迷っている自分を、無理に急かさなくていい
何かを決めなければならないとき
私たちはすぐに答えを出そうとしてしまう。
正しいほうを選ばなければ。
失敗しないようにしなければ。
後悔しない答えを見つけなければ。
そう考えるほど、かえって足が止まることがある。
作家であり飛行士でもあったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリには、
「完璧とは、付け加えるものがなくなったときではなく、取り去るものがなくなったときだ」
という言葉がある。
一般に『人間の土地』に由来するフランス語の一節として紹介されているが、日本語訳には複数の表現がある。
だからここでは、一字一句の引用ではなく、その言葉が伝えている意味を受け取りたい。
何かを決めることも、きっと同じなのだと思う。
最初から完璧な答えを作ろうとしなくていい。
余計な不安、人からどう見られるかという心配、失敗したくないという焦り。
そして、「今すぐ決めなければ」という思い込み。
そうしたものを一つずつ取り去っていく。
最後に残った静かな本音こそが、あなたにとっての真実かもしれない。
迷っているなら、今日は答えを出さなくてもいい。
ただ、今日できることを一つだけ選んでみる。
紙に一行書く。
必要なページを開く。
誰かに短いメッセージを送る。
そんな小さなことでいい。
迷いが消えてから歩き出すのではなく、迷いを抱えたままでも踏み出せる一歩を選ぶ。
人生には、歩き始めたあとでしか見えない答えもあるからだ。
そして、忘れないでほしい。
迷っているのは、あなただけではない。
立ち止まり、考え、それでも今日できる小さな一歩を探している人は、ほかにもいる。
すぐに答えが出なくてもいい。
遠回りしてもいい。
今日選んだ小さな一歩は、たとえ頼りなく見えても、明日のあなたの足元に静かな道を残していく。
その道は、最初から遠くまで続いている必要はない。
次の一歩が見えるだけでいい。
すべてを決められないまま、夜を迎える日があってもいい。
朝になって、昨日の自分が残してくれた小さな印に気づくとき、あなたはまた歩き出せる。
答えは、いつも出発する前に見つかるとは限らない。
歩いた先で景色が少しずつ変わり、振り返ったときに初めて、
「ああ、これでよかったんだ」
と気づくこともある。
だから今夜は、すべてを決めなくていい。
迷いを抱えたままでも、明日へ続く一歩だけをそっと置いておこう。
その一歩の先には、まだ見えていないあなたの時間が、静かに待っている。
そして、サン=テグジュペリには、もう一つ私の好きな言葉がある。
「愛するということは、互いに見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」
という趣旨の言葉だ。
私は、この言葉が好きだ。
人生の答えは、一人で見つけなければならないものばかりではないのかもしれない。
同じ方向を見てくれる人がいる。
同じ景色を見たいと思える人がいる。
迷ったときに答えをくれる人ではなく、迷いながらでも隣を歩いてくれる人がいる。
そんな人と出会えたなら、その人と同じ方向を見ながら歩いていけばいい。
すべての答えが見えなくてもいい。
遠くの景色まで見えなくてもいい。
今日、同じ方向へ一歩進めるなら、それだけで十分なのだと思う。
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