見出し画像

Lightspeed、OpenAI株の保有延長に6億ドル調達

Lightspeed Venture Partnersが約6億ドル規模のセカンダリー取引「Project Mercury」を進めていると、Bloombergが8月12日に報じた。OpenAI株の保有延長とAnthropicへの新規出資が、同じ一つの取引の中に同居しているのが珍しい。この動きに触れた日本語記事はまだ無い。この記事で分かるのは、取引の仕組み、対象になっている6つの資産の顔ぶれ、そしてLightspeedが90億ドル超を調達したばかりのタイミングでなぜ古いファンドの現金化を急ぐのかだ。

「Project Mercury」の中身、Select VとOpportunity IIを継続ビークルへ

Bloombergの報道をBenzingaとYahoo Financeが伝えた内容によれば、Lightspeedは自社の「Select V」ファンドと「Opportunity II」ファンド、それに単一投資家向けの管理口座に入っているポジションを、継続ビークル(continuation vehicle)という新しい入れ物へ移そうとしている。継続ビークルとは、ファンドの満期が近づいた投資先を新しい器に移し替え、既存の投資家(LP)には現金で持ち分を精算する一方、運用会社(GP)であるLightspeed自身はその投資先を保有し続けて値上がり益を狙う仕組みだ。取引額は約6億ドルとされる。

対象6社の顔ぶれ、OpenAIとAnthropicが同じ入れ物に

継続ビークルに移す資産としてBloombergが挙げているのは、OpenAI、Verkada(セキュリティ機器)、Rippling(人事労務ソフト)、Reflection AI、Glean Technologies(社内向けAI検索)の5社に加えて、新たにAnthropicへの出資枠を加える計画だという。同じ取引の中に競合関係にあるOpenAIとAnthropicの両方を抱える形になる。ただし、Project Mercury全体の6億ドルのうちAnthropic分がいくらを占めるのか、内訳までは今回の報道に出ていない(未確認)。UBS Group AGがこの取引のアドバイザーを務め、プライベートエクイティ大手のColler Capitalが継続ビークルの主要な買い手(リード)に付いているという。

90億ドル超を調達したばかりでも古いファンドの現金化を急ぐ理由

Lightspeedは2025年12月15日、6本の新ファンドで合計90億ドル超を調達したと発表している。Fund XV-AとXV-Bであわせて約22億ドル、Select VIに18億ドル、Opportunity Fund IIIに33億ドル、Co-Investment Fund Iに6億ドル、単一投資家向けファンドに12.5億ドルという内訳だ(Davis Polkが公表した取引概要による)。つまりLightspeedの手元に投資余力が無いわけではない。それでも半年後にSelect VやOpportunity IIといった旧世代のファンドを対象にした現金化を急ぐのは、それらのファンドに出資しているLPの満期が近づいているからだと考えられる。IPO市場が上向かない中、株式公開という通常の出口を待てないLPに現金を返しつつ、OpenAIやAnthropicのような含み益の大きい銘柄はLightspeed自身が保有を続ける。この二段構えが継続ビークルという仕組みの狙いだ。

GP主導セカンダリーが2025年に1060億ドルへ拡大

Yahoo Financeが伝えたEvercoreの集計では、GP(運用会社)が主導するタイプのセカンダリー取引は2025年に1060億ドル規模に達し、前年の700億ドルから拡大した。取引に占める信用供与の比率も5%から11%へ上がったという。この「信用供与の比率」が具体的に取引のどの部分を指すのかまでは報道に定義が無く、正確な中身は未確認だが、セカンダリー取引の規模そのものが1年で5割以上伸びている点は数字として確認できる。出口の厳しい市場環境で、ベンチャーキャピタル各社がLPへの現金還元と含み益の保持を両立させる手段として、この種の取引に頼る場面が増えている。

この取引が動かすもの、動かさないもの

確認できている事実は、Lightspeedが6億ドル規模のProject Mercuryで既存6資産の継続保有とAnthropicへの新規出資を一つの継続ビークルにまとめようとしていること、この取引をUBSがアドバイス・Coller Capitalが主導していること、そしてLightspeed自身は半年前に90億ドル超の新ファンドを調達済みであることだ。

個人の読者がこの取引に直接関われる窓口は無い。継続ビークルへの出資はコラーのような機関投資家向けであり、リテール投資家が買える商品ではない。この取引が動かすのは、OpenAIとAnthropicという非上場AI企業の株主構成の一部と、Lightspeedの既存LPの現金化タイミングだけだ。株価や利用サービスの料金など、AIを使う側に及ぶ影響は今のところ無い。

判断材料としてはっきりしているのはここまでで、Anthropic分の具体的な出資額や、6資産それぞれへの配分比率は公開情報からは分からない。Bloomberg原文は有料会員限定のため、内訳の続報が出るならBloombergの追加報道を待つのが確実だ。

関連リンク

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー