見出し画像

【チャレがや杯2026】 いつまで待てばいいでしょうか?

「んん!おいしい」

目の前ではサチがメインのお肉を頬張りながら満面の笑みでこちらを見ている。

「お箸で食べれるフレンチとか、マイトン先輩お洒落なお店知ってはるんですね」

「うん。ここなら気楽に美味しいご飯楽しめるかなぁって」

「こういう先輩、なんか新鮮です」

その一言にドキッとして、動揺を悟られないようにちらりと前を見ると、サチは気にする様子もなくサラダのカラフルな野菜と格闘している。

(食べ方きれいなひとっていいな)

少し前に友人から紹介された女の子は、自分とは釣り合わないくらい顔は可愛かったけど、お茶碗に残る大量の米粒を見てげんなりしたところだった。

食べ方と字はきれいな人がいい。

その点、サチは同じ大学の研究室で実験を教えている後輩だから、どんな字を書くのかも知っているし、話も合う。まぁ、だからこそこうしてデートに誘ったわけなんだけど。
1日過ごしてみて、思いのほか楽しかった。こうして食事の好みも合うのが分かった。


「あー美味しかったですぅ」

ひとり、今日のデートを思い出してにやにやしている間にサチは食べ終わったようで、満足気に空の皿を見つめている。

「このワインも飲みやすくていいっすね」

「ん。美味しいよね。おれワイン詳しくないからなんてやつか知らんけど」

そういうと、二人でふふっと笑い合う。サチの前だと変にかっこつける必要もない。

「はぁ、おなかいーっぱい。そろそろ帰りますか!」

「お、おう。今日はありがとね。一緒に遊んでくれて」

「ねー。急に誘われてびっくりしました!でも楽しかったです。ありがとうございます」

律儀にこくりと会釈するサチ。

(あぁ、楽しかったなぁ。これで今日お別れかぁ)

「お会計、ちゃんと割ってくださいね」

「え、いいよいいよ。誘ったのおれやし。これでも先輩やし」

「えー悪いですぅ。あ、でも、先輩のメンツつぶすわけにはいかないっすね」

そういうとまたご馳走様ですと頭を下げる。

(お礼はいいから、また遊んで欲しい)

喉元まで出かけた言葉が出てこない。

「また明日ラボで、ですね」

「そうやね。あーめんどくせぇ」

適当に答えながら、頭の中でだんだんとサチに対する思いが大きくなっていることに戸惑っていた。

「ん?どうしたんすか?」

固まるおれを見て不思議そうにキョトンとするサチ。


サチと目が合う。

こっちの気持ちに気付かれた気がして思わず目を逸らす。


変な間ができて、「あ、あの」と言い出した時には既にサチは立ち上がっていた。


「き、今日はほんまにありがとう。駅まで送るわ」

「え、大丈夫っすよ。駅そこやし。ご馳走様でした!」


余韻に浸る間もなく、あっという間に帰ってしまったサチの後ろ姿を見送りながら、もう自分の気持ちを無視できなくなっていた。


気がつくとおれは走り始めていた。


四条大橋を渡る人の波を「すいません!ごめんなさい!」とかき分けながら、やっとサチに追いつく。


「サチちゃん!」


突然背中越しに呼び止められて驚いて振り返るサチ。


と同時になにごとかと振り返る周りの人たち。


サチとおれを中心になんとなく人の輪ができていた。だけど、ここまできて引き下がれない。


「サチちゃん!おれ!!好きです!!今言わないと!!後悔するって思って。だから、おれ!!好きです!!」



突然の告白に戸惑うサチと、盛り上がるギャラリー。

なんとなく「はい」って受け入れてもらえることを期待していたおれに対して、サチの答えは「考えさせて下さい」だった。


「あぁ」とため息ともつかない声と共に散っていくギャラリー。


「い、いつまで待てばいいでしょうか?」


おれの情けない小さな声は鴨川の水音にかき消された。






(本文1473字)


チャレがや杯2026に参加します!
みくまゆさん、コッシーさん、13回もすごい!ほんとお2人のバイタリティにはいつも感動します😆


私が選んだキーワードは、大学、告白、黒歴史、です😂


過去にこの話を書いたことはあるんですが、改めて書き直しました。
一応この後お付き合いすることにはなりましたが、この日からの数日は地獄でしたね。毎日ラボで顔合わせるのに、答え言ってくれなかったから😂


というわけで、創作にしよーかと思いつつもノンフィクションでの参加でした。


他の皆さんの作品も楽しませていただきます✨️

あらためて、みくまゆさん、コッシーさん、いつもありがとうございます😊



一応、サチとの最後の話も置いときます🥹




いいなと思ったら応援しよう!

えむのマイトン | 路地裏で遊ぼう サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー