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「夜店から」シロクマ文芸部

夜店から活気ある声が響く
人々が列を作っている。
私は今、コンタクトを必死に探している。


最悪だ。さっきぶつかった拍子に
コンタクトが落ちてしまった。
なんとしてもこの場所は死守しなければ
ならない。

祭りの風景を人々が楽しむ中
十分以上、地面しか見ていない。

(やっぱりメガネにするべきだった。)
少し色気付いて、2日前に買った
コンタクトのデビューを今日にした自分も悪い。なんとなく最初から違和感はあった。
というか家でも二回取れてた。

そんな葛藤を巡らせていると
後ろからポンポンと
肩叩かれた。
「ねぇ、まだ前に進まないの?」
振り返ると子供だった。
「ごめんね、もう少しだから」
と立ち上がって凍りつく。

ニ十人ほどの子供が並んでいた。
もちろん先頭は私である。

「ねぇ、まだなの?」「早くしてよ!」
純粋で無垢な怒りが育ち始めている。
どうやら何かのゲームで遊べると
勘違いして並んでいるようだった。

咄嗟に
「コンタクトを見つけた人には一万円!」

何故、そんな事を言ったのかは自分でも分からない。とにかく事態を収束させるためにはこれが最善だと思った。
たちまち子供達の怒りは歓喜に変わり
ゲームはスタートした。
全員が四つん這いになり宝探しが始まる。

「一回、制限時間は一分です」

気がつくと子供の審判まで登場した。
キッチリ一分、タイムオーバーは許さない。
さらに円を囲むように見張る子供達。
「あと十秒ー!」
どこから持ってきたのか、木の枝を振り回す審判まで現れた。
カオスな光景がさらに子供を呼び込み
列は三倍になった。

なんでこんな事になってるんだろう?
長蛇の列を細目で見つめていた。

そんな勝手な事が許されるはずもなく
すぐに祭りの委員会の人が駆けつけた。
「ちょっと、あんた勝手に何やってんの!」
激昂している。
絶体絶命のピンチである。
「クレームが来てるんだよ!ど真ん中でなんかやってて邪魔になってるって!」
胸ぐらを掴まれた。
(あぁ、もうどうにでもなれ。)
と思ったその時だった。

「あったー。」

ふと見下ろすと7歳くらいの女の子。
手の指には、2つきらりと光るコンタクト
無垢な笑顔でこちらを見ている。
天使が降臨したと思った。
アーメン。

激昂していた委員会の人も自然と笑みが出た。
今なら許してくれそうなので事情を説明した。
「分かった分かった。許可なく商売はダメだよ!賞金のゲームなんて開いてまったく。一万円も無しだからね!」

「えぇー!?」

後ろの子供たちからブーイングが飛ぶ。
流石にそれは可哀想だ。
見ず知らずの人間の宝探しを
手伝ったのだ。相応の見返りがあってもいい。

「じゃあ、お礼にたこ焼きで勘弁!」
手を合わせて頭を下げる。

「賞金はダメだけど、お礼くらいならいいでしょう?」
下から覗き込むように言った。

呆れた顔で委員会の人も
「まぁ、それなら」と納得してくれた。

近くの屋台に叫んだ。
「おじさん、たこ焼きお願い!」
「あいよ!いくつ?」
振り返って列を見る。
「この列に並んでいる子たち全員分」
「あいよ!にいちゃん太っ腹だねー!」
にんまりと笑う。

コンタクトは無事見つかった。
活気のある声が響いている。
立ち寄る予定のなかった、夜店から。


●シロクマ文芸部 お題「夜店から」参加作品




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