この物語はフィクションです。


てんちょーこのままじゃお店潰れちゃいますよーって言ってたら店が潰れることになった。従業員1人分の給料も稼げていないことはわかっていた。味気ない店だったのでなんの愛着もない。
暇なので今日もツイッターを開く。好きなvtuberグループのショート動画のお知らせが来ている。彼らのホームページには、vtuberじゃなかったら絶対公表されないような経歴と派手な容姿が載っている。でも彼らが生きているのはバーチャル世界のバーチャル日本(?)のことなので、こちらの私たちの基準とは関係がない。
関係がないので物語として消費している。きっと彼らも同じようにnotバーチャル世界の私たちを物語として見ている。どうか、つまらなくなければいいが。


店内は静かだが、大きな道路沿いの店だから騒がしい。今日はやけにトラックの騒音が耳に響いて気持ちが悪い。鼓膜の震えと、実際の振動が合わさってぐにゃぐにゃとする。失敗したラテアートを飲み干す。う、溢すとこだった。あぶない。この歳になって飲むのが下手なの本当困る。トラックと救急車とパトカーの三重奏に、夕方になると暴走族の音が重なりかなりカルテットになる。当たり障りのない店内BGMのジャズピアノの音の方が、よほど異物で邪魔に感じる。

明日は燃えるゴミを出す日だった。まだ持っていってもらえるのだろうか。店の前の道路、最近ポイ捨てが多くてちょっと嫌だ。サイレンの音が近づいてくる。ワンピースの女性が捕まっていった。ああうっかりしてたんだね。しっかりしていないから。運が悪かった。1週間くらい隠れて閉じこもっていれば良かったのに。


今日は個人もショート動画か。じゃあ配信おやすみなのか。今日は配信見たい気分だったから残念。てんあくの妄想でもしようかな。ちょっと前から地上は天国みたいになったから、妄想をしていたら本当に紛れて飛んできてくれるような気がする。窓の外、帰り道の小学生が転けて膝に赤い丸を作る。慌ててカバンのポーチの中から出した絆創膏を貼っている。先に水で洗わないとばい菌入るよ。でもお母さんにでも教わったんだろう。えらい。小学生の白い服を洗濯するのは毎日大変だろうな。


好きなvtuberは踊る。赤い布をひらひらさせて鳥みたいに回る。いいなぁ。本当に飛べそうだ。彼は真っ赤で目立ちそうだけど、それはこちらのnotバーチャル世界の話で、向こうでは、意外とそうでもないのだろう。きっと目立ってはいけない理由もない。

パンッ。
道路を挟んで向かいの広場で男が叫んだ。潰れたコンビニの廃材の上で何か。演説なのか喚いているのか。大型トラックが通り過ぎていく。騒音で何を言っているかはわからない。彼の腹のあたりからじわじわと赤が広がっていく。白いシャツに丸く丸くなって夕日みたいに広がっていく。ああ。サイレンがまた近づいてくる。


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