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同じ商品なのに、ここまで違う。広告を見れば、国が見える。

LION「NONIO」広告を比べて見えてきたこと

自分はデザインと動画制作の仕事を、日本と台湾の両方でやっています。
台湾に住んで数年、現地の広告業界の人たちと話したり、数多くの映像を見てきました。
その中で強く感じたのが、日本人と台湾人では、心が動くポイントがまったく違うということです。

海外に行くと、「日本と違って海外はこうなんだ」と驚くことが多いですが、
最近はその逆を感じます。
世界を見渡すと、実は日本人こそかなり“変わっている”のではないかと。
それもちょっとやそっとではなく、想像以上に独特なんです。

今回はその違いを、ひとつの題材を通して見てみようと思います。
同じ商品を扱いながら、日本と台湾でどのように広告表現が変わるのか。
LIONのマウスウォッシュ「NONIO」を例に比べてみます。


日本の広告:空気で伝えるスタイル

日本の2年前(2023/08/09公開)の「NONIO」の動画広告

日本の広告は、見ているだけで気持ちがよく、この商品を使えば毎日がちょっと楽しくなるような明るい世界が広がります。
「この商品を使えば、人との距離が自然に近づく」。そんな空気を感じさせる映像です。

ここには大きな特徴があります。

  • 課題提起をしない。 最初から理想の世界を描いている。

  • 言葉より映像。 コピーは少なく、ナレーション中心。

  • ストーリー重視。 世界観で“感じさせる”間接的な伝え方。

  • 広がりのある構成。 いくつもの生活シーンで多様性を表現。

  • 丁寧な作り。 細部まで質が高く、安心感を与える。

つまり、日本の広告は「説明しないで伝える」スタイル。
言葉よりも余白やトーンで、見る人に“感じ取らせる”設計になっています。


台湾の広告①:情報で納得させるスタイル

台湾の3年前(2022/06/08公開)の「NONIO」の動画広告

こちらの台湾版は、まったく違います。
同じ商品でも、構成が「商品の説明」に振り切られている

映像はスタジオ撮影中心で、テンポも速い。
画面いっぱいに「効果」「日本製」「フレーバー」といったコピーが大きく並び、一目で「何が良いのか」がわかるようになっています。

  • 伝えたいのは効果・日本製・香りといった明確な特徴。

  • コピーの量が多く、情報を“読ませる”。

  • 世界観よりも商品のメリット重視。

  • 日本語の文字を多用し、「日本製の信頼感」を強調。

  • 映像自体はシンプルで、内容を重視した構成。

台湾の広告は、「見て感じる」よりも「見て理解する」。
まず“納得”してもらうことが何より大切です。
これは、広告に対する信頼度の違いが背景にあります。
台湾ではステマや誇張表現も多く、「本当にいいのか?」という疑いから始まる。
だからこそ、説明と証拠が欠かせないのです。


台湾の広告②:共感と説明のハイブリッド

台湾の1年半前(2024/04/03公開)の「NONIO」の動画広告

もうひとつの台湾広告は、見た目だけ見ると「日本のCM?」と思うほど、
雰囲気や構成が日本風に作られています。
しかしこれは、みんな日本語話しているけど、日本で放映されたものではなく、台湾で制作され、台湾人向けに作られた広告です。

日本の広告に近いトーンを持ちながらも、構成はしっかり台湾市場仕様。
「日本ブランドらしい清潔感」を保ちつつ、「台湾の視聴者に伝わるストーリー」にアレンジされています。

  • 構成は「課題提示 → 解決 → 魅力訴求」の王道ストーリー。

  • コピーは多めで、商品の機能説明も忘れない。

  • “日本製”の安心感を伝えるため、日本語を多く残している。

  • ナレーションは日本語のまま、“日本ブランド”としての信頼感を演出。

  • 撮影は台湾で行われているが、日本のCM感を演出。

おそらく、「日本製であることを強く印象づけたい」という狙いがあったのだと思います。
台湾では“日本の品質”そのものが安心材料になるため、あえて「日本風の広告」を“台湾で作る”という手法が取られているのが面白い点です。


視聴回数の差が語るもの

そして、3本の広告を比べてもうひとつ興味深いのが視聴回数の差です。

  • 日本の広告:約 6.5万回

  • 台湾の広告①:約 131.5万回

  • 台湾の広告②:約 25万回

もちろん、プロモーションの規模や広告予算、配信時期など条件は異なるため、単純に数字だけで比較することはできません。
それでも、人口が約5.5倍多く、広告費も日本のほうが潤沢なはずなのに、視聴回数では台湾が約20倍も上回っているというのは驚きです。

この数字は、「どう作られたか」よりも「どう受け取られたか」の違いを示しています。
台湾では“説明型”の広告がSNSやYouTubeでも最後まで見られやすい構成になっており、「理解できる広告=見る価値がある」と感じる傾向が強い。
一方、日本の広告は「心地よいけれど、すぐ離脱されやすい」。
言い換えれば、“深く残るが拡散しにくい”スタイルなのかもしれません。


日本と台湾で見えてきた違い

3本の広告を通して感じるのは、同じブランドでも「伝え方の文化設計」がまったく違うということです。

日本の広告

  • すべてを語らず、見る人が“感じ取る”前提

  • ベネフィット(気持ち・理想)を中心に構成

  • 映像の世界観と質感で信頼をつくる

台湾の広告

  • “説明して納得させる”構成

  • メリット(機能・信頼)を中心に設計

  • コピーやテロップで安心感を補強

日本は「感じる文化」、台湾は「説明する文化」。
日本人は“信頼してから見る”、
台湾人は“見てから信頼する”。
その違いが、広告の組み立て方にそのまま現れています。


言葉と文化が、伝え方を変える

この違いをさらに後押ししているのが、言語の構造です。
日本は日本語ひとつですが、台湾には中国語・台湾語・客家語など複数の言語が共存しています。

それぞれの言語では互いに会話が通じなくても、繁体字ならすべての人が読めて伝わリマス。
だから台湾の広告では、ナレーションよりも文字情報が重視されます。
「コピーが多い」「画面内で情報を読ませる」スタイルは、この多言語社会ならではの必然です。


ローカライズの考え方

国が違えば、心の動かし方も違う。
だからこそ、動画のローカライズには工夫が必要です。

台湾向けに展開する場合、一般的に考えられる方法は3つ。

  1. 日本版に字幕をつける

  2. 日本版を台湾向けに再編集し、情報を追加する

  3. 台湾向けに新しく撮影し直す

この中でおすすめなのは②の再編集です。
字幕だけでは伝わらず、新撮はコストが大きい。
日本の映像を生かしつつ、コピーやテンポを台湾仕様に調整することで、低コストで“伝わる映像”に変えることができます。

もし反応が良ければ、次のステップで③に進めばいい。
現地で撮る前に、“台湾の心”を掴むことから始めるのが近道です。


おわりに

同じブランド、同じ商品でも、国が変われば“伝わり方”はまったく違う。
日本では「感じさせる」ことで心を動かし、台湾では「説明する」ことで信頼を生む。

どちらも正しく、どちらにも理由があります。
大切なのは、“その国の人が何に安心し、何に反応するか”を理解すること。
それを知るだけで、広告の結果は大きく変わります。


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