〔新月〕月の見えない夜に
夜の帰り道、 私は、
「柔らかい人ってなんだろう」 と考えていた。
優しい人、 ではなく。
弱い人、 でもなく。
ちゃんと現実を生きながら、
それでも、 力まなくてもそこにいられる人。
今日出会ったその人は、
以前より少し柔らかく見えた。
前はもっと、 頑張って
“何者か”でいようとしていた気がする。
でも今日は、 呼吸をしていた。
人は時々、 “正しいこと”より先に、
“その人の呼吸” に安心するのかもしれない。
帰り道、 私はそんなことをぼんやり考えていた。
主体の言葉は、 少し遅れてやってくる。
それは、 正しい答えを探しているのではなく、
“自分と繋がったまま話そう” と
しているからかもしれない。
だから私は、 すぐに綺麗な言葉にしないで、
今夜のこの感じを、
もう少しだけ持って帰ることにした。
たぶん、 週末の魔女って、
そういう世界なのだと思う。
揺れないためじゃなく、 揺れたあと、
また自分へ戻ってくるための灯り。
