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連載:メタル史 1986年①Candlemass / Epicus Doomicus Metallicus 情報編

1986年に突入です。メタル史を追っていくのは楽しいですね。やはり時系列で細かく追っていくと今まで知らなかったことや気づけなかったことが出てきます。同時に「やっぱりわからないなぁ」と思うことも。わかっている範囲とわからない範囲がはっきりしてきた、というべきか。自分なりのメタル史観がアップデートされていく感じはします。疑似的な同時代性の視点を持つことで当時のアルバムをより新鮮に楽しめるようになったり。願わくば読者の方もそうでありますように。

それでは1986年を見ていきましょう。1枚目はこのアルバムです。

ドゥームメタル四天王(Pentagram、Saint Vitus、Trouble、Candlemass)の中で唯一、US以外、スウェーデン出身であるCandlemass。なお、Candlemassを省いて同じくUS出身のThe Obsessedを加える向きもありますが、英語版wikiで「the Big Four of Doom Metal」と記載されているのはこの4バンドですね。実際、RYMなどで代表作のレビュー数や評価を見てみても、1980年代のDoom Metalムーブメントの中で頭抜けているのはこの4組。というか、Pentagramは変則的(1985年のデビューアルバムは実際の録音は1981年だし、評価されたのは90年代の再評価だし)なバンドなので、リアルタイムで存在感が大きかったのはTroubleSaint Vitus、そしてこのCandlemassだったと言えるでしょう。

その中で、地理的に離れた場所から出てきたのはこのCandlemass。スウェーデンなので、USからは距離がある。UKとは互いに影響を与え合っていますが、やはりシーンそのものは違う。そうそう気軽に対バンできないし、ライブを観る機会とか交流する機会も少ないですからね。独自性が高くなる。スウェーデン人が見た「ドゥームメタル」が表現されることになります。

1986年のスウェーデンのメタルシーンはまだまだ黎明期で、それほど多くのバンドが活動しているわけではありませんが、後の「北欧メタル」の萌芽がしっかりとみられる時期でした。NWOBHM直系のヘヴィメタルスタイルのバンドとしては当連載でも取り上げたHeavy Load(1986年には活動は停滞気味)の他、220 Voltが最盛期を迎えています。他、後の北欧ブラックメタルの源流とも言えるBathoryもすでにデビューしており、1987年にリリースされる「Under the Sign of the Black Mark」を制作中。また、ネオクラシカルスタイルの王者Yngwie Malmsteenも名作「Trilogy」をリリース。そしてCandlemassが本作でデビュー。まだ数は少ないものの、その後の北欧メタルの大きな潮流を作っていく兆しが生まれています。

Candlemassのデビューに至るまでの歴史を追ってみましょう。Candlemassの中心メンバーはベースのLeif Edling(リーフ・エドリング)で、彼がメインソングライターでもあります。Edlingが1982年、19歳の時に組んだバンドがNemesis。当時のスウェーデンでは数少ないドゥームメタルに傾倒したバンドで、他の同時代のスウェーデンのバンドとは一線を画していました。1984年にEP『The Day of Retribution』をリリース。Candlemassの原型とも言えるサウンドを奏でています。

ただ、商業的に失敗し、他のメンバーもドゥームメタルの追求に熱意を持たなかったためバンドは解散。Edlingはより壮大なドゥームメタルを追求するために新バンドCandlemassを結成します。当初はパーマネントなバンドというよりEdlingが主導するプロジェクトという色合いが強かった様子。最初期のコンセプトは「Black Sabbathのヘヴィネスに、クラシック音楽の荘厳さを加える」だったそうで、まさにそのイメージ通りのアルバムを生み出すことに成功したわけです。

1985年当時のメンバー、3人しかいない

1985年時点でのメンバーは下記の通りで、基本はこのメンバーで本作もレコーディングされています。

  • Leif Edling(ベース) – バンドの中心人物、作曲担当

  • Mats “Mappe” Björkman(ギター) – リズムギター担当

  • Klas Bergwall(リードギター)

  • Mats Ekström(ドラム)

  • Johan Längqvist(ボーカル)

このうち正式メンバーとして残ったのはEdling、Björkman、Ekströmだけで、ボーカルのヨハン・レンクヴィストはゲスト参加のみ。正式なボーカリストを探していたものの見つからず、仕方なくゲストボーカルを迎えた形だったようで、デビューアルバム後には脱退(というかもともとゲストなので予定通り)してしまいます。

現在、レンクヴィストが正式加入

その後、2018年から32年の時を経てレンクヴィストがバンドに加入し、現在もボーカリストとして活躍していますがこの時点ではゲストだったのですね。メタル史に残る名盤でありながらゲストボーカルという珍しいアルバム。なお、次作以降はまた強烈なボーカリストが入るのですがそれはまたその時に。

USでは1984年ごろから少しづつドゥームメタルが盛り上がっていたものの先述したようにスウェーデンのシーンではドゥームメタルは全然主流ではなく、Candlemassは異端扱い。本国ではレコード契約が得られず苦戦した後、フランスのインディーレーベルBlack Dragon Recordsとなんとか契約を獲得、低予算(1800ドル)で本作を制作します。本作はスウェーデン、ストックホルムのサンダーロードスタジオ(Heavy Load所有のスタジオ)でレコーディングされ、プロデューサーはバンド自身とRagne Wahlquist。Rangeはこの当時、Heavy Loadのメンバーでもありますね。

EldingとWahlquist

本作のタイトル「Epicus Doomicus Metallicus」は「Epic Doom Metal」のラテン語。これがそのままサブジャンル名になっています。リリース時はリアルタイムではセールスが振るわず契約を切られてしまいますが、特異な音楽性がだんだんと話題になりバンド活動が継続します。このアルバムの特徴はクラシカルな要素を取り入れたこと。それ以前のドゥームメタルバンド(Black Sabbath, Pentagram, Saint Vitus, Trouble)は、ブルースの影響が強いトラディショナルなドゥームメタルを演奏していましたが、Candlemassは、このスタイルにクラシカルな要素と壮大なスケール感を加え、本作を持ってエピック・ドゥームメタルのパイオニアとなりました。


※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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