連載:メタル史 1986年⑦ Kreator / Pleasure to Kill 情報編

ジャーマンスラッシュメタルの黎明期から活動するバンド。ジャーマンスラッシュメタルはその名の通り、USで盛り上がったスラッシュメタルに影響を受け、同時代的にドイツで発生したシーンです。代表的なバンドはジャーマンスラッシュ四天王と呼ばれ、今回のKreater(クリーター)の他、Destruction、Sodom、Tankardが上げられます。現在は商業的にはKreatorが頭一つ抜けていますね。
ドイツのメタルシーンは70年代にScorpionsが牽引し、80年代にはAcceptが台頭。そして1980年代半ばからNoise Recordによるジャーマンパワーメタル勢、Helloween、Grave Digger、Running Wild、Rageらも出てきます。ちなみにこのKreatorもノイズ所属。先のジャーマンスラッシュ四天王のうち、Kreator、Tankardはノイズ所属ですね。80年代半ばにおけるジャーマンメタルシーンの重要バンドのほとんどが当時のノイズレコードに所属していたのは興味深い。まさに震源地です。以前も触れた通り、もともとノイズレコードはUSのハードコア、ポストハードコア、メロコアといったハードコアシーンのバンドの作品をドイツで出したり、ツアーに呼んだりしていた。そんなルーツを持った彼らがハードコアだけでなく、ハードコアとメタルがクロスオーバーしていったスラッシュメタルシーンに興味を持ち、独自のスラッシュメタル出版レーベルとして作ったのがノイズです。ただ、そこにドイツらしい特性として「メロディアスな展開」が加わり、先に挙げたジャーマンパワーメタル、メロディックスピードメタルが生まれていく。そもそも標榜した「スラッシュメタル」という点を磨いていったのがKreatorですね。

リリース時まではこの3名体制で、本作のレコーディングも3名
この後、リードギターを迎えて4人体制に
アーティスト写真なども4人のものが増えるが、アルバム制作にかかわったのは3名
Kreatorは1982年、ドイツのエッセンでMetal Militiaというバンド名で作られました。メタル・ミリティア。Metallicaの1stアルバムに収められた曲名ですね。Metallicaの1st、Kill ’Em Allのリリースは1983年ですが、デモテープのNo Life 'Til Leatherが1982年リリースでそこにも収録されていたので、そこから名前をとったのでしょう。当時からMetallicaのデモテープがファンのテープトレードネットワークによってドイツにも届いていた。それに影響を受けて後のKreatorが結成されます。オリジナルのメンバー構成は、リードボーカル兼ギタリストのミレ・ペトロッツァ、ドラマーのユルゲン・"ヴェンター"・レイル、ベーシストのロブ・フィオレッティ。この後多くのメンバーチェンジを経ていきますが、現在まで残っている中心メンバーはミレとロブですね。
1985年、デビューアルバム「Endless Pain」をリリース。こちらはわずか10日間で録音されたとされ、かなり粗削りながらブラックメタルにも影響を受けた独自のスラッシュメタルを打ち出しています。
このアルバムでは大きな話題になることはなかったものの、続いて2ndアルバムである本作をリリース。このアルバムリリース後に本格的にバンド活動をスタートするようになります。というのも、Pleasure To Killをリリースする前は5回しかライブをしたことがない。いわゆる「ライブでたたきあげてアルバムをリリース」といったUSスラッシュ勢と違い、初期ノイズは青田買いというか、まだライブ経験もほとんどないようなバンドにもリリースの機会を与えていたんですね。良くも悪くもアンダーグラウンド。ただ、それによって多くのバンドが生まれたことも事実。なお、Kreatorは本作をリリースした後は初のツアーもスタートし、いよいよバンド活動が本格化していきます。
1986年、まだPleasure To Killリリース前の若々しいメンバーが見れるTVインタビュー↓
本作は今でこそ後のデスメタル、ブラックメタルといったエクストリームメタルに多大な影響を与えた名盤とされていますが、リリース当時はそこまで話題にならず。ただ、Kreatorは根強く活動を続けていき、2010年代からついに商業的にブレイク。ドイツの国内チャートで1位をとるような大物バンドになっていくにつれて、2017年の再発時には初めてドイツで99位にチャートイン。時代を経て評価が高まっていったアルバムと言えます。ちなみに、元ノイズレコードでドイツで1位をとったのってもしかしたらKreatorが最初(2017年、Gods Of Violenceで獲得)かも。出世頭のイメージの強いHelloweenが1位をとったのは実は2021年のHelloweenが初です。
2010年代、大物バンド感が出てきたKreator↓
なお、リリース当時は「Celtic Frostに次ぐ欧州最高のデスメタルバンド」とか「PossessedのSeven Churchesに影響を受けているが、残虐性はオリジナルを越えている」と行った、デスメタルの萌芽期の作品としての評価が高かった様子。もともと(1985年、1986年当時の)ノイズレコードはハードコアの影響が強い荒々しい音像が多い印象ですが、その中でも特に激烈な音像を志向していたようです。
本作のプロデューサーは Harris Johns。Harris JohnsはHelloweenのWalls Of Jerichoのプロデューサーでもありますね。ノイズレコードの所属アーティストを中心にジャーマンメタル、ハードコア界で幅広い作品を手掛けた名プロデューサー。あと、wikiだとRalf Hubertもプロデューサーとしてクレジットされていますが、metallumを見るとRalf Hubertがかかわっているのはボーナストラックだけですね。metallumの方が正しそうなので、この時はプロデューサーとしては参加していないでしょう。厳密には、同年にレコーディングされ、1987年にリリースされたEP「Flag of Hate」がRalfのプロデュース。再発盤ではこのEPも含まれているのでwikiの記載も間違いではありません。ちなみに、Ralf Hubertはドイツのスラッシュメタルバンド、Mekong Deltaの中心メンバーでもあります。
それでは良いミュージックライフを。
ここから先は

メタル史 1980-2009年
1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
