ヤマナカさんという選択肢〜第2話:整わない暮らしの、最後の選択肢〜
納得のいく暮らしを目指してきたはずなのに、なぜか整わない毎日。
習慣もルールも試してきた。けれど、どうしても一人では回らない。
そんな私が、最後に選んだ手段とは。
そろそろ、この生活にも飽きてきた。
効率的に動いている“つもり”でも、心はずっと置き去りだったのかもしれない。
気づけば毎日、仕事のことばかり考えている。
片づけても散らかる部屋、適当に済ませる食事、酔いにまかせて思考を止める夜。
整えたくて頑張ってきたのに、どこかでうまくいかない。
たぶん私は10年以上、このループから抜け出せていない。
自分なりにルールを作って、習慣化しようとしてきた。
それでも気を抜けば、すぐに崩れる。
「もしかしたら私は、誰かに見張ってもらった方がうまくいくんじゃないか」
ふと、そんなことを思った。
サボったら気づかれるくらいの、“ゆるい緊張感”。
自分ひとりでは、難しいのかもしれない。
そう思い始めていた。
だったらもう、仕組みとして“結婚”を取り入れてみよう。
まわりの男性はほとんど既婚者になっていた。
恋愛から結婚へつながる“自然な流れ”なんて、もはやどこにも見当たらない。
それでも、私は生活を整えたかった。
私は、結婚相談所への入会を決めた。
結婚相談所は、事実婚OKと書いてあるところを選んだ。
事実婚を希望した理由は、夫婦別姓を望んでいるから。
会社の名義変更は面倒だし、名前の画数がすこぶる良くて、なんとなく運命まで変わりそうで怖かった。
私にとっての結婚は、“姓の一致”よりも“生活の整い方”。
ロマンはなくても、現実を重ねていくほうが私らしいと思った。
もうひとつ、私には「子どもを持たない」という条件があった。
会社を続けることが、自分にとって一番の責任だと感じていたからだ。
子育てによって、仕事に影響が出ることは避けたかった。
だから、最初からその可能性は排除しておきたかった。
このふたつの条件が、結婚できる確率を下げることになるなんて、正直そのときは考えていなかった。
でも、無理なら無理でいい。
合わなければやめる。とりあえずやってみよう。
そんな軽めのスタンスで、仲人には「期間限定で通うスポーツクラブみたいなものです」と伝えていた。
プロフィールは、仲人さんがチェックシートをもとに作ってくれる。
私は特に何も伝えず、お任せすることにした。
盛りたいわけでも、取り繕いたいわけでもないけれど、
実際に上がってきたプロフィールを見て、思った。
——なんじゃこりゃ。
世間一般にいう「理想の家庭的な女性像」に、完全に寄せられていた。
お酒は嗜む程度(いやいや、めっちゃ飲む)
休日は料理などの家事をして過ごします(料理できねーって言うたやん)
さすがに料理は違うと思って、「家事をして過ごす」に変更してもらった。
結婚相談所は、私の理想とはまったく違うルールで動いている。
“良妻賢母”というテンプレートが、今も静かに息づいている。
ああ、やっぱり社会ってこうなんだな、と。
その違和感ごと、私は受け止めて、淡々と前に進むことにした。
それでも私は、生活を整えたい。
自分のままで、納得した暮らしがしたい。
