即身仏について⑥
【即身仏の遺存状態】
どういうわけか、長らく即身仏に関心を持っている。
即身仏については日本ミイラ研究グループが報告書『日本ミイラの研究』と『日本・中国ミイラ信仰の研究』を出している他、松本昭先生がそれを簡易にまとめ直した『日本のミイラ仏』を執筆されている。
これらの本には、即身仏の調査時の写真が掲載されていて、それらは記録写真のため、衣を脱がせた状態で撮影されているのだが、見ていると大日坊の真如海上人は残存状態が良い。伝承によると96歳で入定したとのことで、長年の木食行の成果に加え、加齢で「枯れきっていた」ものだろう。一方、いわゆる燻製にされた即身仏が2体あり、その1体である円明海上人は、『日本ミイラの研究』に「腐敗しかかった状態で燻して固めたのではないか」という所見が記されており、写真を見ると肉付きがよく、自然にミイラ化するようには見えなかった。
地域によるが、日本は元々、高温多湿な気候である。北陸や東北といった寒冷地はおおむね豪雪地帯で、水気は多い。そうした中で自然にミイラ化するには条件が整っていなければならず、どちらかというと地上入定の伝承がある即身仏ほど遺存状態は良さそうなのである。
なお、西生寺の弘智法印は江戸時代には「生けるが如し」と言われるほどだったが、明治以降の無住時代に傷んでしまったらしい。
【即身仏研究史抄】
以前、もしかしたら触れたかもしれないが、中尊寺金色堂に残る奥州藤原氏3代のミイラ調査と、即身仏の調査はまったく別の研究グループが実施していて、その研究成果は共有されていないらしい。このことについて、日本ミイラ研究グループの創設者である安藤更生先生は常に苦言を呈されていたらしい。
奥州藤原氏3代のミイラと即身仏は素人目で見ても異なるが、同じミイラであり、共有できる知見もありそうである。その後、日本に残るミイラ調査(エジプトなどのミイラを除く)は日本ミイラ研究グループが行なっていたが、近年はほぼ活動を終えていて、最後まで牽引されていた松本昭先生も鬼籍に入られた。
これで日本のミイラ研究は長く停滞していたのだが、先の『ミイラ展』に合わせて国立科学博物館が中心になって、改めて即身仏を含めたミイラの調査研究プロジェクトを進めることになったらしい。この一部の成果が『ミイラ展』図録に出ていたが、その後、続報がなく(少なくともニュースになっていない)、進展が気になるところである。
ちなみに岐阜県横蔵寺にある妙心法師の即身仏だけは日本ミイラ研究グループが調査しておらず、横蔵寺によるとすでに調査済みとのことだが、その正式な成果は発表されておらず、『美濃のミイラ信仰』という論文に一部が記載されている。
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