♯6 居場所
彼と会う回数が増えるのと同時に、家で過ごす時間が苦しくなっていった。
唯一、弟だけは変わらず話を聞いてくれた。
私のそばにいてくれた。
だけど、その優しさのしわ寄せは弟にも向かっていた。
まだ学生だった弟は、家のことで振り回され、心身ともに疲れていった。
帯状疱疹になったと聞いた時は、迷惑かけてるって自分を責めた。
弟まで離れて行ってしまうかもしれない。
だったら自分から離れよう。
そう思った。
ご飯の時間に呼ばれて席につく。
でも私の分だけ用意されていない。
仕方なく自分でよそい、自分の部屋で食べようとすると、今度は「一緒に食べなさい」と怒られる。
何が正解なのか分からなかった。
家にいても落ち着かない。
どこにも居場所がないような気がしていた。
そんな時だった。
彼から、
「アパート借りてあげるから一緒に住む?」
と言われた。
私は笑いながら、
「でも結婚してるでしょ」
と返した。
そのやり取りを何度したか覚えていない。
そのたびに彼は、
「離婚するから」
と言った。
本気にはしていなかった。
嬉しいとは思ったけれど、どこか冗談のように聞いていた。
だけど、ある日。
彼は言った。
「離婚したよ」
私は疑わなかった。
疑うことより解放されたいって思った。
家にはいたくない。
彼といる時間だけが楽しい。
そんな毎日の中で、その言葉は希望に聞こえた。
だから私は少しずつ準備を始めた。
家を出る準備を。
そして気付かないうちに、もう後戻りできないところまで来ていた。
