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Naya Create キーボードレビュー ... 「完璧すぎた元カレ」との対比



はじめに

エンジニアにとって、キーボードは単なる入力装置ではありません。給与を発生させるための唯一の入り口です。

私が5年間連れ添った ZSA Moonlander というキーボードは、私の期待に完璧に応えてくれました。
どんなキースイッチも受け入れる寛容さ(ホットスワップ)、QMKファームウェアという自由な精神、そして何より、決して不具合を起こさない強靭な肉体。私のわがままなカスタマイズ要求を全て飲み込み、彼は間違いなく私の「こだわりの到達点」でした。

それなのに... 私は Naya Create さんに手を出してしまいました。
あまりにも薄く、美しく、「無線対応、モジュール式」という甘い言葉を囁く新しい相手に、ふらっと心を奪われてしまったのです。

上: Naya Create, 下: ZSA Moonlander

これは、完璧すぎる元カレを裏切り、手のかかる Naya Create と浮気してしまった、とあるエンジニアの後悔と愛の記録です。

環境
MacBook Pro, JIS配列


指先は覚えている。「あ、これは彼に教わった動きだ」

届いたNaya Createに初めて手を置いた瞬間、私は動揺しました。

「知っている感触だ...」

分割キーボードの乗り換えで最も恐ろしいのは、指が新しい配置を拒絶することです。しかし、Nayaの上で私の指は踊りました。
私の指には「Moonlanderと過ごした時間」が深く刻み込まれていたからです。

直列的なキーの並び(Column-Staggered) に加え、 親指周りの3キー までの距離感。

列が直線的な、Column-Staggeredキーボード


打てば打つほど、胸が締め付けられます。
元カレが私に教えてくれた指遣いがあまりに偉大で、新しい相手とも上手くやれてしまったのです。

「この親指の運び方...Moonlanderが好きだったやつだ」
新しい恋人の身体に触れながら、元カレの面影を重ねてしまう。そんな背徳感すら覚えるほど、物理的な移行コストはゼロでした。


元カレは、こんなことで私を困らせなかった

しかし、そんな感傷に浸れたのは最初だけです。
Naya Createとの生活は、まるで情緒不安定で束縛の激しい恋人の顔色をうかがう毎日のようなものです。

元カレ(Moonlander)は、こんなことで私を泣かせたりしなかったのに。

1. 「俺以外のスイッチを見るな」という束縛

Naya Createのスイッチは、ピン配列が独自規格のOEM品です。つまり、市販品との互換性が完全にゼロです。




Moonlanderは「君の好きなスイッチを使いなよ」と、市販のあらゆるCherry MX互換スイッチを受け入れてくれました。
しかしNayaは違います。「俺が用意したもの以外は使うな」といった態度です。

2. 気になる仕様一覧

Naya Createは、他にも私を困らせる問題が山ほどあります。

☝️ トラックボール

  • センサーの追従性が悪い

    • SANWAの赤玉や紫玉に交換したらよくなったと言う報告が少数見られる。

    • デフォルトの「グレー色の玉」とセンサーの相性が悪いと公式が認めている。

    • Naya公式で赤玉をリリースすると、モデレーターが案内している。

  • 回転(Twist)スクロールの誤爆

    • カーソル移動と回転の境界が曖昧で、カーソル操作中に意図せず回転が発火しカーソル移動が中断される。

    • 設定で回転スクロールをOFFにせよとのアドバイスが多い。

☝️ タッチパッド

  • 複数指操作が不安定

    • タップ&ドラッグ(2本指)などでの判定が甘く不安定。

    • 物理キーに「左クリック」を割り当てると快適との指摘あり(Fホールドや親指に左クリックを割り当てるなど)

(Macユーザー向けに、そもそもの話)
macOSの場合、絶対神である「Apple純正パッド」以外のサードパーティ製タッチパッドは、全て等しく「低性能」にならざるを得ません。
純正パッドは座標をOSと共有し続けるのに対して、「低性能」な彼らはマウスの動作をシミュレートすることしかできないため、複数指ジェスチャーも離散的な1回ずつの入力として処理されます。
斜めスクロールもできないし、ズーム操作も滑らかな拡大ではなく Ctrl++ キーを連打しているような感覚です。
この前提でハードルを下げて見れば、Nayaは複数指ジェスチャー対応で移動精度も良く、十分素晴らしい出来だと言えます。

左クリックや特殊動作はキー操作に割り当てることでドラッグアンドドロップの安定度が増すなど、純正パッドの操作感を期待せずにユーザー側が歩み寄ることで快適度がグッと増します。

☝️ キースイッチ

  • スイッチの打鍵感が悪い(赤軸が重いなど)

    • 赤軸スイッチを重いと感じる人が多い。

    • スプリング交換 & ルブ(潤滑)が定番となっている。

    • しかし、スプリング交換には少し特殊なオープナーが必要。(一般的なオープナーよりも先が細めな形状が求められる。入手難易度高め)

  • 市販スイッチとの互換性なし

    • OEM製品。市販の同型式製品(Kailh PG1232 Mini-Choc)とも互換性無し。

    • 通常ロープロファイルともサイズが違うのでもちろん互換性無し。

  • キーキャップの間隔

    • 間隔がまばら(1uと1.25uの間みたいなサイズが多数)

    • 市販キーキャップへの着せ替えはあまり期待しないほうがいい。

☝️ ファームウェア / ソフトウェア

  • 更新失敗 / 認識しない

    • シンプルに更新に失敗するとの報告が常に多数あり。

    • 以下を徹底することで成功率が上がる

      • ハブを経由せずPC本体と直繋ぎする

      • Naya純正品のY字ケーブルは絶対に使わない

      • 片側ずつ更新する(まず左、次に右)

      • モジュールはハードの更新後、左のみを使って一つずつ更新する

  • OS・言語対応の遅れ

    • Linux 版が未リリース。

    • ANSI配列以外のUI未対応(多言語入力難)。

      • 幸いなことにJISはなぜかネイティブ対応されている。

    • 外部ツール(Karabinerなど)で工夫して使っている事例あり。


それでも、私がNayaの手を離せない理由

ここまで読んで、あなたはきっと呆れていることでしょう。「そんな酷い男、さっさと捨てて元カレとヨリを戻しなよ」と。
それでも、私はまだNaya Createさんに期待してしまうのです。
完成され尽くした元カレにはなかった、時折見せる 「世界を変えてしまうかもしれないポテンシャル」 に、どうしようもなく魅せられてしまうからです。

1. 「革命前夜」の予感

分割キーボード界の歴史を振り返ると、例えば、Bluetooth分割キーボードに挑戦した Dygma Defy はリリース当初は接続不安定など数多くの不具合を抱え、多くのユーザーを悩ませていました。しかし、ファームウェアがv2.0へとメジャーアップデートしたあたりから、不安定だった無線接続は盤石なものとなり、評価を覆しました。

Nayaが挑んでいるのは、 「極薄・完全ワイヤレス・モジュール式」 という、さらに難易度の高い領域です。 このコンセプトが実用レベルで安定稼働すれば、入力デバイスのスタンダードを変える「革命」になるでしょう。

世界が変わるその朝、誰よりも早くその感触を指先で味わっていたい。その瞬間を最前列で目撃するための入場料と考えれば、安いものだと感じます。

2. コミュニティと開発体制の健全さ

Discordコミュニティの様子も、継続利用を決めた要因の一つです。
ユーザーからは「こうしたらもっと快適になった」などのtipsシェアや、バグ報告が継続されています。
世界中からバグ報告が絶えませんが、開発チームやモデレーターは放置することなく、個別の事象に対して真摯にレスポンスを続けています。

苦戦しているヘルプスレッドにて、モデレーター?運営?の方のレスポンス

「売り逃げ」ではなく、プロダクトを完成させようとする強い意志が感じられるため、将来的な改善に期待が持てます。

3. 問題の切り分け:ハードウェアはある程度「完成」している

不具合報告の傾向を見ると、ソフトウェアやファームウェア起因が多く ハードウェアそのものの欠陥による報告は比較的少なく感じます。発生しても交換対応が行われています。

これは極めて重要なポイントです。 手元にあるハードウェア自体はそこそこ完成度が高く、後から書き換え可能な中身が追いついていないだけだからです。 ハードウェアや全体の設計思想が優れている以上、ソフトウェアの成熟を待つ合理的な理由になります。

4. 設計思想の信頼性

Naya Createのファームウェアは、 ZMK をベースに構築されています。通常、ZMKといえば設定ファイル(config)を直接書き換える自由な世界ですが、NayaはそれをSQLiteに格納しています。

SQLiteデータベースを直接編集し、GUI未実装の機能をフラッシュしてみたところ、複雑なキーマッピングも正常に動作することを確認しました。
技術的な制約で「できない」わけではなく GUIがまだ追いついていないだけ なのです。この裏付けは、待つための大きな安心材料となりました。

SQLiteでselectしてみた感じの参考
-- ~/Library/Application Support/NayaFlow/user-data.db
SELECT
    profiles.name,
    layers.name,
    key_bindings.action_code,
    key_bindings.action_type,
    profiles.state
FROM layers
    join profiles
        on layers.profile_id = profiles.id
    join keys
        on keys.layer_id = layers.id
    join key_bindings
        on key_bindings.key_id = keys.id

5. 不意に見せる「JIS配列」への誠実さ

海外育ちの顔をした彼ですが、驚くべきことに 日本語配列(JIS)をネイティブにサポートしています
Naya Flow(設定ツール)は、JIS配列を「そのまま」認識します。US配列として認識させてKarabinerで騙し騙し使う...といった小細工は不要です。

グローバルなソフトウェアだが、設定画面には英語と日本語しかない

「君は不器用だけど、私の母国語だけはちゃんと理解しようとしてくれているんだね」
不器用な中で時折見せるこの誠実さに、つい私は心を動かされてしまうのです。


まとめ:これは「愛の試練」です

Naya Create は、現時点では 「美しい顔をした、極めて手のかかるヒモ」 です。 彼は、キラキラした夢を見せてくれる一方で、私にケアを求め困らせる側面を持っています。

  • 彼が気まぐれを起こしても、広い心で許せるか。

  • 彼がいつか立派な男になるその日を楽しみに思えるか。

が、鍵になってくると思います。
色々と不満をこぼしましたが、個人的には以下条件でそれなりに快適に使用できています。

  • Bluetooth利用(1日2~3時間ほどの使用で、業務利用はしていない)

  • スプリング交換無し&ルブ無しのデフォルト赤軸

  • 左: トラックボール(玉無し)

    • モジュールはほぼ利用していないが、モジュール側にバッテリーが入っているのでBluetooth利用するために装着

  • 右: タッチパッド

    • 用途はカーソル移動のみ

    • クリックやMission Control、ディスプレイ移動などはキー側に割り当てている

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