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酸欠のような感覚で映画館を出た|エッセイ

映画館から帰ってきた今、
頭が少しぼんやりと白く、
熱を帯びているのを感じている。

言葉にするなら、
「酸欠状態」というのがいちばん近い。

そのうち観に行こうと思っていた映画『国宝』。
豊岡劇場にも今年の2月からやってきていたのだが、なかなかタイミングが合わず、こんなに遅くなってしまった。

満を持して観に行った今日。
事前にいろいろな感想を聞いていたはずなのに、
それらはすべて、どこかへ飛んでしまった。

今胸に残っているのは、ただ一つ。

主演の感情演技に、
殴りつぶされたような感覚だ。

頭が回らない。
呼吸が少し乱れている。

もしかすると、
今の自分はあまり良い状態ではないのかもしれない。

ただ、それでもはっきり言えるのは、
あの映画にはそれだけのパワーがあったということだ。

だから、映画のストーリーについての感想はここでは書かないことにする。

代わりに、自分が受け取ったものについてだけ残しておきたい。

大きなスクリーンで、
役者の呼吸や震え、目の光を拾い上げる。

その細かな変化を身体で受け止め、
噛み砕きながら考える。

これを、自分の表現にどう活かせるだろうか。

そんな問いを持つ時間を得られたこと。
それ自体が、
ある意味で大きな財産だったように思う。

映画を観た人の中には、
ストーリーを称賛する人もいれば、
役者の魅力を語る人もいるだろう。

けれど正直なところ、
そこにはあまり強く心は動かなかった。

ただ、自分なりに受け取ったものがあった。
そしてそれに、自律神経を揺さぶられるほどの衝撃を受けている。

それだけで、
この映画が愛されている理由はよくわかる。

劇場には、出石永楽館でのロケの際に使われたのぼりが立っていた。
上映を終えたあと、その旗を見上げる。

役の名前が入ったのぼりを見ながら、ふと、
羨ましいと思った。

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志乃嘉乃(しのよしの)  物好きの投げ銭で甘いものを食べたい。

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