「なぜ、その1社だけ契約したんですか?」ある担当者の一言で営業観が変わった話

営業1年目のとき、自分の中に「正解」がありませんでした。

何をすれば評価されるのか。 何をすれば成長したと言えるのか。

そういう物差しが、まだ自分の中になかったんです。

先輩の商談成績や社内の評価は目に見えます。 でも、それが本当に「良い営業」の基準なのかは、自分の中でずっとモヤモヤしていました。

数字が出れば褒められる。 でも、その数字がどうやって出たのかまでは、あまり見られない。

そんな環境の中で、自分なりの「これが正解だろう」というものを、勝手に作り上げていた気がします。

その代わりに持っていたのは、なんとなくのイメージでした。

「話がうまくて、コミュニケーション能力が高くて、スマートに契約を取る人」

それが「売れる営業マン」だと、当時の自分は本気で思っていました。

先輩の商談に同行させてもらうと、たしかにみんな話がうまい。 場の空気を読むのがうまくて、雑談から自然に本題に入っていく。

そういう先輩たちを見て、「ああ、自分もああならないといけないんだ」と、勝手に目標を決めていました。

営業とは、話術で人を動かす仕事だと思い込んでいたんです。

数字は出ていたのに、なぜか苦しかった

正直に言うと、数字自体は比較的早く出ました。

でも今振り返ると、あの頃の自分は「お客様のために何ができるか」より、「自分がどう見られるか」に意識が向きすぎていたと思います。

自分を良く見せること。 自分を売り込むこと。

それが営業だと思い込んでいました。

だから商談のたびに、どこかで無意識に自分を演出していました。

「今日はうまく話せた」 「今日はちょっと噛んでしまった」

そんなことばかり気にしていて、商談が終わった後は、内容よりも自分の受け答えの反省会になっていることが多かったです。

うまく話せた日は満足して、うまく話せなかった日は落ち込む。

そんな一喜一憂を繰り返していました。

今思えば、それは「お客様のことを考えている時間」ではなく、「自分のことを考えている時間」でした。

ある商談で聞いた、忘れられない話

考え方が変わったきっかけは、ある1件の商談です。

そのお客様は、いろんな他社から営業を受けていました。 アポイント自体は取りやすい会社だったので、他社の営業マンもたくさん訪問していたそうです。

そんな中、担当の方がふとこんな話をしてくれました。

「自分が担当になって約1年だけど、新しく契約した会社は1社だけなんですよ」

正直、この言葉が引っかかりました。

これだけたくさんの営業が来ているのに、1社だけ。

気になった自分は、こう聞いてみました。

「なぜ、その1社とだけ契約したんですか?」

サービスは同じ。違ったのは「契約後」だった

担当の方の答えは、意外なものでした。

その会社が提供している「人を紹介できます」というサービス自体は、他社と大きく変わらなかったそうです。

人材会社という商材は、突き詰めれば「人を紹介する」という部分は、どこも似たり寄ったりです。

じゃあ何が違ったのか。

それは、契約した後のフォローでした。

その会社は、スタッフに対して定期的に独自のアンケートを実施していたそうです。

・仕事には慣れてきたか ・現在の職場をどう感じているか ・仕事をどれくらい覚えられているか ・今後どうしていきたいか

こういったことを継続的に確認して、スタッフの状態を把握し続けていた。

さらに半年に一度くらいのペースで、社長も同席したうえで、

「現在このスタッフはこういう状態です」 「本人は今後こうしていきたいと話しています」

という内容を、直接企業側に説明していたそうです。

担当の方は、それを見てこう感じたと言っていました。

「人を紹介できる会社はたくさんある。でも、ここまでフォローしてくれる会社は、なかなかない」

だから、その1社と契約を続けている、と。

正直、その場では少し悔しい気持ちもありました。

自分もそれなりに準備をして商談に臨んでいたので、「サービス内容は変わらないのに、フォローの差だけでそこまで信頼が生まれるのか」と、素直に驚いたのを覚えています。

ちなみに、このお客様は結局、自分とは契約になりませんでした。

でも、この商談で聞いた話は、その後の自分の営業観を大きく変えるきっかけになりました。

「自分が何をするか」自体が商品になる

この話を聞いて気づいたのは、こういうことです。

人材のような無形商材は、「紹介できます」だけでは差がつきにくい。

だからこそ、契約した後に自分たちが何をするか、その姿勢自体が商品になる。

話のうまさや、その場の印象の良さよりも、地道に何を積み重ねているか。

それがお客様にとっての「選ぶ理由」になるんだと、そのとき初めて実感として理解できた気がします。

契約を取る瞬間だけを見れば、たしかに話がうまい人は強いです。 第一印象も良くなるし、その場の空気もつかみやすい。

でも、契約は取って終わりではありません。 むしろそこからが本番です。

その「本番」の部分に、どれだけ地味なことを積み重ねられるか。 それが、無形商材を扱う営業にとっての本当の勝負どころなんだと、この一件で気づかされました。

営業1年目の自分に伝えたいこと

今、あの頃の自分に何か伝えられるとしたら、こう言うと思います。

「言うほど、自分にできることはまだ多くないぞ」

これは、否定したいわけじゃありません。

営業1年目なんだから、経験も知識も少なくて当たり前です。 それは恥ずかしいことでもなんでもない。

だからこそ、

・その瞬間、自分がどう評価されるか ・自分をどれだけすごく見せられるか ・その契約が自分の手柄になるか ・スマートな営業マンに見えるか

こういうことばかりを意識する必要はなかったな、と思います。

むしろ、それを意識しすぎると、体も言葉も硬くなる。 自分を守ろうとするあまり、目の前の相手が見えなくなる。

それより優先すべきなのは、目の前のお客様です。

「この人はどうなったら幸せなのか」 「この会社はどうなったら良くなるのか」 「そのために、今の自分には何ができるのか」

これを考え続ける営業マンでいたほうがいい。

自分がどう見えるかより、目の前の人がどうなったら幸せなのかを考える。

これが、あの商談から今も自分の中に残っている、営業に対する一番大事な軸です。

正直、頭でわかっていても、実際にできているかと言われると、まだまだだなと思う日もあります。

それでも、この軸があるかないかで、商談中に見えるものが変わってくる。

お客様の表情の変化に気づけたり、何気ない一言の裏にある本音に気づけたり。 自分を良く見せることに必死だった頃は、たぶんそういうものを見逃していたと思います。

まだ、答えを探しながらやっています

偉そうなことを書きましたが、自分が営業を極めたなんてまったく思っていません。

今でも商談の前は緊張しますし、うまくいかないことのほうが多いです。

ただ、少なくとも「自分をどう見せるか」だけに気を取られていたあの頃よりは、目の前の相手のことを考えられるようになった気がします。

もし今、営業1年目で同じようにモヤモヤしている人がいたら伝えたいです。

話がうまくないことも、スマートに見えないことも、この段階では大した問題じゃありません。

それより、目の前の人をどれだけ見られているか。 そこに時間をかけたほうが、後になって効いてくると思います。

営業について、実際の現場で経験したことを、これからも書いていこうと思います。

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