#6|熱中症になると何が起こる?──全身に及ぶ影響
熱中症シリーズ
〜命を守る完全ガイド〜
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熱中症から命を守る
知らなかったでは済まされない、
予防・後遺症・暑さに備えるカラダづくり
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第1章|熱中症の正体を知る
#6|熱中症になると何が起こる?──全身に及ぶ影響
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熱中症は、
水分が足りなくなるだけの病氣。
少し休んで、水を飲めば元に戻るもの。
そのように思っていませんか?
もちろん、早い段階で異変に氣づき、
涼しい場所へ移動するなど、適切に対応することで回復できる場合もあります。
しかし、体温の上昇や脱水が進み、
カラダの状態が悪化すると、
影響は喉の渇きや疲労だけでは済みません。
脳。
心臓と血管。
腎臓。
肝臓。
筋肉。
血液を固める仕組み。
熱中症は、
全身のさまざまな臓器や組織に影響を及ぼす可能性があります。
重症化すれば、
複数の臓器が同時に正常な働きを保てなくなることもあります。
熱中症は、単なる「暑さによる体調不良」ではありません。
全身の生命活動そのものが脅かされる可能性のある病氣なのです。
◼️|熱中症の影響は、全身に及んでいく
前回までの記事では、熱中症が起こると、
カラダの中に熱がたまる。
汗によって水分や電解質が失われる。
循環する血液量が減る。
脳や臓器へ必要な血液を届けにくくなる。
高い体温によって細胞や臓器が傷つく。
という変化が起こることを解説しました。
これらは、それぞれ別々に起こるわけではありません。
体温が上昇する。
脱水が進む。
血液の流れが悪くなる。
臓器へ必要な酸素や栄養が届きにくくなる。
高温そのものによる損傷が加わる。
こうした変化が互いに影響し合いながら、全身へ広がっていきます。
つまり熱中症では、
カラダの一部分だけに問題が起こるのではありません。
生命を維持する複数の仕組みが、同時に乱れていく可能性があるのです。
◼️|脳への影響
熱中症で特に注意しなければならないのが、脳への影響です。
脳は、
血流の低下。
酸素不足。
高い体温。
水分や電解質バランスの変化。
などの影響を受けやすい臓器です。
脳の働きが乱れると、
ぼんやりする。
集中できない。
判断力が低下する。
受け答えがおかしくなる。
まっすぐ歩けなくなる。
呼びかけへの反応が悪くなる。
意識を失う。
けいれんを起こす。
などの異変が現れることがあります。
ここで怖いのは、
脳の働きが低下するほど、
本人が自分の危険な状態を正しく判断しにくくなることです。
「まだ動けるから大丈夫」
「少し休めば治る」
「周りに迷惑をかけたくない」
そう考えている本人が、
すでに自分の状態を正しく判断しにくくなっている可能性があります。
熱中症では、
本人の「大丈夫」という言葉だけで、安全だと判断してはいけません。
周囲の人が、
会話がかみ合っているか。
受け答えがいつもと違わないか。
まっすぐ歩けるか。
呼びかけに正常に反応するか。
を確認することが重要です。
◼️|心臓と血管への影響
カラダは体温が上がると、
皮膚の血管を広げ、
皮膚へ多くの血液を送ることで熱を外へ逃がそうとします。
さらに、汗をかいて体内の水分が失われると、循環する血液量は減少していきます。
つまり心臓は、
循環する血液量が減っていくなかでも、
皮膚へ血液を送り、
同時に、脳や内臓にも必要な血液を届け続けなければなりません。
そのため、心拍数が増え、
心臓への負担が大きくなることがあります。
血液量がさらに減少すると、
血圧を保ちにくくなり、
立ちくらみ。
めまい。
ふらつき。
失神。
などが起こることもあります。
心臓は、
全身へ血液を送り続ける、生命維持に欠かせない臓器です。
その働きを保てなくなれば、
脳や腎臓、肝臓など、
ほかの臓器への血流も低下していきます。
熱中症における循環の乱れは、
一つの臓器だけの問題ではなく、
全身の臓器障害につながる入口にもなるのです。
◼️|腎臓への影響
腎臓は、
血液をろ過し、
老廃物や余分な水分を尿として排出する臓器です。
同時に、
体内の水分量。
電解質のバランス。
血圧。
などを調節する重要な役割も担っています。
しかし、脱水によって循環する血液量が減ると、腎臓へ流れる血液も減少します。
すると、腎臓は十分に血液をろ過できなくなり、
尿の量が減る。
尿が濃くなる。
老廃物を排出しにくくなる。
体内の水分や電解質を調節しにくくなる。
などの変化が起こる可能性があります。
さらに重症化すると、
腎臓の機能が急激に低下する急性腎障害へ進む場合があります。
特に、激しい運動や高体温によって筋肉が大きく傷つくと、筋肉の細胞内にある成分が血液中へ流れ出し、腎臓へ負担をかけることがあります。
腎臓は、体内環境を一定に保つために欠かせない臓器です。
その機能が低下すると、
熱中症によって乱れたカラダの状態を、さらに立て直しにくくなってしまいます。
◼️|筋肉への影響
熱中症では、筋肉にもさまざまな異変が起こります。
大量の汗によって、
水分や電解質が失われると、
筋肉の収縮や神経からの情報伝達が乱れ、
足がつる。
筋肉がけいれんする。
筋肉が痛む。
力が入りにくい。
などの症状が現れることがあります。
しかし、筋肉への影響は、こむら返りだけではありません。
高い体温や強い身体的負荷によって、
筋肉の細胞が大きく損傷すると、
筋肉の内容物が血液中へ流れ出すことがあります。
この状態は横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)と呼ばれ、腎臓へ大きな負担をかけ、急性腎障害につながることがあります。
運動後の筋肉痛だと思っていた。
疲れて力が入らないだけだと思っていた。
そのような症状の裏で、
筋肉や腎臓に重大な異変が起きている可能性もあります。
暑い環境での運動や作業後に、
強い筋肉痛。
著しい脱力。
尿の量が少ない。
赤褐色やコーラ色のような尿。
などが見られる場合は、
自己判断で様子を見続けず、速やかに医療機関を受診してください。
◼️|肝臓への影響
肝臓は、
栄養を代謝する。
有害な物質を処理する。
血液を固めるために必要な成分をつくる。
など、生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。
熱中症が重症化すると、
高い体温や血流の低下によって、
肝臓の細胞が傷つき、肝機能が低下することがあります。
肝臓は、障害が起きても、
初期にはわかりやすい症状が現れない場合があります。
そのため、本人が少し回復したように見えても、血液検査によって肝臓の異常が見つかることがあります。
見た目の元氣さだけでは、
カラダの中で起きている障害の程度を判断できないことがあるのです。
意識障害、高体温、強い倦怠感など、
重症の熱中症を疑う状態があった場合は、
症状が一時的に軽くなったとしても、
医療機関での評価が必要になります。
◼️|血液を固める仕組みまで乱れることがある
僕たちのカラダには、ケガなどで血管が傷ついたときに、血液を固めて出血を止める仕組みがあります。
しかし、重い熱中症では、
高い体温や全身の炎症反応などの影響によって、この仕組みが異常に働くことがあります。
血管の中で小さな血の塊が次々につくられ、全身の細い血管の流れを妨げる。
その一方で、血液を固めるための成分が大量に消費され、出血しやすくなる。
このような深刻な状態は、
播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)、DICと呼ばれます。
DICが起こると、
すでに血流が不足している臓器へ、
さらに血液が届きにくくなり、
多臓器障害が進行する可能性があります。
熱中症は、体温だけの問題ではありません。
血液の流れや血液を固める仕組みまで乱すことがある、全身性の病態なのです。
◼️|複数の臓器が同時に傷つく、多臓器障害
脳。
心臓と血管。
腎臓。
肝臓。
筋肉。
血液を固める仕組み。
熱中症が重症化すると、
これらの臓器や機能が、
一つずつ順番に悪くなるとは限りません。
複数の異常が、同時に進んでいくことがあります。
心臓や血管の働きが乱れ、臓器へ届く血液が減る。
高い体温によって細胞が傷つく。
筋肉の損傷によって腎臓へ負担がかかる。
肝臓や腎臓の機能が低下し、体内環境を維持できなくなる。
血液凝固の異常によって、さらに臓器への血流が悪くなる。
こうして複数の臓器が正常に働けなくなった状態が、多臓器障害です。
現状では、体温、意識障害、肝・腎障害、DICなどの熱中症重症度分類の評価項目から、重症度を総合的に判断することが望まれる。
つまり、熱中症の重症度は、
体温の高さだけで決まるものではありません。
脳の働きや、肝臓・腎臓、血液凝固など、全身に起きている変化を総合して判断する必要があるのです。
一つの臓器の異常が別の臓器へ影響し、全身状態が急速に悪化する可能性があります。
これが、熱中症が命に関わる理由の一つです。
◼️|見た目だけでは、カラダの中の状態はわからない
熱中症では、
少し会話ができる。
自分で歩ける。
汗をかいている。
水を飲めた。
少し休んだら表情が戻った。
という状態でも、
カラダの中が完全に回復しているとは限りません。
脳や臓器への影響は、
外見だけでは判断できないことがあります。
また、肝臓や腎臓などの異常は、
血液検査や尿検査をしなければわからない場合もあります。
特に、
意識がぼんやりしていた。
受け答えがおかしかった。
まっすぐ歩けなかった。
けいれんがあった。
非常に体温が高かった。
自力で水分を飲めなかった。
強い倦怠感や吐き氣が続いている。
尿が極端に少ない。
などの状態がある場合は、
「少し良くなったから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
熱中症は、見た目の回復と、カラダの中の回復が一致しないことがあります。
◼️|臓器が傷つく前に、行動を変える
熱中症は、
単なる水分不足ではありません。
単なる夏バテでもありません。
体温が上昇し、
循環する血液が減り、
脳や臓器へ十分な血液が届かなくなる。
さらに、高い体温そのものが細胞を傷つける。
その結果、
脳。
心臓と血管。
腎臓。
肝臓。
筋肉。
血液を固める仕組み。
こうした全身の臓器や機能へ影響が広がり、重症化すれば多臓器障害へ進む可能性があります。
熱中症を防ぐために最も大切なのは、
臓器が傷つくほど悪化してから対処することではありません。
その前に、
暑さを避ける。
無理をしない。
早めに休む。
水分や電解質を適切に補給する。
体調の異変を見逃さない。
周囲の人の異変にも氣づく。
という行動を取ることです。
「まだ動ける」
「もう少しだけ頑張れる」
「水を飲んだから大丈夫」
そう思える段階で行動を変えることが、全身の臓器を守ることにつながります。
◼️|今日からできること
暑い日の活動中や活動後は、喉の渇きだけで判断しないでください。
次のような変化がないか、自分と周囲の人を確認しましょう。
・受け答えがいつもと違う
・ぼんやりしている
・ふらついている
・強い頭痛や吐き氣がある
・筋肉のけいれんや強い痛みがある
・力が入らない
・尿の量が極端に少ない
・休んでも症状が改善しない
少しでも異変を感じたら、
活動を中断し、涼しい場所へ移動してください。
そして、
意識がぼんやりしている。
呼びかけに正常に反応しない。
自力で水分を飲めない。
このような場合は、ためらわず救急車を呼んでください。
症状が改善しない場合も、
自己判断で活動へ戻らず、
医療機関へ相談することが重要です。
熱中症は、
早く氣づき、早く行動するほど、
全身への影響を小さくできる可能性があります。
◼️|まとめ
熱中症になると、影響は水分不足だけにとどまりません。
・脳の働きが乱れ、自分の危険に氣づきにくくなる
・心臓や血管へ負担がかかり、全身への血流を保ちにくくなる
・腎臓の働きが低下し、体内環境を維持しにくくなる
・筋肉が傷つき、腎臓へさらに負担をかけることがある
・肝臓の機能が低下することがある
・血液凝固の仕組みが乱れることがある
・重症化すると、複数の臓器が同時に障害される可能性がある
熱中症は、全身の生命活動を脅かす可能性のある病氣です。
だからこそ、
倒れてから助けるだけではなく、
臓器が傷つく前に予防し、
異変が小さいうちに行動することが重要です。
熱中症は、健康も人生も奪うかもしれない。
その危険を知ることは、怖がるためではありません。
自分と大切な人の命を、早い段階で守るためです。
|次回予告
次回は、
#7|熱中症が命を奪う理由──死亡と後遺症を防ぐために
をお届けします。
今回の記事では、
熱中症が脳や心臓、腎臓、肝臓、筋肉など、全身へ影響を及ぼすことを解説しました。
では、なぜ熱中症によって命を落としたり、回復後も後遺症が残ったりすることがあるのでしょうか。
次回は、熱中症の本当の怖さと、死亡や後遺症を防ぐために早期発見・早期対応が重要な理由を解説します。
|第1章のこれまでの記事
#0|なぜ今、熱中症を学ばなければならないのか
熱中症を今学ぶ必要性と、本シリーズを通して身につけてほしい知識と行動について解説しています。
#1|熱中症とは何か──まず知っておきたい基本
熱中症の定義と、体温調節が破綻することで起こる病態の基本を解説しています。
#2|熱中症を防ぐ体温調節の仕組み──人はなぜ体温を保てるのか
人間が体温を一定の範囲に保つために働く、汗や皮膚血流などの体温調節機能を解説しています。
#3|熱中症はどう起こる?──カラダの中で起きていること
熱中症が発症するまでに、熱・血液・水分・脳や臓器にどのような変化が起きるのかを解説しています。
#4|熱中症は誰でもなる──「自分は大丈夫」が一番危ない
年齢や体力に関係なく、誰にでも熱中症が起こる可能性がある理由を解説しています。
#5|熱中症は予防できる──起きる前の判断が命を守る
熱中症を防ぐために必要な基本的な考え方と、早い段階で行動を変える重要性を解説しています。
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|暑さに備えるカラダは、毎日の生活からつくられる
熱中症予防は、
暑い日だけ対策すればよいものではありません。
水分補給や室温管理だけでなく、
毎日の睡眠、疲労回復、呼吸、姿勢、血流、体力など、カラダ全体の状態を整えておくことも大切です。
「Online Program 呼吸と姿勢」では、
呼吸と姿勢を土台に、毎日のカラダを整える実践を行っています。
暑くなってから慌てるのではなく、
日頃から暑さに備えられるカラダを、一緒につくっていきませんか。
|参考資料
・日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
・環境省「熱中症環境保健マニュアル ~総論~ 2025年7月版」
・厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
・厚生労働省「職場のあんぜんサイト|熱中症」
※本記事の内容は、執筆時点で公的機関が公表している情報をもとに作成しています。
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