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「微力だけど無力じゃない」“普通の高校生”が踏み出した、平和への1歩—小寺輪子さん

「好きなことはNetflixを見ることで、最近嬉しかったのはクリスマスに遊んで新しい友達ができたことです」。そう語るのは北杜市立甲陵高等学校1年の小寺輪子さん。高校生平和大使として活動している。今回の取材で取材で伝わってきたのは、「特別な人」だから平和活動をしているのではなく、「普通の高校生」が活動しているということだった。その“変わらなさ”が、むしろ平和を遠い話にしがちな同世代にとって、最も大きなヒントになる。

小寺さんが平和に関心を持つようになったのは、平和大使になるまで「平和についてあまり考えたことがなかった」からこそだという。転機は、母親から高校生平和大使の存在を教えられたことだった。そこで「自分にもできることがある」ことを知り、彼女は一人で広島に行った。そして高校生平和大使を目指した。
選ばれたと聞いたときの率直な気持ちは、「自分が知らないことが多いと感じていたから、なったからにはもっと知らなきゃと思った」。活動は“すでに知っている人”がやるものではなく、“知らなさ”に気づいた人が、学びながら進めていくものだと彼女は示している。

高校生平和大使として小寺さんが行っている主な活動は、署名を集めてジュネーブに送ること、広島・長崎での平和学習、被爆者の講話を受けること、対談や発信活動、そしてスイスに行ったことだという。会報の記載によれば、高校生平和大使は「核兵器の廃絶と世界平和を願う市民の声を届けること」と「高校生1万人署名」を国連に届ける役割を担い、スイス・ジュネーブの国連欧州本部へ赴いている。2025年夏は被爆から80年の夏であり、この年に集約した署名数は約11万筆、24年間の累積は2,834,213筆。活動に参加した高校生はのべ6,000人にのぼる。国連軍縮部では、高校生1万人署名111,071筆を提出したことが報告されている。

活動の中で特に印象に残っている出来事として、小寺さんは「被爆者の方の話を聞いたこと」を挙げた。教科書では感じられない「生の力強い言葉」に触れ、戦争や被爆の「怖さを改めて実感」したという。さらに、被爆講話を通して「思い出したくないようなことを思い出して話してくれている」ことにも気づいたと語る。平和を考えるとは、出来事の知識だけでなく、語り手が背負ってきた重さに目を向けることでもあるのだと、彼女の言葉は伝える。

国連(ジュネーブ)での活動を通して、日本にいるだけでは気づけなかったこともあったという。出来事としては、レセプションで現地の高校生と話したこと、そしてホロコーストなどを深く学んだことを挙げた。海外の同世代と話して感じたのは、「それぞれの自国の歴史にしか触れていない」こと。だからこそ「もっとそれぞれの国の歴史について学ばなければならないと思った」と語る。自分の国の過去だけを知るのではなく、世界の出来事を知ろうとする姿勢が、平和を考える視野を広げる。

活動の前後での変化について尋ねると、小寺さんは「知りたいと思うようになった」「考えてなかったことに気づいた」と答えた。平和に対するスタート地点が「考えていなかった」だったからこそ、変化は明確だったのだろう。被爆者の言葉で心に残っている点としては、「自分の家族がどうなったとか」という話があり、「自分自身でも想像できるから怖いと思った」と述べている。遠い時代の出来事に見えても、家族という単位で想像できてしまう瞬間、平和は突然、自分の生活圏に入ってくる。

また、平和活動をしていて日常の中で大切にするようになったことは、「知ることがまず大事」という意識だという。「世界中にあることを知ろう」という気持ちが芽生えたとも話した。小寺さんにとって「平和」とは、「みんなが心から平和だと言える状況」、そして「世界に核兵器がない」ことだ。

一方で、活動をしているからこそ見える課題もある。小寺さんが挙げたのは、広島・長崎と他県での平和教育の差だ。広島・長崎では当たり前に知っていることが、自分の周りでは知っている人のほうが少ない。さらに、被爆者の方の平均年齢が上がり、語りが「風化しつつある」ことへの危機感も語った。「生の声を増やしていく必要がある」と彼女は言う。
また、核兵器は「まだすごくたくさんある」現実があり、活動の意味を問われることもあるという。そんなときに支えになっているのが、「微力だけど無力じゃない」というモットーだ。

若い世代が平和について発信する意味について、小寺さんは「これからを生きる若い世代が伝えていくことに意味がある」と話す。若い世代に広めていくために、若い世代が活動する意味がある。さらに、平和の話を「難しい」と言われたら伝えたいこととして、「自分と意見が違う人には合意はしないけど理解はすることが大切」という言葉を挙げた。若い世代だからこそできる平和づくりとしては、「知る、伝えるだけじゃなくて話し合う時間があったらいい」と述べている。
学校生活との両立については、「どっちもやりたい気持ちが強いから」と答えた。特別な工夫を誇示するのではなく、やりたいからやる、という率直さがそこにある。

今後力を入れたいことは、「若い世代に伝えていく」こと。活動として「定着している」取り組みを土台にしながら、「出前授業とかをしたい」と話し、そのために自分自身も「学びを深めていきたい」という。将来の姿としては「アナウンサーになりたい」。そして「平和とか世界について発信していきたい」と語った。

最後に、同世代の高校生へ伝えたいことは明確だった。「高校生としてできることはないと思わず、考えることや知ることだけでも意味がある」。署名活動への参加、興味を持つこと。それだけでも、平和への一歩になるのだと。大人や社会に求めたい行動としては、「平和教育を世界で、広島長崎と同じように」「深く学んでいくことが大事」「核兵器廃絶をもっと強く伝えていかなきゃと思う」と述べた。

小寺輪子さんは、平和を語るときに“立派な言葉”を先に置かない。むしろ「知らなかった」ことを出発点にして、「知りたい」と言い切る。そして、微力でも続ける。高校生平和大使という肩書きが示すのは、特別な才能ではなく、学び続ける姿勢と、声を届ける行動だ。平和を遠い話にしないために必要なのは、まず知ること。彼女が繰り返したその言葉が、同世代の私たちに向けた、いちばん現実的で私たちが自分ごととして受け取らなければならないメッセージになっている。
(取材:渡邊悠斗 青栁璃子)
(執筆:渡邊悠斗)

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