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🌟 なぜザ・ポップ・グループ『Y』はUKロック史に残る名盤なのか? 🌟

🎧 まずはこの一曲!『Y』を象徴する、善悪の彼岸へ突き抜けるファンク・パンク 🎧

このアルバムを知る入口として選びたいのは「She Is Beyond Good and Evil」です。オリジナルLPには収録されておらず、アルバムに先立って1979年3月に発表されたデビュー・シングルなのですが(現在の多くのCD版には収録されています)、ザ・ポップ・グループというバンドの名を決定づけた代表曲です。ニーチェの著作を思わせるタイトル、鋭く切り込むギター、うねるファンクのリズム、そしてマーク・スチュワートの叫ぶような、あるいは呪文のようなボーカル。スチュワートはこの曲を「革命の力としての無条件の愛について」と語っています。ニヒリズムを通り抜けた先に、何か肯定的なものを掴み取ろうとする——その切迫した理想主義が、ファンクの快感と暴力的な音響の中で炸裂しています。ポップ・グループの音楽が、単なる難解な実験ではないことが、この一曲でよく分かるはずです。


「She Is Beyond Good and Evil」


ザ・ポップ・グループとは?:ブリストルから現れた、パンク以後の最も過激な実験者たち


ザ・ポップ・グループ(The Pop Group)は、1977年にイングランド西部のブリストルで結成されたバンドです。メンバーは、ボーカルのマーク・スチュワート、ギター/サックス/ピアノのギャレス・セイジャー、ギターのジョン・ワディントン、ベースのサイモン・アンダーウッド、ドラムのブルース・スミス。彼らは、パンクの熱狂の中から生まれながら、パンクがすぐに保守的な様式へ固まっていくことに強い不満を抱いていました。そこで彼らが向かったのは、ファンク、フリー・ジャズ、ダブ、そして急進的な政治思想でした。ジェームス・ブラウンとオーネット・コールマン、レゲエとニーチェ。そうした本来交わらないはずの要素を、無理やり同じ器に放り込んだのが、彼らの音楽です。1979年4月にレイダー・レコードから発表された本作『Y』は、そのデビュー・アルバムにあたります。プロデュースを手がけたのは、前回取り上げたザ・スリッツ『Cut』と同じく、ダブの名手デニス・“ブラックビアード”・ボーヴェル。彼にとってはこれが最初期の“ロック”作品のひとつでもあり、この起用がまさに決定打となりました。驚くべきことに、メンバーはこの傑作を録音した時点で、まだほとんど十代でした。


1. ファンクとダブと絶叫が同居する、前代未聞の音響


『Y』の音は、一度聴いたら忘れられません。ベースとドラムは強靭なファンクのグルーヴを刻み、その上でギターが鋭利な破片のように飛び交い、サックスがフリー・ジャズ的に軋み、マーク・スチュワートの声はエコーの彼方から現れては消えていきます。デニス・ボーヴェルのダブ的な手法によって、演奏は時に骨組みだけに切り詰められ、時に音の洪水となって押し寄せる。スタジオそのものを楽器として扱うジャマイカの発想が、英国のポストパンクと真正面からぶつかった瞬間がここにあります。1979年当時、これほど無秩序で、しかも同時にこれほど踊れる音楽は、ほとんど存在しませんでした。発表時の評価は賛否が分かれましたが、時が経つにつれて、本作はポストパンクの根源的な一枚として位置づけられていきます。


2. 怒りを様式にせず、問いとして投げ続けた


ポップ・グループの歌詞は、はっきりと政治的です。しかし彼らは、分かりやすいスローガンを叫んだわけではありません。「Blood Money」「Thief of Fire」といった曲名が示すように、そこにあるのは、搾取や暴力、権力といったテーマを、神話的で断片的な言葉に変えて突きつけるやり方でした。マーク・スチュワートのボーカルは、歌うというより、告発し、痛みを吐き出し、聴き手に問いを投げつけます。整った答えは提示されません。だからこそ、この音楽は40年以上経った今も居心地が悪く、そして生々しいのです。バンドは2作目の後に解散し、メンバーはアヴァン・ジャズのリップ・リグ+パニック、ヒットを飛ばしたピッグバッグ、そしてマーク・スチュワートのソロ活動へと散っていきます。しかし『Y』が残した衝撃は、ナイン・インチ・ネイルズやマッシヴ・アタック、セイント・ヴィンセントに至るまで、ジャンルを越えて受け継がれていきました。


3. アルバム内の主要楽曲紹介


  • 「Thief of Fire」 アルバムの冒頭を飾る、強烈なファンクのグルーヴを持つ楽曲。火を盗んだプロメテウスの神話を思わせるタイトルのとおり、猛烈な熱量とともに『Y』の世界の扉をこじ開けます。

  • 「We Are Time」 6分半に及ぶ長尺曲。演奏がリズムの骨組みだけに切り詰められては膨張していく展開で、ダブの手法とバンドの即興性が最も色濃く交わった一曲です。

  • 「Savage Sea」 静けさに満ちた、不穏なアヴァン・バラード。荒々しいファンク・ナンバーの合間に置かれることで、このバンドが暴力性だけでなく、繊細な美しさも併せ持っていたことを教えてくれます。


結論


『Y』は、パンクが自らの様式に安住しはじめた瞬間に、それを蹴り飛ばして未知の領域へ走り出したアルバムです。ファンク、ダブ、フリー・ジャズ、政治、そして生々しい叫び。それらが混然一体となった音は、1979年当時はもちろん、今聴いてもまったく飼い慣らされていません。連載でここまで見てきたギャング・オブ・フォーやア・サーテン・レシオが、ポストパンクをファンクへ拡張したとすれば、ポップ・グループはその最も過激な地点に立っていました。前回のザ・スリッツ『Cut』と同じデニス・ボーヴェルの手によって、同じ1979年に生まれた二枚——この二枚を並べて聴くと、英国のパンク以後の想像力がどれほど遠くまで飛べたのかがよく分かります。『Y』は、快適さを一切与えてくれない、しかしだからこそ何度でも立ち返りたくなる、UKポストパンクの最重要作のひとつです。


本記事で紹介したアルバム

アーティスト名:ザ・ポップ・グループ(The Pop Group) /アルバム名: Y

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