ラメとポテサラ
キッチンハイターがきれた。
触ると指紋がなくなり、指先がヌメヌメになるアレである。現代は若者ではなくキッチンハイターがキレるのだ。たまにスプレーごと買い換えるほうがいいらしいが、もう長いこと詰替えを買って使っている。1プッシュで十分使えるのに、なんか不安になって何回もプッシュするからすぐ減ってしまう。同じ理由で食器用洗剤もすぐなくなる。洗えてる実感が欲しくてプッシュしてしまうのだ。これは多分、男性あるあるな気がする。みんな目に見える実感が欲しいんだ。
近所のドラッグストアに行った。蝦夷で一番敷地面積が広く中規模専門病院に併設されているフラッグシップな店舗のくせに、全体の品揃えが微妙に良くない不思議な店舗である。シャンプーの棚なんて頭が何個あっても使い切れないぐらい種類があるのに、花王のMEMEMEだけピンポイントで取り扱ってなかったり、マルホの基礎化粧品カルテHDシリーズだけ頑なに取り扱いがない。やる気があるのかないのか。腹の中がよめない昼行灯みたいな店である。
入口に入るとまず化粧品コーナーが目に入ってきた。@コスメで貰ったBBクリームのサンプルが良かったので本品を買いたかったのに、店内をパックマンのように3周探し回っても見つからなかった。仕方なく、他の某メーカーのBBクリームのテスターを手の甲に塗ったら、広瀬香美のやかましい腹式呼吸みたいにギラッギラになった。手の甲なのに、たしかに腹式呼吸だった。手がやかましい。
何でもかんでもラメいれりゃいいってもんじゃない。欲しけりゃ買うから、ラメは別で売って欲しい。そんなにみんなラメが常時欲しいわけじゃないのに、なぜかメーカーはラメを入れたがる。偏光パールもほぼラメみたいなもんだろアレ。ツヤ感とギラ感はまったくもって別の概念である。顧客の顔面をアコヤ貝にでもさせたいのか。磯臭い顔面になるのは勘弁願いたい。
あのBBクリームを買ったら危うく顔面ミラーボールになるところだった。インフルエンザのときに見る夢のような、さくらももこが描く曼荼羅みたいに奇抜な顔になるところだった。日常に潜むこういうトラップほど地味にダメージを食らうので、今後は気をつけて生活していかねばならない。
結局、テスターを棚に戻して本来の買い物に戻った。お惣菜コーナーでは高機能レジの不調で電子マネーが使えず「現金ならお惣菜が全品半額」という超ラッキーレアイベントに遭遇したが、食べたいお惣菜があんまりなかった。レアイベントで何も買わずに出るのも癪なので、中途半端なポテサラを無理やり買った。別にそんな好きじゃないのに。
家に帰り、後ろ手で玄関の鍵をしめて、はたと気づいた。私、キッチンハイター買ってない。ふぬけて膝から崩れ落ちた。咄嗟に壁についた左手は、こんな私を嘲笑うかのようにキラキラとアイリスオーヤマ製電球を反射させ、玄関がたちまちジュリアナ東京になった。ここは蝦夷である。
速攻で手を洗い、いつもどおりのみすぼらしい左手に戻すことができた。本当にラメはいらない。私に必要なのは潤いと人生への覚悟である。自分で言ってて悲しくなってきた。ジーザス・クライス。
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