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復職は「戻れるか」だけでは足りない|2回休職した僕が人事の記事を読んで考えたこと


復職できたら、もう大丈夫だ。
会社へ戻れたら、休職前と同じように働かなければ。
あなたは、そう思っていませんか。



でも、戻ったあとの働き方が変わらなければ、また同じところで苦しくなることがあります。

僕もそうでした。

うつ病の症状で3か月間休職し、会社へ戻りました。

頼まれた仕事は断らない。
分からないことは、まず自分で調べる。
報告書も説明資料も、できるだけ1人で仕上げる。

体は休めても、仕事の抱え方は休職前とほとんど変わらず、結局僕はもう一度、会社へ行けなくなりました。

そんな僕が先日、東洋経済オンラインに掲載された、人事部長の投稿を読みました。

記事に登場するのは、休職と復職を7回繰り返した57歳の男性社員です。

読み終わったあと、すぐには気持ちを整理できませんでした。

会社側の苦しさも分かる。
休職していた本人の気持ちも、少しは分かる。

どちらか一方を責めるだけでは、答えが出ないように感じたからです。






休職と復職を7回繰り返したAさん


記事に登場するAさんは、20代半ばで初めてうつ病による休職に入りました。

勤務先には最長4年間の休職制度があり、復職後に半年間フルタイムで勤務すると、再び制度を利用できる仕組みだったそうです。

Aさんは、この制度のもとで休職と復職を7回繰り返しました。

57歳になるまでに、30年以上の年月が過ぎていました。

会社は、同じ状態を繰り返すことが本人にとっても職場にとってもよくないと考え、次の復職に条件を設けます。

社外の専門機関が実施する3か月間の復職支援プログラムを修了すること。
途中で通えなくなった場合は復職を断念し、退職すること。



何度か話し合った末、Aさんはその条件に同意しました。

しかし、プログラムへ通い続けることが難しくなり、2か月目の途中で断念します。

その結果、Aさんは会社を退職することになりました。


本人が残した2つの言葉


この記事は、人事担当者の視点から書かれています。

会社の制度。
受け入れる職場の負担。
何度も復職に対応してきた人事の迷い。

それらは詳しく書かれていました。

一方で、Aさん本人が何を考え、どんな日々を過ごしていたのかは、ほとんど分かりません。

だからこそ、本人が口にした2つの言葉が残りました。

復職支援プログラムへ進むとき、Aさんは、

「プログラム、頑張ります」

と答えています。

それでも、通い続けることはできませんでした。

最終面談で退職を告げられたときには、

「本当は、もっとまともに働きたかったんですけどね」

と話し、涙を流したそうです。

僕は、この「まとも」という言葉が引っかかりました。

Aさんにとっての「まとも」が、どんな働き方だったのかは分かりません。

休まずに会社へ通うことだったのか。
周囲と同じように仕事をすることだったのか。
誰かの役に立っていると感じることだったのか。

記事だけを読んで、Aさんの気持ちを決めつけることはできません。

ただ、何とも思わずに30年以上、制度を利用し続けていたとは、僕には思えませんでした。

働きたくなかったんやなくて、働きたかったけど続けられへんかった。


そう見えてしまったのは、僕自身にも似た経験があるからかもしれません。

僕も、会社へ行かなければと思っているのに、体が動かなかったことがあります。

仕事をしたくないわけではない。

それでも、玄関から出られませんでした。

頑張ろうと思っても、できないことがあります。

「頑張ります」と言ったのに続けられなかったことをAさん自身が一番つらく感じていたのかもしれません。

ただ、それも僕の想像にすぎません。

本人の言葉が少ないからこそ、その先を勝手に埋めないようにしたいと思いました。


会社にも、簡単には決められない事情がある


もちろん、会社側にも事情があります。

本人の体調を守りたい。
できる限り雇用も続けたい。


その一方で、本人が休んでいる間も仕事は残ります。

同僚が代わりに引き受け、上司は担当を組み替えなければなりません。

復職に合わせて仕事を調整しても、再び休職すれば、もう一度やり直しです。

職場から、

「また同じことになるのではないか」
「なぜ自分たちばかり負担が増えるのか」

という声が出ることもあるでしょう。

人事は、休職している本人だけを見て判断できません。

同じ職場で働く人や、会社全体のことも考える必要があります。

そら、会社もしんどかったやろな。
7回受け入れて、そのたびに仕事を組み直す。
人事の人だって、ただ制度を回すだけでは済まされへんはずです。

記事を書いた人事担当者も、最後に会社側の対応を振り返っています。

制度の条件を満たしたら休職させる。
復職の条件を満たしたら職場へ戻す。

その繰り返しになり、Aさんのこれからについて、もっと早く向き合う必要があったのではないか。

そんな後悔が書かれていました。

戻すか、辞めてもらうか。
その2つだけになる前に、話せることはなかったんやろか。

僕には、その問いが残りました。


僕も「できない」とは言えなかった


働く側にも、会社からは見えにくい不安があります。

僕は1回目の復職面談で、課長や係長から、今まで通り働けるかを確認されました。

僕は、働けると答えました。

何か伝えておきたいことはあるかと聞かれても、

「特にありません」

と言いました。

本当は、不安だらけでした。

また体調を崩さないか。
以前と同じ仕事を抱えられるのか。
職場の人からどう見られるのか。

それでも、仕事を減らしてほしいとは言えませんでした。

できないことを話せば、復職を認めてもらえないような気がしたからです。

休んだ分を取り返さなければならないという思いもありました。

せっかく会社へ戻れるんや。
もう大丈夫やと思ってもらわなあかん。

当時の僕は、そう考えていました。

何ができないのかを伝えるより、何でもできる自分を見せようとしていたのです。

けれど、会社へ通えることと、休職前と同じように働き続けられることは別でした。

働く本人にも、自分の状態や限界を伝える役割はあると思います。

ただ、復職したい気持ちが強いほど、できないことは口にしにくくなります。

正直に話した方がええ。



それは今なら分かります。

でも、戻れるかどうか不安なときに、自分から「これはできません」と言うのは、ほんまに怖いんです。

会社は、僕が以前と同じように働けるかを確認しました。

僕は、以前と同じように働ける人間だと思ってもらおうとしました。

会社も僕も、「戻れるか」ばかり考えていたんやと思います。
「どうしたら続けられるか」は、ほとんど話していませんでした。


復職前に話しておきたかったこと


今振り返ると、復職前に確認する必要があったのは、出勤できるかどうかだけではありませんでした。

復職直後は、どの仕事を減らすのか。
頼まれても断ってよい仕事は何か。
体調が落ちたときは、誰に伝えるのか。
いつ、誰と働き方を見直すのか。
元の部署や仕事内容が、今の自分に合っているのか。
もし同じ状態になったら、次にどの道を考えるのか。

本人の希望をすべて会社に受け入れてもらうという話ではありません。

会社が対応できる範囲と、本人が働き続けられる範囲を、復職前にすり合わせるためです。

僕の場合は、そこまで具体的な話ができていませんでした。

「会社へ戻れますか」だけやなく、「どうしたら働き続けられますか」と話す。
僕には、その時間が必要やったんです。

休職制度は必要です。

僕も休職できたから、一度仕事から離れられました。

もし休む制度がなければ、さらに無理を続けていたと思います。

ただ、休める制度があることと、戻ったあとも働き続けられることは同じではありません。



休める制度があるから大丈夫、では足りへん。
休んだあと、どんな働き方へ変えるのか。
そこまで考えて、初めて次へ進めるんやと思います。


僕が2回目の復職で変えたこと


2回目の復職では、以前と同じ働き方に戻らないようにしました。

分からないことを人に聞く。
完成するまで1人で抱えていた書類を、途中で同僚に見てもらう。
自分の頭の中にしかない仕事を、マニュアルや説明として職場へ残す。

最初から、うまくできたわけではありません。
仕事を抱えそうになることもありました。
これが復職の正解だという話でもありません。
僕にできたことが、誰にでも同じようにできるとは思っていません。
会社の環境や仕事内容によっては、本人が変えたいと思っても変えられないことがあります。

それでも僕の場合は、以前の自分に戻ろうとするのをやめたことで、仕事との距離が少しずつ変わりました。

僕にとって復職は、以前の自分へ戻ることやありませんでした。
これからも働くために、仕事の持ち方を変えることやったんです。

Aさんが、どんな働き方を望んでいたのかは分かりません。
なぜ休職と復職を繰り返したのかも、記事だけでは分かりません。

それでも、最後に残した言葉を、制度を利用し続けた人の甘えとして片づけたくはありませんでした。

会社側にも事情があります。
働く側にも、簡単には言えない不安があります。

どちらか一方を責めるだけでは、復職後の働き方は変わりません。

戻れたら終わりやない。
そこから、どう働き続けるかを会社と本人が一緒に考える。

それが、休職と復職を繰り返さないために必要なことではないでしょうか。

あなたの職場では、復職した人と、「どうしたら働き続けられるか」まで話せていますか。

参照記事

萬屋たくみ
「うつ休職7回の57歳に『退職』を促した人事の苦悩 “優しすぎる制度”が奪った30年のキャリアと会議室に響く男の涙」
東洋経済オンライン


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