8月27日―とある少年の夕暮れ―
「……あっつ……」
8月も後半だというのに、猛暑の続く夕暮れは、風すら運んでこない。
日に焼かれた柵には、夕暮れになってもまだ昼間の熱が残っている。
顎を伝う汗が雫となって地面に落ちた。
マンションのベランダの柵に軽く身を預け、目の前に広がる景色を眺める。
まばゆい夕日が刻一刻と空の色を変えていく。
遠くに見える山々が、夕日を背にシルエットとなって浮かび上がっている。
――「意気地なし」
昼間、彼女が言ったひと声が耳に残っている。
赤と黒。
くっきりとしたコントラストを見せる景色とは裏腹に、「意気地なし」という言葉が、陽炎みたいに胸の奥でゆらゆらと揺れている。
大切にしたいからこそ、紳士的に接してきたつもりだった。
苛立ちを覚える反面、ただの奥手な奴だと評価されていたのかと思うと、ショックでもあった。
溜め息を吐いて何気なく視線を動かすと、目線の高さの壁に、ひぐらしが一匹へばり付いていた。
さっきまで鳴いていなかったくせに、突然鳴き出す。
「ああ……もう……みんなうるさいっての!」
地面に落ちた汗の染みは、もう乾いていた。
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画像:AIで生成したイメージ画像です。
