歌舞伎から受け取ったもの|エッセイ
ありがたいご縁があり、この3年ほど毎秋、歌舞伎を鑑賞している。
会場は、豊岡市出石町にある芝居小屋・永楽館。
今年で15年目を迎えるこの大イベントには、初回から片岡愛之助さんを中心に、第一線で活躍する役者が名を連ねてきた。
ジャンルは違えど、プロの表現を至近距離で味わえる機会は貴重だ。
今回の座席は前から2列目。
わずか300人規模の会場だからこそ、役者の息づかいや涙の粒まで見える臨場感に圧倒された。
俺は歌舞伎に詳しいわけではない。
音声ガイドを片耳に装着し、衣装の意味や足運びの工夫、重心の置き方まで、
できるだけ多くを吸収して帰ろうと必死だった。
結果、公演が終わったあとは頭がふらつくほどの情報量。
体の奥に熱を宿したままでは日常に戻れず、
実家で1時間半ほどピアノを弾き語りして気持ちを整理した。
最近、別ジャンルで真剣に表現と向き合う人と熱を込めて語り合える機械があった。
俺は歌を、相手はクラシックバレエを。
分野は違っても、情熱の軸が同じ場所にあるのを感じて、胸が温かくなった。
表現を続けることは、孤独と対峙する時間の連続でもある。
けれど、こうして他者と共感が生まれる瞬間があるからこそ、その孤独も積み重ねも意味を持つ。
真剣にやろう。
ただそれだけが、俺にできる唯一の答えだ。
きっと今回の歌舞伎から受け取ったものも、その思いに尽きる。
余談をひとつ
今年は映画『国宝』の影響もあり、歌舞伎のチケットは早い段階で完売していた。
残念ながら俺はまだこの話題作を観られていないのだが、
幕間の小話でも愛之助さんがその映画について触れていた。
そして今回の会場である永楽館も、
実はそのロケ地のひとつ。
今年は特に注目を集めた舞台でもあった。
思い返せば去年、永楽館歌舞伎を観に行ったときに撮った会場のスナップを、
noteのフォトギャラリーにいくつか載せていた。
しばらくして、その写真の使用通知が次々と届き、
思いがけず「国宝」への熱気をnote越しに感じ取ったのは、とても印象深い出来事だった。
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