30歳で年収1,000万円到達までの全てを言語化してみる 0章
30歳になった年に、年収は1,000万円に到達した。夫婦あわせた世帯年収は1,700万円。33歳になった今は、年収1,200万円の水準になり、世帯では2,400万円ほどになっている。
深夜アニメ「とらドラ!」に熱狂して、ブラウン管の前で毎週木曜日の放送時間をただ待つ、という沼にハマってから約18年。東日本大震災の翌日、コンビニバイトで計画停電の中、溶けていくアイスにダンボールで蓋をして、商品も配送されないのでひたすら店内を掃除していた頃から約15年。そして会社に新卒入社してから11年の時が経った。(時が経つのが年々早く感じるというのをバカにしていたが、バカにできなくなってきた)
この連載では、年収1,000万円に到達するまでの全てを、なるべく言語化(なんとなくとか主観100%ではなく、人が読んで理解できるレベルにする)、形式化(ある程度、人が理解して真似られるようにする)してみようと思う。ひいてはそれを読んで、多少なりとも読んだ人の年収が上がったり、長期連休の暇つぶしになればとおもっている。
年収1,000万円の難易度を測る
まず、年収1,000万円というのがどれぐらいの難易度なのかを確認しておきたい。
国税庁の民間給与実態統計調査(令和6年分)によると、1年を通じて勤務した給与所得者は5,137万人。平均給与は478万円。そのうち年収1,000万円超の人は6.2%である。人数にすると約318万人。
6.2%というのはどういう数字か。
100人集めたら6人。30人で1クラスなら、1クラスに2人弱。
つまり年収1,000万円というのは「学級委員長ぐらいの難易度」である。
どうあがいても無理!ではまったくない。かといって、簡単で誰でもできる!わけでもない。立候補して、それなりの能力があって、周りからある程度信頼されている人ならなれる。学級委員長とは、そういうポジションだったはずだ。それなりの難易度設定になっている。
ここで大事なのは、世の中の多くの人がこの難易度を「過剰に高く」見積もっていることだ。ベリーハード、鬼モード、ルナティック、難易度ペルソナぐらいに思っている。実際は違う。初見でも死なないし、タイムリープも死に戻りも要らない。人生1回目でクリアできる難易度である。
なぜ高く見えるかというと、たぶん「苦労している管理職」を見すぎているからだ。そして、なり方を誰も教えてくれないからだ。攻略法を知らないゲームは、どんなゲームでも難しく見える。私の周りにも「この人は部長になれる能力と素質があるのに、なっていない」という人が多くいる。話を聞くと大抵、部長というロールでの具体的な動き方・正攻法を誰にも教わっていない。能ある鷹が爪を隠したまま、酒場で飲んだくれている元騎士団長みたいになっている。もったいない。爪は、隠し続けていると生えなくなる。
先に結論を書いておく
この連載は長い。なので、結論っぽいことと要点を先にまとめて書いておこうと思う。
結論。年収1,000万円に到達できた要因をひとことで言えば、**「何らかの"ひとつのわかりやすい決定的な要因"はなく、"複合的で重要性の高い要因の掛け合わせ"と、その"阻害要因の少なさ"」**である。
ながったらしい上にわかりにくいが、こういう表現になる。もう少し噛み砕くと、「簡単な解決策」「誰でも一撃で再現できる方法」は存在しない。ただし、**「ある程度の正しい努力を続けることができ、継続的に意思を持って取り組むことができれば、よほど運が悪くなければ再現できる・到達可能な考え方・習慣・方法論」は存在する**。
ここまで読んで「は?何言ってんの?わかりづら。」となるかもしれない。私もそう思う。22歳の自分がこれを読んでいたら、最後まで読まなかったかもしれない。
でも、だからこそ、である。めちゃくちゃめんどくさいから、達成している人が6.2%しかいないのだ。逆に言えば、このめんどくささに付き合える人にとっては、これは才能のゲームではなく、継続のゲームである。
世の中の書籍や、頭の良い人たちの発信は、それぞれ異なる観点と言葉で「めちゃくちゃめんどくさいけど、こうやると上手くいくよ」というのを何度も伝えてきていると思う。少なくとも私はそれらに助けられた。ただ、商業的な出版物は「量を減らす」か「簡略化する」しかない都合上、どうしても断片的になる。断片的な知は、中長期の実践につながりにくい。断片的な知と知を自力で結びつけて行動習慣に落とせる人は、正直どこからスタートしてもやれる人で、それがだいたい1クラスに1〜2人、ということなのだと思う。
なのでこの連載は、削らずに全部書く。そのかわり長い。時間をかけて読みながら、数年単位で取り組んでほしい。
攻略に使う地図: 4つの要因
「部長で年収1,000万円」という状態を分解すると、要因は4つに大別できる。この地図は無料で配る。各エリアの具体的な攻略が、1章以降の本体である。
① 環境要因 — 戦う場所で年収レンジが決まる
そもそも戦っている場所が良いか、という話。業界は伸びているか。ビジネスモデルは優秀か(拡大しやすく、利益が出やすいか)。経営層と自分の相性はどうか。そして、直属の上司は良い上司か。年収は、あなたの能力の前に、まず環境でレンジが決まる。ここを間違えていると、能力があっても天井が低い。
② 組織要因 — ポストの数と、あなたの希少性
その組織の中で、自分の希少価値が相対的に高いか、という話。部長の椅子はいくつあるか。座りたい人は何人いるか。競争意識の高い人、能力の高い人は組織にどれぐらいいるか。あなたの強みはその組織で希少か。ポストは、実は数えられる。数えたことがない人が多いだけである。
③ 個人要因 — 能力・意思・習慣
あなた個人がどれだけ適応しているか、という話。スキルの専門性。意思とマインドの強さ。行動習慣・思考習慣を継続しコントロールできるか。自分の感情のトリガーを把握して使えるか。そして、世の中に存在する知識・経験を持った人や資源を、他の人よりうまく使えるか。
④ 阻害要因 — マイナスを消す
到達を邪魔するものが少ないか、という話。最低限の健康が保てているか。両親、夫や妻、子供との関係は良好か。これらが崩れていると、①〜③をどれだけ積んでも継続戦闘ができない。この4要因は足し算ではなく掛け算なので、ここがゼロに近いと全体がゼロに近づく。
ちなみに、この4つには「戦略的に狙ってコントロールできるもの」と「あきらかに運要素が強く、配られたカードで戦うしかないもの」がある。両親、生まれ持った体と脳、精神的な特性。このあたりは運ゲーだ。スヌーピーも配られたカードで勝負するしかないと言っている。ただし、それ以外——業界も、会社も、上司さえも——は、あなたの裁量と選択で変えられる余地がある。運ゲー部分は、思っているより狭い。これからどう生きるかで、なんとでもなる。
## 前提: サラリーマンで部長になって1,000万円、というルートで書く
年収1,000万円への道はいろいろある。起業、フリーランス、医者、弁護士、転職を繰り返すジョブホッパー。
その中でこの連載が扱うのは「何らかの組織で出世して、部長という役職がついて年収1,000万円」の一本である。理由は3つ。取り組みやすさ・到達しやすさ・再現しやすさで軍配が上がること。時代によるスキルの陳腐化に強いこと(人間が組織を作って生きていく限り、人を束ねて管理する役割は消えない)。そして私自身がこのルートで到達したので、実態を解像度高く言語化できること。
ちなみに「本業そこそこ+副業で合わせて1,000万円」というハイブリッド案もよく見るが、おすすめしない。本業で稼げない人が副業で稼げる確率は低いからだ。稼ぐ力は本業で育つ。なので、最も再現しやすい「本業一本で1,000万円」を前提に書いていく。副業で勝手に稼げる人は、この連載を読まずに勝手に稼いでいてほしい。
ついでに言うと、部長は競争率が低い。体感として、出世したい人はあまりいない。今の若い世代は「漠然とした不安があるから稼ぎたい、でも出世はしすぎたくない」というバランスで生きているように見える。つまり、椅子のわりに座りたい人が少ない。狙い目である。
世はまさに、大部長時代。
到達すると、何がいいのか
詳細は第1章(意義編)で全部書くが、代表して2つだけ先に見せておく。
その1: 金が余る
年収1,000万円になると、手取りは年700〜750万円、月にすると約83万円になる。夫婦で世帯2,400万円の今は、手取り月ベースで100万円を超える。それなりの生活水準で暮らして、毎月金が余る。使い切れないのである。
金が余ると何が起きるか。「知らず知らず背負っていたらしい肩の荷がおりた」「胃に感じるストレスの半分は金の話だったことに気づいた」という状態になる。お金について考えなくなる。つまり、その分の思考を別のことに使えるようになる。これが思っているよりでかい。
ただ、正直に書いておくと、金は余るようになるだけで、幸福が比例して増えていくわけではない。「金がないのはつらくてめんどくさいが、金がたくさんあっても別に幸せになっていくわけではない」。ザッカーバーグは資産の99%、5兆円以上を寄付すると言った。つまりはそういうことである。金があっても、使い道がない。
その2: 没頭できる
幸せ=没頭だと私は思っている。没頭とは、最高の暇つぶしである。
簡単すぎるゲームを続けるのは苦痛だし、無理ゲーも苦痛だ。「部長になって年収1,000万円」は、段階的に難易度が上がっていって、ぎりぎり無理ゲーではなくクリアできるという、結構適切な難易度設定になっている。人によるが10〜15年、センスのあるプレイヤーなら3〜5年で到達できる水準である。私は上司に恵まれたり、運が良かったり、ゲーマーで攻略法を見つけるのが早かったから6年ぐらいだった。数年遊べて、ちゃんとクリアできる。仕事をゲーム化する上で、良い目標設定である。
このほかに、裁量が増えて会社の資源で実験できる(1億円を使う経験が20代でできる)、承認欲求が満たせる、持てる者の義務を果たせる、アーリーリタイアが現実味を帯びる、といった項目が続くが、それは第1章で言葉の限りを尽くす。
本書の構成
全7章で完結する。
-第0章(無料): 年収1,000万円は、学級委員長ぐらいの難易度である — いまここ
-第1章: どうせ暇だし、部長になろう — 意義とゲーム設計編
- 第2章: 年収はあなたの能力で決まらない — 環境要因編
- 第3章: ポストは数えられる — 組織要因と強みの希少性編
- 第4章: 能力・意思・習慣 — 個人要因編
- 第5章: 上司の見極めとボスマネジメント — 人を攻略する編
- 第6章: 具体的なムーブ全解説 — 年次別ロードマップと阻害要因の消し方編
第1章以降は各500円。完結後はマガジンで一括1,980円(単品より約1,000円安い)にする予定なので、急がない人はマガジンを待ってもらってもいい。連載を追いながら自分の状況に当てはめて考えたい人は、章ごとにどうぞ。
学級委員長は、立候補しないとなれないのだ。
つづく。
