掌編小説 │ すずめと雨宿りした初夏の思い出
私は部屋の窓から外の天気を伺った。
曇天だったが空は明るく、地面も乾いていた。
雨が降る前の独特のホコリっぽい臭いはしない。
(しばらく雨は降らないだろう)
傘も持たずに公園に出かけた。
ところが散歩中、公園を半周ばかり過ぎたところだった。
突然雨が降ってきた。
雨脚も強くなるばかりだ。
私は慌てて建物の屋根の下に移動した。
上半身はずぶ濡れ。
初夏の湿気と酸性雨の臭い。
上着を着ていたことがまだ救いかな。
鞄を脇に置き、溜息を一つ吐く。
私は上着を脱いで壁に背を預けて座った。
ポケットからスマートフォンを取り出す。
(音楽でも聴いて待つか……)
そう思い、脇に置いた鞄に目をやった時――。
すずめがカバンの脇にちょこんと座っていた。
どこから飛んできたのか、それとも最初から居たのか。
私はすずめに話しかけた。
「君も傘を忘れたの?お互い大変だね」
すずめはチュンチュンと鳴きながら辺りをウロウロしている。
警戒心があまり無いようで、私の足元を行ったり来たり。
私はすずめの行動をしばらく伺っていた。
砂を突いたり、
砂で体を洗ったり、
ちょっとちょこちょこ歩いては立ち止まったり。
何だか見ていて飽きない。
そうこうしてるうちに雨は小降りになった。
歩いて帰れそうなので、その場を発とうとした時――。
私の爪先の辺りまですずめがぴょこぴょこ近寄ってきた。
そして私の顔を見て、チュン!と一声放って飛び去った。
「じゃあね」って言いたかったのかな?
すずめの気持ちはわからない。
けれども、ほんの一瞬――心通わせられた気がした。
傷心の私の心をすずめが少し埋めてくれた。
その日は楽しい気分で過ごせた。
