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林逋(りんぽ)~ 列仙酒牌

【讃】孤山之麓、妻梅而子鶴
(酒約)飛花飮

この林逋は、正史の『宋史・隠逸上』に載っている実在の人物です。

また、単なる隠逸の人というだけではなく詩においても名高く、その詩「山園小梅」は宋詩の代表的な傑作のひとつとされています。

<林逋_列仙酒牌>

林逋は字を君復といい、銭塘(浙江省杭州市)に生まれましたが、幼くして父を失い苦学しました。はじめ江淮(江蘇省・安徽省)のあたりを行き来していましたが、後に生まれ故郷に戻り、西湖に浮かぶ小島(孤山)に庵を結びました。

林逋は一生仕官もせず、妻帯もせず、住居に梅三百株を植え、鶴を飼って、梅を妻とし、鶴を子として暮らし、市街地には二十年も足を運ばなかったと伝えられています。

書や画にも巧みであり、范仲淹・梅堯臣等とも詩の応酬を行い、隠逸の士として高名でした。

その死後、仁宗皇帝は 林逋に和靖先生との諡を賜りました。この為、一般的には林和靖として知られ、その詩集も『林和靖詩集』となっています。

「山園小梅」詩は「疎影横斜水清淺 暗香浮動月黄昏」が名句として名高いので、前半部分だけの訳を下に書いておきます(個人的には、この詩の後半はあまり好きではない)。いかにも梅(と鶴)を溺愛した隠逸の文士を感じさせます。

題にある「山園」とは 孤山にある林和靖の庭のことであり、「小梅」とは庭に植えた梅の中でもお気に入りの梅のことでしょう。

衆芳揺落獨嬋妍   花花の散りはてたのち、ただ一つのあでやかな姿
占斷風情向小園   この小さい庭のふぜいは、すべてこの花のものだ
疎影横斜水清淺   清く浅い水のほとり、まばらな影をななめに落し
暗香浮動月黄昏   月の光あわいたそがれ、
            どことは知れず香気がただよう
(訳は小川環樹『宋詩選』のものを拝借しました)

林圃には他の仙人のように薬を作ったとか、白日昇天したといった仙人らしい事績は全くありません。その暮らしが世を離れていたので、仙人扱いされたものと思います。

というか、中国人の神仙の範囲は広く、有名な例では唐の玄宗も仙人扱いされることもありますし、三国志演義に出てくる関羽や漢の滑稽政治家東方朔といった政治的な人物から李白・白居易といった詩人に至るまで、異能の持主を仙人として崇めています。

【讃】孤山之麓、妻梅而子鶴   孤山の麓で、梅を妻、
                  鶴を子としていた。
 これはもう林和靖の生涯そのものです。

(酒約)飛花飮  「花」の字の入った詩を詠み、その字が何字目かで、
         その順番にあたる人が酒を飲む(ということらしい)。

*「飛」という字は酒約では、その次の字(こヽでは「花」という文字)の入った詩を詠み、その字が何文字目かで、それに該当する人が次の文字で指定されたこと(こヽでは、飲=酒を飲む)を行う、という規則を表している文字ということである。(受け売り)

【煩注】

林逋『宋史・隠逸上(巻四百五十七)』
林逋,字君復,杭州錢塘人。少孤,力學,不為章句。性恬淡好古,弗趨榮利,家貧衣食不足,晏如也。初放遊江淮間,久之歸杭州,結廬西湖之孤山,二十年足不及城市。真宗聞其名,賜粟帛,詔長吏歳時勞問。薛映、李及在杭州,毎造其廬,清談終日而去。嘗自為墓於其廬側。臨終為詩,有「茂陵他日求遺稿,猶喜曾無《封禪書》」之句。既卒,州為上聞,仁宗嗟悼,賜諡「和靖先生」,賻粟帛。逋善行書,喜為詩,其詞澄浹峭特,多奇句。既就稿,隨輒棄之。或謂:「何不録以示後世?」逋曰:「吾方晦跡林壑,且不欲以詩名一時,況後世乎!」然好事者往往竊記之,今所傳尚三百餘篇。逋嘗客臨江,時李諮方舉進士,未有知者,逋謂人曰:「此公輔器也。」及逋卒,諮適罷三司使為州守,為素服,與其門人臨七日,葬之,刻遺句內壙中。逋不娶,無子,教兄子宥,登進士甲科。宥子大年,頗介潔自喜,英宗時,為侍御史,連被臺移出治獄,拒不肯行,為中丞唐介所奏,降知蘄州,卒於官。

「山園小梅」 林逋
衆芳揺落獨嬋妍 占斷風情向小園 疎影横斜水清淺 暗香浮動月黄昏
霜禽欲下先偸眼 粉蝶如知合斷魂 幸有微吟可相狎 不須檀板與金樽

【参考】

松浦友久他編『続校注唐詩解釈辞典(付)歴代詩』(大修館書店)
松浦友久編『漢詩の事典』(大修館書店)
簡野道明講述『和漢名詩類選評釈』(明治書院)
小川環樹『宋詩選』(筑摩叢書)
入谷仙介『宋詩選』(新訂中国古典選、朝日新聞社)
『任渭長木刻画四种』(学苑出版社、中国)
『酒牌』(山東書籍出版社、中国)
維基文庫@web

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