40歳、「私には何もない」と思っていた。でも、本当は全部持っていた。
よく、お客様からこんなことを言われる。
「手に職があるっていいですよね。」
「私には何もないから。」
その言葉を聞くたびに、
「私も、そう思ってたよ。」
と心の中で思う。
40歳の頃の私は、
仕事にできるような資格もない。
お金もない。
人脈もない。
自信もない。
自分が誇れるものなんて、何もないと思っていた。
そんな私が個人サロンを始めて、
少しずつ、その考えが変わっていった。
サロンを始めて約1年。
本業のユニクロで働きながら、休みの日にお客様を迎えていた。
お客様は月に10人から20人くらい。
多くはなかったけれど、少しずつ安定してきていた。
でも、私の中にはずっと小さな不安があった。
最初のお客様は、職場の子やその家族など、私と近い人が多かった。
だから、
「本当に来たくて来てくれているのかな。」
「知り合いだから、やめにくいだけなんじゃないかな。」
そんなふうに思うこともあった。
お客様が来てくれているのに、
私はまだ、自分に自信がなかった。
そんな時、コロナがやってきた。
本業のユニクロでは、毎日たくさんの人と接する。
一方、サロンは一対一。
お客様はマスクをして、少し咳をしただけでも私に気を遣ってくれた。
そんなお客様を迎える自分が、
毎日たくさんの人と接する仕事をしていることが、
なんだか申し訳なくなった。
私は個人サロンを、いったん閉めることにした。
約3ヶ月。
その間、ずっと思っていた。
「再開しても、きっとほとんど戻ってきてくれないだろうな。」
3ヶ月も空けば、そのまま来なくなってもおかしくない。
むしろ、今まで義理で来てくれていた人にとっては、
通うのをやめるには、ちょうどいいタイミングなのかもしれない。
そして3ヶ月後。
そんな不安を抱えながらも、サロンを再開することにして、お客様に連絡をした。
すると、
ほとんどのお客様が戻ってきてくれた。
嬉しかった。
そして、久しぶりにお会いしたお客様から、
「ずっと再開待ってました!」
「話したいことがいっぱいあるのー!」
そんな言葉をいただけた。
「本当に私を必要としてくれてたんだ。」
そう思った時、
ふと今までの自分のことを振り返った。
昔から、友達に相談されることは多かった。
仕事をするようになってからは、
どの仕事の時も、お客様から相談されることが多かった。
個人サロンを始めてからも、
「話しやすい。」
「何でも話せる。」
と言ってもらえることが多かった。
でも私は、それを自分の特技だと思ったことなんてなかった。
ただ普通にやっていただけだった。
人に関わる仕事をしてきたこと。
新人育成に携わってきたこと。
店舗づくりに関わったこと。
一つ一つは、
「ただ働いてきただけ」だと思っていた。
でも、
人と関わる仕事を続けてきたから、お客様との接し方が分かった。
新人育成に携わってきたから、相手に合わせて伝えることができた。
店舗づくりに関わった経験があったから、何もないところから始めることもできた。
私の強みは、施術だけじゃなかった。
人の話を聞くこと。
人と話すこと。
人と関わること。
そんなことも、ちゃんと私の強みになっていた。
一つ一つは、何のつながりもないと思っていた。
でも、本当に全部が自分の力になっていた。
40歳まで、
ただ働いてきただけだと思っていた。
キャリアなんてないと思っていた。
何者にもなれていないと思っていた。
でも、違った。
私は思っていたより、
ちゃんと生きてきたんだと思った。
今でも、お客様から
「私には何もないから。」
と言われることがある。
でも、今の私は思う。
本当に、何もないのかな。
資格じゃなくてもいい。
立派な経歴じゃなくてもいい。
事務の仕事でも、
接客の仕事でも、
子育てでも。
今まで誰かに褒められたこと。
なぜか自分によく頼まれること。
自分にとっては普通だから、
特技だなんて思ったこともないこと。
そんなところに、
自分でも気づいていない「強み」があるのかもしれない。
私は、一歩踏み出したから、
それに気づくことができた。
何かを新しく手に入れたから、
自信がついたんじゃなかった。
ずっと自分の中にあったものに、
やっと気づいただけだった。
もし今、
30代の頃の私に会えるなら、
こう言ってあげたい。
「今やっていることは、何ひとつ無駄じゃないよ。」
「何もないと思ってるけど、実はもう、ちゃんと持ってるよ。」
