連載:メタル史 1987年④Savatage / Hall of the Mountain King
Savatage / Hall of the Mountain King
(サバタージ『ホール・オブ・ザ・マウンテン・キング』)
1987年発表 / Atlantic Records

■背景と位置づけ
『Hall of the Mountain King』は、アメリカ・フロリダ出身のヘヴィメタルバンド Savatage の4作目。
1987年9月28日にリリースされ、初のPaul O'Neillとの共同プロデュース作となった。
これまでのメンバー主導の方向から、O'Neillによるコンセプト性の強い制作アプローチが加わり、バンドの音楽性がプログレッシブメタルへと大きく展開する転機の作品とも言える。

USのヒーロー小説の挿絵感がある
USパワーメタル王道の世界観
■制作までのバンドの歴史とメンバー背景
1979年、Jon Oliva(当時19歳)と実弟のCriss Olivaが、当初「Avatar」という名でフロリダ州Tarpon Springsで結成。Jonはボーカルと鍵盤、Crissはリードギターを担当。
1981年にはドラマーにSteve “Doc” Wacholzが加入、1982年にはベーシストKeith Collins、さらにJohnny Lee Middleton(1986年加入)へとメンバーを強化。
1983年、Par Recordsからデビューアルバム『Sirens』発表(この時すでに“Savatage”に改名)。翌1985年にはAtlanticと契約、『Power of the Night』を発表。Jonのキーボード導入や「Warriors」などブロードウェイ風構成が特徴で、批評家には好評だったが売上は伸びず。
1986年には『Fight for the Rock』を発表。メジャー路線への走行が奏功せずファンに拒絶され、結果的にJonはBlack Sabbathに、CrissはMegadethに誘われたがバンド継続を選択。このタイミングでベースをKeith CollinsからJohnny Lee Middletonに交代。
1987年の今作で、プロデューサーPaul O'Neillが加入。彼は構成をドラマティックに演出、キーボード奏者Robert Kinkelも参加し、シンフォニックな要素を本格導入。アルバムはプログレッシブ/パワーメタルとして高く評価された。

■音楽性と特徴
本作は、クラシカルな要素を内包しつつ、プログレッシブ・ヘヴィメタルへの進化が顕著。
タイトル曲の前奏 "Prelude to Madness" では、エドヴァルド・グリーグの「山の魔王の宮殿にて」を大胆にアレンジ使用し、さらにグスターヴ・ホルストの「火星」のモチーフも取り込んでいる。
楽曲構成には、イントロ・展開・サビ・エンディングのドラマ性が強く、一部にはオーケストラ調のアレンジも見られる。
Jon Olivaの劇的なボーカル、Criss Olivaの叙情的かつテクニカルなギターリフ、Robert Kinkelのキーボードによる壮大なサウンドスケープが見事に融合している。
これは、メタルバンドによるクラシック主題の引用としても初期に位置づけられ、プログレッシブ/シンフォニックメタルへの布石となっている。
■評価と影響
アメリカ Billboard 200 で 116位 にランクインし、初のチャート入りを果たした。
Loudwire(22位)、Metal Hammer(8位) によって「歴代パワーメタル名盤」として挙げられている。
AllMusicでは、同時代のプログレッシブ/ヘヴィメタルとして高く評価。
これ以降の Savatage は、演劇性と構築性を併せ持つ音楽路線へ舵を切り、後の『Gutter Ballet』『Streets: A Rock Opera』へと進化していく。

Savatageは、その後のメタル史において、周囲のジャンルを巻き込む構造的進化と商業的成功を遂げたバンドとして高く評価されている。当連載でSavatageを取り上げるのは最後なので今後の影響についても触れておく。
■ Savatageの特異性とメタル界での立ち位置
構造的進化とジャンル融合
初期はUSパワーメタル〜ヘヴィメタル路線だったが、『Hall of the Mountain King』(1987)以降、Paul O’Neillのプロデュースにより、シンフォニック・プログレッシブ・メタルへと変貌。
“Prelude to Madness”のグリーグ引用や、多声ハーモニー、ドラマ仕立ての楽曲構成などが特徴。
これにより、USメタルの範疇を超え、後のシンフォニック/プログレッシブメタルに一線を画す重要な位置を占めた。語劇性・ロックオペラの先駆的展開
『Gutter Ballet』(1989)や『Streets: A Rock Opera』(1991)では、ブロードウェイやオペラ的構成を大胆に取り入れ、ヘヴィメタルに物語性と演劇性を融合。
Savatage自体が雑多な要素を統合し、新たな金字塔を打ち立てた。
■ Trans‑Siberian Orchestraとの関係
サイドプロジェクトから主軸へ
1995年発表の“Sarajevo”収録『Dead Winter Dead』以降、Paul O’Neillが中心となり、Jon Oliva、Al Pitrelli、Robert Kinkelなどが参加したTrans‑Siberian Orchestra(TSO)を結成。
TSOは1996年からアリーナ〜ホールシアターを舞台に、クリスマスロックオペラ形式で大成功を収め、全世界で10万枚以上のアルバムセールスと500万人以上の観客動員を記録した唯一無二の存在に。

Savatage→TSO の橋渡し
“Christmas Eve/Sarajevo 12/24”はSavatage名義およびTSO名義でヒットし、Billboard Hot 100にもランクインした背景から、商業的に最大の成功を収めたUSパワーメタル由来のプロジェクトとなった
■ その後のメタルシーンへの影響
ジャンルの壁を越えたアプローチ
Savatageの試みは、後続のSymphony X、Kamelot、Blind Guardianなどに影響を及ぼし、ロックオペラ/シンフォニックスタイルのメタル潮流を生み出した。USPMの潜在力を示した存在
当時はまだ「US Power Metalは商業的に弱い」とされていた中、Savatage~TSOは音楽的深化と商業的戦略が両立可能であることを示し、その後のUSメタル→プログレッシブ/シンフォニック派への道筋を開いた。
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