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波の音

波の音がした。
もちろん、海ではない。
コピー機から紙が出てくる音だった。
病院を出たあと、続きを書くつもりで立ち寄った店で、僕は領収書を並べていた。
日付を確認する。
向きをそろえる。
一枚ずつ、ガラスの上に置く。
蓋を閉じる。
ボタンを押す。
機械の中で光が走り、少し遅れて紙が吐き出される。
ざあっ。
また一枚置く。
ざあっ。
書きかけの文章は、少し離れた席に残したままだった。
本当なら今ごろ、次の場面を書いているはずだった。
登場人物を歩かせて、言葉を交わさせて、その先にあるものを探しているはずだった。
けれど、目の前にあるのは領収書だった。
四十枚。
同じように見えて、日付も金額も少しずつ違う。
紙が出てくるたび、机の上に白い束ができていく。
ざあっ。
ざあっ。
何度も聞いているうちに、それが波の音に聞こえた。
寄せては返す波ではない。
返ってこない波だった。
一枚出るたび、こちら側に残っていく。
最後の紙が出たあと、機械は急に静かになった。
四十枚を封筒に入れ、元の席へ戻る。
画面には、書きかけの一文が残っていた。
カーソルだけが点滅していた。
僕は椅子に座り、
その先を、もう一度書きはじめた。




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