも、
その地道な積み重ねによって、
少しずつ。
私が頭の中で思い描いていた
「無機質な世界」
が出来上がっていきました。
そして、完成。
こうして出来上がったのが、
このビーチクルーザーです。


カラフルな作品を創ることが得意だった私が、
この時は、
色を足すのではなく、
鉄そのものの存在感を残すことを選びました。
可愛くするのでもなく、
華やかにするのでもなく、
無機質であることを、ひとつの美しさとして表現してみた。
今、写真を見返しても、
「よくここまでやったな。」
と、少し笑ってしまいます。笑
そしてありがたいことに、
この作品は
ビーチクルーザーのカスタムコンテストで金賞をいただきました。

もちろん、グランプリをいただけたことは、
今でもとても嬉しい思い出です。
でも、
今になって振り返ると、
私にとって大切だったのは、
賞そのものだけではなかったように思います。
「私は、ずっと世界を創っていたのかもしれない。」
紙。
リボン。
花。
ペイント。
布。
鉄。
自転車。
その時々で、使ってきた素材は違いました。
創ったものも違いました。
でも、
今振り返ってみると、
私がやっていたことは、
ただ「物を作る」ということではなかったのかもしれません。
頭の中にある世界を、
素材を使って、
少しずつ、
現実のものにしていく。
私は昔から、
「 物 」よりも「 世界 」を創ることが好きだったのかもしれません。

