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この本が好きすぎて、もう何度手に取ったかわからない

何度も読み返している、大切な一冊の話です。

この本が好きすぎて、
もう何度手に取ったかわからない。

初めてその本を開いた時、
私は5年ぶりの運転免許の更新のために
教習所にいた。

理路整然と机と椅子が並ぶ教室で、
誘導された席に座り、
30分ほどの待ち時間を潰すために
本をバッグから取り出した。

ものの2分で私は、
周囲に笑っていることを
悟られまいと必死になった。

そして5分後には、
溢れそうになる涙を堪えて
肩を震わせた。



中学生の頃、
さくらももこさんのエッセイに出会い、
本を読んで声を出して笑うという
初めての体験をした。

以後、発売される
さくらももこさんのエッセイは
すべて購入した。

エッセイがとりわけ好きなわけではなく、
さくらももこさんの文章と世界観が
大好きだった。

こんな作家さんは二人といないと、
勝手に決めていた。



それが現れた。

さくらももこさんと同じくらい、
私の琴線に触れる作家さんと
出会ってしまった。

文学として楽しむというより、
心と身体全部で楽しめる
岸田奈美さんの文章。

とにかく勧めた。
いろんな方に勧めた。



そんなある日、
出張で静岡に行く機会があった。

訪問させていただいた企業の方々との食事会で、
「最近心震えたエピソードを
1分にまとめて話す!」
というゲームが始まった。

ミュージカルや絵画の話をされる方が多い中、
私のターンが来た。

60秒という限られた時間。
伝えきれないと、
ビール片手に悔しがる方を横目に、
心の中で60秒を組み立てた。

絶対、岸田さんの本にしようと
心に決めていた。

早口になったが、
伝えたかったことは伝わった。



本のタイトルを聞かれた。

「家族だから愛したんじゃなくて、
愛したのが家族だった」

素敵だ!
読んでみたい。

そう言ってくれた。
成功した。



岸田さんが中学生の頃に急逝したお父さん。
ダウン症で知的障害のある弟。
突然の病で車椅子生活になったお母さん。
認知症のおばあちゃん。

いや、笑えないでしょ!
と思う境遇も、出来事も、
すべてをユーモアと優しさに
変換してしまう岸田さんの魅力。



笑いたいとき。
泣きたいとき。
じんわりあたたかい気持ちになりたいとき。
元気を出したいとき。

そんなときに、
そっと手にとってほしい一冊です。

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