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寄り添い今昔

本当の「寄り添い」とは

「子どもに寄り添う」
近頃、よく耳にする言葉です。でも、同時に、よく誤解されている言葉でもあるのではないでしょうか。

「子どもに寄り添う」とは、
子どもの気持ちを否定せずに受け止め
子どもたちが持つ力を信じて
控えめに子どもの傍らに居てやること」
だと、yamaは考えています。

「寄り添い」と「忖度」はまったく違う

子育てや教育の現場では「子どもに寄り添いましょう」という言葉が合言葉のように使われます。

もちろん寄り添うことは大切ですが、
「寄り添い=子どもの言うとおりにすること」、
「寄り添い=子どもを傷つくことを恐れて、忖度して先回りすること」、
と勘違いしている大人も少なくないのではないでしょうか。

たとえば、子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、「じゃあ行かなくていいよ」と即座に受け入れてしまうのは寄り添いではなく、単なる忖度(そんたく)です。
寄り添うとは「そう感じる理由を理解しつつ、どうすれば前に進めるか」を一緒に考えることです。
「行きたくないんだね。でも今日は好きな教科のある日だよ。一緒に準備して行ってみようか」というように。

本当の寄り添いは、子どもの気持ちを受け止めたうえで「成長」へつなげる関わりであり、安心感だけを与えるものではありません

昔の寄り添いと今の寄り添い

昔の日本の大人は、表立って子どもにベタベタ寄り添うことは少なかったかもしれません。しかし心の中では子どもを案じ、言葉にせずとも態度や空気感で「気にかけているよ」ということを伝えていました。子どもはその雰囲気を感じ取り、「自分は守られている」と悟ると同時に、「人の気持ちを察する力」を自然に育てていたのです。

つまり、昔の寄り添いは「大人が子どもに寄り添う」だけでなく、「子どもも他人に寄り添う力を学ぶ」ものでした。

しかし現代は、「大人が子どもに寄り添うこと」ばかりが強調され、子どもが「他人に寄り添うこと」を求められる機会が減っています。

そのために「自分の要求は受け入れてもらって当然」という態度だけが育ちやすく、相手を思いやることができなくなり、人間関係や社会適応で苦労する子どもが増えているのです。

西洋的な直線的子育てと日本的子育ての違い

ここには文化的な違いも大きく影響しています。西洋的な子育ては、キリスト教的な価値観に基づく「正解と不正解」を直線的に区切る思考が背景にあります。行動を基準に「良い/悪い」を判断し、対処も即物的・短期的になりがちです。また、「表面」的に見える結果をすぐに修正しようとする、という特徴もあります。

一方、日本の伝統的な子育ては「内面」の育ちを重視しました。表に出る行動や言葉だけでなく、その奥にある気持ちや心の動きを大切にし、「直接教える」のではなく「気づかせる」「悟らせる」ことに価値を置いてきました。大人が子どもに寄り添うだけでなく、子どももまた「相手の心を推し量る」ことを自然と身につける土壌があったのです。

ところが、現代日本では西洋的な教育や子育てのスタイルを大量に取り入れ、表面的な「寄り添い」や「子どもの希望をそのまま叶える」ことばかりが目立つようになりました。
結果として,
「相手の心を察する力」「他人に寄り添う力」が育ちにくくなり、
「寄り添い」が単なる甘やかしや忖度へと変質してしまったのです。

成長を伴わない寄り添いは寄り添いではない

寄り添いには必ず「子どもの成長」が伴わなければなりません。
いくつか例を挙げて考えてみましょう。

宿題の場面
「やりたくない」と言う子に対し、「じゃあやらなくていいよ」と認めるのは忖度。
寄り添いなら「疲れているんだね。10分だけ一緒にやってみようか」などと工夫する。

片づけの場面
「遊びっぱなしでいいよ。ママが片づけるね」は甘やかし。
寄り添いなら「どれから片づけようか、一緒に数えながらやろう」などと子どもの参加を促す。

遊びの場面

「もっと遊びたい」とせがまれて無制限に付き合うのは迎合。
寄り添いなら「あと一回で終わりにしよう。そのあと絵本を読もうね」と気持ちをくみ取りつつ区切りをつける。

どれも小さな差に見えますが、積み重なると大きな違いになります。
「忖度」は子どもをその場にとどめますが、
「寄り添い」は子どもを前へ進めます
成長を伴わない「寄り添い」は、「寄り添い」とは呼べません。

情緒を取り戻すために

現代社会の「寄り添い」の誤解の背景には、大人自身の情緒力の低下があるのではないでしょうか。相手の心を理解する力、冷静に分析する力、社会に適応する力、先を見通す力、そして思いやる力――こうした情緒が弱まると、寄り添いは「子どもに従うこと」と短絡的に解釈されてしまいます。

日本の伝統的な子育てが持っていた内面を重んじ、悟らせる「寄り添い」を取り戻すことが必要です。
子どもの心に共感しつつも、「だからこそ一歩進もう」と伝える関わり方。安心を与えるだけでなく、成長を支えること。
これが本来の寄り添いであり、未来を生き抜く力を育てるために欠かせない姿勢なのではないでしょうか。

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