連載:メタル史 1987年①Anthrax / Among the Living
Anthrax / Among the Living

(アンスラックス『アマング・ザ・リヴィング』)
1987年発表 / Megaforce Records(米国)、Island Records(その他地域)
■背景と位置づけ
『Among the Living』は、アメリカのスラッシュメタルバンド、Anthraxの3枚目のスタジオアルバムであり、1987年3月16日にリリースされた。本作は、バンドがメタル界の「ビッグ・フォー」の一角としての地位を確立するきっかけとなった作品である。
アルバムは、Metallicaのベーシスト、クリフ・バートンへの追悼として捧げられている。彼は1986年9月27日、Anthraxと共にツアー中、スウェーデンでのバス事故で亡くなった。この悲劇は、ツアー仲間であり親しい友人でもあったAnthraxに深い衝撃を与え、アルバム全体にその影響が反映されている。特に、「A.D.I. / Horror of It All」は、彼の死に対するバンドの感情を表現した楽曲とされている。

プロデューサーには、ジミ・ヘンドリックスやレッド・ツェッペリン、KISSなどを手がけたエディ・クレイマーを迎えた。彼の起用は、バンドがライブのエネルギーをスタジオ録音に再現したいという意向からであり、クレイマーの経験と技術が求められた。録音はフロリダのクアドラディアル・スタジオで行われ、その後、バハマのコンパス・ポイント・スタジオでミキシングが行われた。クレイマーは、当初、リバーブやサウンドエフェクトを多用したミックスを提案したが、バンドはよりドライでライブ感のあるサウンドを求め、最終的にその方向で仕上げられた。

■音楽性と特徴
『Among the Living』は、スラッシュメタルの典型的な特徴を持ちながらも、Anthrax独自のスタイルを確立した作品である。1987年当時のスラッシュメタルは、速いテンポ、低音域の複雑なギターリフ、高音域のギターソロ、ダブルバスドラム、攻撃的なボーカルが特徴であり、Metallicaの「Master of Puppets」やSlayerの「Reign in Blood」などが代表的な例である。これらの作品は、重厚でシリアスなトーンが支配的であった。
一方、Anthraxは、ハードコアパンクの影響を受けたギャングコーラスやユーモラスな歌詞、ポップカルチャーの引用などを取り入れ、より親しみやすく、エネルギッシュなサウンドを展開した。ジョーイ・ベラドナのクリアで高音域のボーカルは、他のスラッシュメタルバンドとは一線を画し、メロディアスな要素を強調している。また、スコット・イアンのリズムギターとチャーリー・ベナンテのドラムは、タイトで切れ味のある演奏を特徴としており、バンドのサウンドに独自性を与えている。

イメージもカラフル
歌詞には、スティーヴン・キングの小説『ザ・スタンド』や『アプト・ピューピル』、コミックのキャラクター「ジャッジ・ドレッド」など、ポップカルチャーからの引用が多く見られる。また、社会的な問題にも触れており、「Indians」ではネイティブ・アメリカンの苦境を、「One World」では核戦争のリスクをテーマにしている。
■評価と影響
『Among the Living』は、批評家からもファンからも高く評価され、Anthraxの代表作として位置づけられている。本作の成功により、AnthraxはMetallica、Megadeth、Slayerと並ぶ「ビッグ・フォー」としての地位を確立した。アルバムは、アメリカでゴールドディスクに認定され、イギリスではチャート18位を記録するなど、商業的にも成功を収めた。

また、本作はスラッシュメタルの名盤として多くのリストに掲載されており、Rolling Stone誌の「100 Greatest Metal Albums of All Time」では20位にランクインしている。
なお、本作はUSではMegaforceから、グローバルではIslandからリリースされている。これは前作と同じ体制。Slayerを擁するMetal BladeとAnthraxを擁するMegaforceはこの頃のUSのメタルシーン、特にスラッシュメタルの隆興に大きな役割を果たした。Metallicaも最初のアルバムはMegaforceからリリースしている。
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