医薬品供給不安はいつどう解消するのか

薬が手に入りにくくなっていると言われるようになって久しい。

幸い、わたし自身や家族においては
有難いことに比較的健康的に暮らせていることもあり、
薬が品薄であることの被害を直接的に受けているわけではありません。
でも、ニュースや新聞などでこの話題を見聞きするようになってから
(わたしの記憶が正しければ)もう5年くらい経っているなかで、
なかなか状況が改善していないっぽい。

ということで、この問題について今回考えてみます。

※素人の考察なので、正確さとか根拠に欠ける部分も
多分にあると思われますが、その点は大目に見ていただけると有難いです。
特定の誰かを悪く言うつもりはなく、結論をはじめに言ってしまうと
今回も「医療制度の問題って根が深い、難しい、正解がない」ということ。
その中で極力、自分には何ができるかを考えてみる、という意図です。


1.問題の概略


発端は、2020年と21年に後発品メーカー2社が
品質不正の不祥事により出荷停止となったことです。
品質不正が良くないのは当然として、
背景には薬価が下がり続けるという医療制度上の制約があります。

すなわち、
利益が出しづらいビジネス構造である中で品質管理が機能不全となり、
それが市場での実害に繋がり出荷停止となった。
そのことをきっかけに、連鎖的に他メーカーの製品も含めて
需要・生産が乱れて供給体制が崩れ、
以降、今に至るまで供給不足を解消できていない、という経緯です。

もうちょい補足すると、
後発品業界全体として、薄利かつ少量多品種生産。
従来なんとか需要と供給のバランスが保たれていたところに、
特定メーカーの出荷停止で全体バランスが崩れたということです。
出荷停止となった製品の分の需要をほかの製品の供給で埋めようにも
生産量を調整する柔軟性も乏しいし、
下手したら製品によっては赤字だから増産したくない、
などの事情がいろいろ絡み合って、
市場全体でバランスが崩れて恒常的な品薄状態になってしまった、
という経緯です。


2.わたしの疑問


根っこに薬価の問題があるのは理解するのですが、
供給不足の直接的な要因(ボトルネック)は何なのか?よくわからん。

また、医療制度をどうにかしないと根本的な問題解消に至らない
ってことは理解しますが、
まず止血的に供給不足を解消してから、根本的な問題解消策を議論する
ということにはできないの?
とも思ってしまいます。

実はわたしは以前、半導体の営業をやってたことがあるのですが
一般的な製造業の感覚だと、4~5年も需要を満足をできない状況は
ちょっとありえないでしょ、と思ってしまいます。

なんせ半導体は、
供給逼迫とかを起こすと、すぐお客がメーカーの工場に乗り込んできて
それなりの納期回答を得られるまで帰ってくれない。
たとえ供給逼迫の背景が、低価格化の赤字であったり、
震災による生産設備の罹災なんかであったとしても、
基本的には要求通り納入するまで許してもらえない。
だから、供給不足とならないよう需要予測にはめちゃくちゃうるさいし
万が一供給不足となったら、製造ライン新設とか打てる手を打って
長くても1年くらいのスパンでなんとか問題解消して需給安定を図る。

という感覚があるので、4~5年間も供給が需要に追い付かないって
素人で大変恐縮ながら、え~!?真面目にやってる!?って思ってしまう。

ということで、調べてみた。


3.解消が難しい具体的な構造


ボトルネック要因は複合的なようです。
以下にて一つずつ見てみます。

1)製薬メーカーの生産能力
製造工程や手順の規程が細かく定められており、
国の承認がないと製造できない制約があるので、
柔軟に製造ラインや人員を増強できない。
やるとしても 変更申請→審査受審→承認 っていう数年スパンの作業。

2)原材料(=原薬)調達難
中国やインドに依存する原薬のサプライチェーンが
コロナ禍で乱れてから簡単に回復しない。
利益の少ない原薬製造の優先度を下げられる。
しかも承認の都合上、サプライヤー変更は簡単にできない。(数年スパン)

3)製薬メーカーの経営事情(インセンティブ)
薬価が上がることは見込めない、
つまり供給量を増やすための投資を行ったとしても
資金回収の目途が立たない
という事情がある以上、手を打ちたくても打てない。

医薬品は半導体と違って価格を自社で決められるものではないから
投資による解決策を打ち出しにくい。

※一方、半導体はだいたい、顧客ごとに
年間供給数量=購入数量と価格をセットで交渉して
合意(契約)してから納入スタート。
だから約束通りの数量を納入しないと契約違反になってしまう。
という点も医薬品とは異なる。


4.じゃあこの医薬品供給不足、これからどうなるの?


たぶん薬剤師さんはめちゃくちゃ詳しいと思いますが、
それぞれが現場レベルで出来ることをやってはいます。

 ● 製薬会社
在庫積み増し/ 製造ライン整備/ 品質管理整備/
生産品目統合/ 
不採算品目撤退による選択と集中
(不採算だからってやめていいのか?とは思うけど)/
デュアルソース化(=材料やラインの複線化)
業界再編(=メーカーの壁を越えた生産統合)の調整 など

 ● 厚労省・PMDA
生産・流通の把握・可視化/ 製造変更申請等の迅速な承認
業界再編の指導 など

 ● 卸・医療機関
在庫積み増し/ 同業他社と在庫融通/ 
患者さんに代替え薬提案 など

でも、それぞれの取り組みが個別最適に留まり嚙み合わない。

例)
川下で在庫積み増しや融通等がなされるほど全体の実需が見えにくくなる。
→実需が見えにくいと川上の調整が場当たり的になり逼迫が解消されない。
→川下で在庫積み増し、、、の繰り返し
(半導体でもかなりあるある)

てな感じで、基本的には医療制度の枠組みが変わらない限り、
完全に安定した供給に戻ることは難しそうに感じてしまいます。

このままだと国民も医療従事者も困り続ける。
製薬メーカーもいずれ経営が行き詰って
日本市場から撤退などとなりかねない。
でも薬価を上げるわけにもいかない。
なぜなら医療費には限りがあるから。
上げると国民の負担が増えてしまうから。

医療制度の問題、根が深い、どうすればいいんだ!!!

5.わたしのモヤモヤ


根本的には医療制度の問題ではある、
それは理解しているんだけど、
製薬会社って、命に係わる医薬品の作り手として、供給責任ないの?
ということは思ってしまいます。

せめて、
出来ることは必死のパッチでやっているということ、
および、
医療制度の構造上の問題によって抜本的な解決策が見出せない状況にある
ということを、
もっと国民が「それはまじでやべー!」と理解するレベルで説明してほしい。
(たぶんその説明が製薬業界から強く発せられていれば、
医療従事者も現場での患者対応の負担が多少減りますよね。)

製薬業界から国民に、丁寧に状況説明をすること
それは厚労省を困らせ怒らせることになってしまうかもしれないけど、
事実なんだからしょうがないじゃん
と思います。


6.最後に


とりあえずわたしは、淡々と以下に取り組みます。

 ● セルフメディケーションで、医薬品と医療費を節約。
 ● 医療制度、医療費の問題に関心を向けて、
 解決しようとしている政治家・政党に投票する。

しかし、やっぱり難しいのは、医薬品は商品なのか、インフラなのか。
医療とビジネスを両立させることはつくづく難しいと実感する。
資本主義とか社会主義とか言い出すと大げさな感じになってしまうけど、
どういう社会がもっともベターなあり方なのか、
ちゃんと考えないとならないなと思います。

ということで今回はなかなかヘビーな内容になってしまいましたが、
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。


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