薬局さん、インフラなのかい、ビジネスなのかい、どっちなんだい!?

薬学部の職員として、わたしも一応、薬剤師界隈のニュースなどにアンテナを張っているのですが(勤務中、上長や教員の指示を横においてポチポチネットニュースを見ているだけですが)、最新の調剤報酬改定はますます門前薬局への逆風が強まっているということでしょうか?

このような動きって、国から見て、変えなければならない状況があるということなんでしょうか。
ということで今回は、薬局における、国の期待とビジネスの実態のギャップについて考えてみようと思います。


1.わたしが「門前薬局への逆風?」って思ったこと


逆風という表現が適切なのかどうかは置いといて、「門前薬局等立地依存減算」のことです。

素人ながら読み解いた内容としては、

すでに多数の保険薬局が開局している地域(特に病院の近隣)、または医療モール内に立地する場合、調剤報酬の点数が、調剤基本料から15点減算される。

ということらしい。

そして、その背景にあるのは、薬局が地域でのかかりつけ機能や面分業を担うことをより推し進めたい、ということみたい。

参考記事
2026年03月12日付薬事日報


15点減算はどれくらいのダメージなのか。
これをきっかけに調べてみて初めて知ったのですが、処方箋1枚当たり点数(調剤医療費)が2024年度時点で約939点(約9,390円)で、そこから15点(150円)減算なので、売上ベースでは約1.6%の減収ということでしょうか。

自分目線で捉えるための参考指標として、仮に自分の収入が1.6%減るとか、NISAの運用利回りが1.6%減るとかって考えると、けっこうデカい。
しかも1.6%の分母約9,390円というのはあくまで売上であり、ここから薬の費用とか人件費とか店舗の水道光熱費とかも負担しなければならないので、その後に残った粗利に対する減算割合は1.6%どころじゃないと考えると、かなりのダメージであることが想像できます。



で、ようやくここから本題、「国の期待とビジネスの実態のギャップ」について



2.国の期待(薬局に対して)


大まかに言うと、

・薬物治療を地域で管理してほしい
・「門前」ではなく「地域の面」で患者を支えてほしい
・立地ではなく薬剤師サービスの質を磨いてほしい

ということですよね。
あとあえて付け足すとすれば、予防とか未病のサポートかな。

門前であること自体がダメって言われているわけではないと思いますが、店舗の立地で差別化するんじゃなくて、サービスの質というか治療や健康への貢献度合いで差別化となるよう、仕組みを変えているのだと理解しました。



3.現実の薬局経営はどうか


商売(という表現でよいかはさておき薬局経営もビジネスなので、一応やはり「商売」)の基本は「売上=数量x単価」であり、単価を薬局が自ら柔軟に設定することはできないんだから、数量UPを狙う、つまり処方箋枚数を取りに行くことを重視せざるを得ない。

となると、処方箋を効率的に集めやすいよう病院の近隣に立地を求めることが理にかなっており、そうならざるを得ないですよね。

つまり地域の面で支えるサービスで差別化と言われても立地の影響は依然として大きい。



4.別の整理をすると


かなり大雑把ではあると思いますが、薬局を無理やり分類すると

1) 門前薬局
2) 調剤併設ドラッグストア
3) 面分業の薬局、在宅業務が中心の薬局

のように分けることができるとします。

この分類において、国の期待はたぶん 3)が普及すること、ですよね。

それに対して、ちょっと統計を見つけられないので正確なところはわからないですが、たぶん実態として店舗数の伸びは 3)よりも、2)のほうが勢いがあるのではないでしょうか。場合によっては1)も3)より増えているかもしれない。

わたしの体感とか主観で述べてて申し訳ありませんが、いずれにしても、社会の実態が国の期待通りに進展している感じではないんじゃないかな、と思います。

診療報酬改定を重ねる中で、面分業や在宅などの取り組みがより経営に組み込みやすいよう仕組みとして変わってきていることと思いますが、まだまだ採算に乗せるのは簡単ではないのだと理解しています。

(例えば門前と在宅を比較すると、門前で処方箋を集めて効率的にさばくというのは、それ特有の苦労もありつつ業務の仕組みを整えれば比較的再現性高く運営できる、その一方、在宅業務は地域でのネットワーク構築→多職種連携とか患者さんごとの個別性が大きいなど、運営の仕組みを整えて再現性高く回す、とはなかなかいかない難しさがある。)



5.さらにもしかして、


このようなギャップは薬剤師個人にも当てはまるでしょうか?

国の期待
 ↓
薬物治療を地域で支える
患者の生活を把握する
質の高い服薬指導

しかし現場では
 ↓
処方箋が次々来る
業務が回らない
患者さんとの丁寧な会話が難しい

というか、患者の中には薬剤師との会話を望まない人もいる。
そもそも、社会全体が薬剤師の役割を理解しているとは言いがたい現状があると思います。

個々の薬剤師が、その専門性を活かして「薬物治療を地域で管理」とか「地域連携」とか「予防で健康増進に貢献」とかを目指したくても、それを実践できる場、それを「なりわい」として成立させられる場が限られていると思いました。



6.これらのギャップ どうすればいい


あたりまえだけど、このようなギャップがあるのは薬局や薬剤師の努力不足などでは当然なくて、(わたしのnoteでは毎度のことですが)医療制度とビジネスの設計の問題だと思います。

まさに毎回同じことを言っていますが、医療とビジネスって両立が難しい、とつくづく思います。

言い方を変えると、おい日本さん!薬局は公共インフラなのかい!ビジネスなのかい!どっちなんっだい!?、という問題ともいえるかもしれません。(パワー!)

どうすればいいか。
これも毎回同じになってしまいますが、まじで正解ないというか、トライアンドエラーしながら進んでいくしかないっすよね。

そういう意味では、薬剤師の存在意義とか専門性の定義自体が、国も含めてまだ模索中なのかもしれない。
前向きにとらえて、自由かつパワー!フルに形づくっていくのが良いのだろうと思いました。


7.そしてわれわれ大学・薬学部


このような現状(難しさがあること、模索中であること、それゆえのやりがい)を薬学生にきちんと伝えていかないとならない。
国試合格支援だけに終始している場合ではないっすよね。

あと、薬学部に入る前の高校生にも伝えていかないとならないよな、と思います。
たぶん多くの子どもは、薬剤師を知っていたとしても、カウンター業務のイメージなのではないかな。そのイメージだけでなく、患者さんのお家も薬剤師のフィールドだぜ!と伝えていかないと、働きだしてから「なんか思い描いていたのと違う」が起きてしまうもんな。

そして、社会に対して薬剤師の役割を発信することも、現状なかなかできていないけど、薬学部が担わないとならないよな、と、この記事書いていて思いました。


ということでまたなんか真面目臭の強い記事になってしまいました。
ほんとはもっとキャッチーに面白く書きたい。精進します。

最後まで読んでくださりありがとうございました。


◆蛇足(amazonアソシエイト)


あんまり関係ないけど、けっこう前に読んで面白かった本。

フィールド(何が求められているか)の分析と、自己(何ができるか、何が武器か)の分析の重要性、および期待を裏切りにいくことのリスクとリターンの大きさを学びました。


以上です!

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