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連載:メタル史 1987年③King Diamond / Abigail


背景と位置づけ

『Abigail』は、King DiamondがMercyful Fate解散後に結成したソロバンドとしての2作目であり、初のコンセプトアルバムである。本作では、1845年の夏、Jonathan La'FeyとMiriam Natiasという若いカップルが、Jonathanが相続した古い邸宅に引っ越すという物語が描かれている。彼らは、7人の謎めいた騎士たちから警告を受けるが、それを無視して邸宅に入居し、恐ろしい運命に巻き込まれていく。

物語仕掛けのため、後にストーリーがコミック化もされた

King Diamondのソロ活動は、Mercyful Fate時代と比較して商業的に成功し、特にアルバムセールスとツアー動員の面で顕著な成果を上げた。以下にその概要を示す。


■アルバムセールスの比較

  • Mercyful Fate:初期のアルバム『Melissa』(1983年)や『Don't Break the Oath』(1984年)は、メタルシーンにおいて高い評価を受けたが、商業的な成功は限定的であった。特にアメリカ市場でのセールスは控えめであり、Billboard 200へのチャートインは確認されていない。

  • King Diamond:ソロデビュー作『Fatal Portrait』(1986年)はスウェーデンで33位を記録し、続く『Abigail』(1987年)はアメリカで175,000枚以上を売り上げ、Billboard 200で123位にランクインした。


■ツアー動員とライブ活動

  • Mercyful Fate:1984年のアメリカツアーでは、当初15公演が予定されていたが、予想を上回る需要により19公演が追加され、計34公演が行われた。しかし、宗教団体からの圧力により一部の公演が中止されるなど、活動には制約があった。

  • King Diamond:ソロ活動では、より大規模なツアーが可能となり、特に『Abigail』リリース後のツアーでは、演劇的なステージセットと物語性を活かしたパフォーマンスが好評を博した。また、2004年のインタビューでKing Diamond自身が述べているように、ソロ活動はMercyful Fateよりも収益性が高く、生活の基盤となった。


以上のように、King Diamondのソロ活動は、Mercyful Fate時代と比較して商業的にも成功し、メタル界においても独自の地位を確立した。特にアルバムセールスとツアー動員の面で顕著な成果を上げており、その影響力は現在でも続いている。

当時のKing Diamond

音楽性と特徴

『Abigail』は、クラシック音楽の要素を取り入れた構築的なアプローチが特徴である。楽曲は明確なメロディーライン、緻密なギターリフ、そしてドラマティックな展開を持ち、King Diamondの劇的なボーカルスタイルが物語性を強調している。Andy LaRocqueとMichael Dennerのギターは、複雑でメロディアスなリフを奏で、Mikkey Deeのドラムはテクニカルでダイナミックなプレイを展開している。また、King Diamond自身がプロデューサーを務め、アルバム全体の統一感と物語性を高めている。

当時のバンド

本作の特徴ともされるクラシック音楽の要素について、その具体的な技法や影響、同時代のトレンドとの比較を示す。


■クラシック音楽の要素と具体的な技法

『Abigail』におけるクラシック音楽の要素は、主に以下の点に現れている:

  • ネオクラシカルなギターリフとソロ:Andy LaRocqueとMichael Dennerによるギターは、バロック音楽や古典派音楽の影響を受けた旋律やアルペジオを多用しており、特に「A Mansion in Darkness」や「The 7th Day of July 1777」ではその傾向が顕著である。

  • 複雑な楽曲構成:楽曲は、序奏、展開、再現、コーダといったクラシック音楽のソナタ形式に類似した構造を持ち、物語性を強調している。

  • キーボードによるオーケストレーション:Roberto Falcaoのキーボードは、弦楽器やオルガンのような音色を模倣し、楽曲に荘厳さと深みを加えている。

  • 変拍子とテンポの変化:楽曲内でのテンポや拍子の変化は、クラシック音楽におけるリトモ・ルバートやテンポ・ジュストの概念に通じるものであり、物語の展開に合わせたダイナミクスを生み出している。

これらの要素は、特定の作曲家の影響というよりも、クラシック音楽全体の構造や技法をメタルに応用した結果と考えられる。


■当時のメタルシーンにおける位置づけ

1980年代後半のメタルシーンでは、スラッシュメタルやグラムメタルが主流であり、楽曲は比較的シンプルな構造を持つことが多かった。その中で、『Abigail』のようにクラシック音楽の要素を取り入れた複雑な構成を持つアルバムは珍しく、特異な存在であった。

同時期に活動していたバンドの中で、Yngwie MalmsteenRitchie Blackmoreなどがネオクラシカルなギタープレイを取り入れていたが、King Diamondのようにアルバム全体を通して物語性(コンセプトアルバム)とクラシック音楽の構造を融合させた作品はまだ稀であった。

このようなアプローチは、後のシンフォニックメタルやプログレッシブメタルの発展に影響を与えたと考えられる。

当時のライブ風景

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