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『ひがいけポンド制作日誌』vol.2~"ZINE的空間"のグルーヴ〜

前回の制作日誌で、僕は場の成熟を卵の孵化になぞらえ、親鳥の目線でひがいけポンドという場への期待を表現しました。

孵化したての雛鳥たちは、巣の中で親鳥が餌を運んでくるのを待ちます。親鳥が巣に戻る気配を察知すると、鳴き声を発しながら口をパクパクさせ、親鳥のくちばしから餌を受け取る。そんな日々を過ごしながら少しずつ羽毛が毛羽たち始め、やがて親兄弟と共に大空へ羽ばたいていく…。

昨年末時点では、そういった緩慢なプロセスを経て、じっくりと場が育っていくイメージを持っていました。昨年のうちにすでに多くの人たちが関わってくれていたものの、まだまだ未整備な部分も多く、成長にはもっと時間がかかるだろうと踏んでいたのです。しかし、今年に入ってまもなく、その予想は良い意味で裏切られることになります。孵化した途端に四方八方を飛び回るやんちゃな姿に、驚きと喜びを感じた半年でした。

本稿では、そんなひがいけポンドの賑やかな第二フェーズを時系列で振り返りながら、この半年で得た学びや、新たに出現した課題・兆しについてご紹介したいと思います。大きく以下の3つのパートで構成されています。


①ひがいけポンド制作日誌
②データで見るひがいけポンド
③場の作り手としての課題や仮説・取り組み

①の制作日誌を読めば、この半年間のポンドの変遷を大掴みすることができます。②はボリュームは少なめですが、ひがいけポンドという場の特性を理解するのに役立つかもしれません。③では、運営者としての自分の葛藤や仮説、今後の展望をざっくばらんに綴っています。少し小難しい内容も含まれますが、本稿の中で一番赤裸々に語っているパートなので、ポンドのバックヤードを覗き見するつもりでご覧いただければ幸いです。

本編に入る前に二つだけアナウンスをさせてください。

まずひとつは、ここに書いてある内容はひがいけポンドの総意ではなく、あくまで一運営メンバーとしての見解であるということ。

もうひとつは、場の本当の魅力は、こういった記事の形で掬い取れない日常の断片にあるということです。特に制作日誌を読むと、多様な活動に溢れた華々しい場所に感じられると思います。でも、本当に胸が熱くなるような瞬間は、いつも日常の凪の時間に姿を現します。何気ない会話や、思いがけない出会い。そういった断片的なものの積み重ねこそが、いまのひがいけポンドを支えていることを、最初にお伝えしておきます。


ひがいけポンド制作日誌

<1月>

週5日オープン開始。このころから少しずつ出店の問い合わせが増え始めてきました。とはいえまだまだカレンダーには空きが目立ちます。

カンパイシマイ」のようなキャッチーな人たちが早くから利用してくれたことが、その後のポンドのカラーに大きな影響を与えてくれました

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1月中旬、近隣の和菓子屋さんにご協力いただき、お餅を食べるイベントを実施。近隣の親子連れで行列ができるほどの賑わいでした。やっぱりお餅のパワーってすごい。

12月からスタートさせた「ひがいけ図書室読書会」も、1月はさまざまな方が参加してくれました。読書会は今でもひがいけポンドの定番イベントになっています。

出店がない日は、「おやつ」という多世代・多用途のドロップイン利用を行いつつ、運営メンバーが自らコンテンツを企画してお店に立つ日が続きます。僕の場合は、11月のグランドオープンからスタートさせた日本茶カフェ「チャーチル」を出店し、お茶を通して近隣の方々とお話する機会を設けていました。

このタイミングで僕らは、「おやつ」という仕組みの難しさに直面します。もともと「おやつ」は、世代や用途を限定しないことで、より多くの接点を生み出すための仕組みでした。1時間500円、3時間以上は一律1500円で、フリードリンク+おやつ1皿を楽しめるという内容で、当初からワーカーを中心にそれなりに利用者はいました。「おやつ」という名称の意図は、以下のInstagramのキャプションをご覧ください。

平たく言うと、老若男女が気軽に集える居場所のメタファーとして「おやつ」というワードを使っていたわけですが、ややハイコンテクストであるがゆえに、なかなか一発で人に伝わらない難しさがありました。ターゲットや用途を絞っていないために、システムの明快さのわりに、コミュニケーション上の方向性が定まらなかったのです。加えて、前面に出している「まちのインディーズ・レーベル」というコンセプトとも飛躍があり、それがいっそう「おやつ」という仕組みを扱いにくいものにしていました。しかも、「おやつ」は運営メンバーが店に立って提供することが前提になっており、いろんな意味で高カロリーな仕組みだったのです。

<2月>

その流れの中で、2月に入ってから三つのリニューアルに踏み切ります。

一つは、先述の「おやつ」、および「おみせ」を廃止し、すべて「ポップアップ」という仕組みに統一しました。関連して、ひがいけポンドの説明も、シェアスペースからポップアップストアへと変更。

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説明がシンプルになった分、人びとの理解度も増し、バシッとメッセージを受け取ってくれる方が増えた印象がありました。のちの盛況ぶりを考えると、このリニューアルは成功だったと言えます。

ポップアップへの統一と連動して、HPもリニューアル。HPトップにポンドのレーベル(出店者)が一覧できるようにし、さまざまな活動が行われている場所であることが一見して伝わるデザインに変更しました。


三つ目のリニューアルが、月額メンバーシップ制度の導入です。

持て余していた2Fワークスペースを活用しつつ、より密なポンドのコミュニティを生み出すために作った仕組みです。有り難いことに2月の開始直後から複数の加入者がおり、現在でも日常的にワークスペースを利用してくれる方や、各種イベントに参加してくれる方などがいらっしゃいます。メンバー特典として月1回無料でポップアップを出店できる権限を付与しており、メンバー特典を利用した出店もこれまで何度か行われました。

そんなリニューアルを行う傍ら、僕のチャーチルのように運営メンバー自身もそれぞれ自分のお店を持ち、週1くらいで店に立つようになっていました。

2月に初出店してくれた真鍮リングのワークショップ+飲食販売の「雨と槌音+Nent+カワダキッチン」さんは、今ではひがいけポンドのトップ出店者です。店主の河田さんは近隣在住の方で、他のポンドのお店や企画にも足繁く通ってくれています。地域の関係が耕されていく実感を得られるようになったのは、このころからでした。

空間の使い方も一気に多様になっていきます。2月はメンバーシップのメンバーが相次いで展示会で利用してくれました。

その後のポンドに大きな影響を与えるゴミ拾い&コーヒーブレイクの活動「Cleanup&Coffee Club」(通称CCC)が発足したのもこの頃です。詳細は後述しますが、ポンドに欠けていたものをCCCが上手く補完してくれました。


<3月>

さあ、ここからです。スーパースターを取ったマリオのごとく、3月〜5月にかけて多様な活動が花開いていきます。

近隣にお住まいの香蓮さんが出店する手相占いカフェ「香蓮さんの部屋」は、ポンドに人気店の一つです。

また、インドの衣服と料理を提供する「イロドリサウザンズ」も、それまでのポンドにないインターナショナルな空気を吹き込んでくれました。

初出店者向け合同出店市「ひがいけインディーマーケット」がスタートしたのも3月でした。気持ち的にもお財布的にも単独出店に不安を抱えている方が多いことがわかり、その不安やリスクを解消するために生まれた企画が「ひがいけインディーマーケット」です。このマーケットを経て単独出店に乗り出す方がいたりと、その後に繋がる関係も生まれています。


また、先述のCCCとは別に、ゲーム型ゴミ拾いイベント「MACHI-GOMI QUEST」を開催。近隣の子どもたちが楽しみながらゴミを拾っている姿が印象的でした。

<4月>

4月になると、土日がすべて出店者で埋まるようになっていきます。ポップアップ利用やイベント利用の問い合わせが増え、ポップアップスペースとしては及第点といえる盛況ぶりを見せます。

複数回出店を重ねた出店者も現れ、企画ごとのファンが出来上がってきます。先述の「雨と槌音+Nent+カワダキッチン」や、高校生たちがプロデュースするカフェ「テラコヤカフェ」などがその好例です。

Instagramを経由した問い合わせも増え、近隣以外の方も利用してくれる流れが生まれました。

自主企画や共同企画も複数進行していきます。メンバーシップのメンバーであり、読書会の共同主催者でもある生き方編集者・山中康司さんの「ほめるBar」は予想を上回る人気ぶりでした。

<5月>

土日は先々まで問い合わせが来るものの、平日はまだまだ出店希望が少なかったひがいけポンド。運営メンバーの出店で平日の空いた日を埋めるようにしていましたが、出店者やイベントが増加するに伴って調整タスクが増え、自分たちの出店にマンパワーを割くのが困難になっていました。平日をどうすべきか思案していた矢先、野菜と果物を販売する「よろずや」から毎週水曜日に出店したいと問い合わせをもらいました。

以前は小石川の別のスペースを間借りしていたというよろずや。その時のお客さんから、偶然ひがいけポンドのことを聞いて興味を持ってくれたそうです。出店者の増加が、回り回ってひがいけポンドの関係人口の増加に繋がっていることを実感した出来事でした。

その他、5月はマルシェイベントのような合同出店の企画が多数立ち上がり、一気に賑やかになってきます。三つのお店が寄り集まったポップアップイベント「サンカク△」や、クラフト作家たちの合同出店市「手しごと雑貨市」などが好例です。


また、以前から別の企画にたびたび足を運んでくれていた近所のフラダンス教室の方が、ダイナミックなハワイアンイベントを企画してくれました。空間の使い方にも工夫が見られ、出店のモデルケースがまた一つ増えた印象があります。ここまでに紹介した3組は、1〜2月くらいに最初の相談を受け、じっくり時間をかけて企画を練ってくださった方々です。それぞれ試行錯誤の痕跡のようなものが感じられ、なんだか胸が熱くなりました。

ひがいけポンドは住宅街に位置しており、客足も近隣のイケ・サンパークの入りに左右されるため、夜の営業に対しては消極的でした。ですが、先述の「ほめるBar」を実施する中で夜の集いの重要性を認識し、また実際に「夜なら来られるのに・・・」という声も聞こえてきたので、思い切って自主企画でスナックを始めてみました。

ほとんどお酒を入れたことのない僕がおっかなびっくりお酒を入れつつ、来てくれた方との会話を楽しむというシンプルな企画です。5月中に2回実施しましたが、昼間の出店よりも濃密な会話が生まれる空間になり、たしかな手応えを感じています。

5月末には、新たに「ひがいけ映画祭部」というコミュニティもスタートさせました。「まち」と「映画」に愛着のある人びとが集い、東池袋だからこそできる映画上映イベントのあり方を探求するサークルです。

ポンドの出店者や、ゴミ拾い活動で知り合った大学生、11月に登壇した「としま会議」で知り合った方などなど、良い混ざり具合のコミュニティが形成されており、今後の広がりに期待が持てそうです。


データで見るひがいけポンド


ここまで駆け足で2022年前半のひがいけポンドを振り返ってきました。このパートでは、ポップアップ出店者とInstagramのフォロワー属性から、ひがいけポンドの関係人口の広がりを紐解いていきます。結論を先取りしてしまうと、ポンドは豊島区エリアの若年層の耳目を集めるスポットになっているようです。

※なお、データは5月末時点のものです。最新状況とは異なりますのでその点にご留意ください

【ポップアップ出店者居住地】

ポップアップ利用者居住地

●ポンドのある東池袋エリア在住の方の出店が約2割
●その他の豊島区エリアと合わせると、全体のおよそ4割が豊島区在住者
※出店回数ベースなので、利用者数では重複あり

隣接する新宿区・板橋区・文京区の利用者を足し上げると約6割になります。近隣在住者からの支持を得つつ、それ以外の地域からの流入もちゃんとある。このバランスがポンドの多様性に一役買っている気がします。

【利用スペース】

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ポンドの設備上の一番の強みは、使いやすいキッチンです。そういう意味で7割強が飲食提供を伴う利用であることは、まさに狙い通りという感じがあります。ただ、ガレージもキッチンに負けず劣らずキャッチーで使いやすい空間なので、もう少し活用の幅を広げたいという気持ちも一方であります。物販やワークショップが最もオーソドックスな使い方で、先述のフラダンスのような特殊な利用はまだ少数派です。個人的には、演劇やライブなどのパフォーマンスで使えたら良いなぁと思っています。

【申し込み経路】

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グラフが見にくいので少し情報を整理すると、

37%がInstagram経由、22%が知り合い経由
通りがかりで知って申し込んだ方が全体の17%

となっています。ポップアップ出店者以外の方からも、Instagramの投稿をよく見ているという声が届いており、こまめな発信が功を奏している感じがあります。

【Instagramフォロワー 年齢と性別】

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Instagramのユーザー自体が女性が多いというのもありますが、女性6割・男性4割というのは日々の実感値とも合致しています。ポップアップ出店者の性別割合も女性65%・男性35%くらいで、Instagramの性別割合とのリンクが感じられます。

【Instagramフォロワー居住エリア】

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約3割が豊島区在住のフォロワーです。実数は異なるものの、ポップアップ出店者の居住エリアのうち、豊島区が全体の4割だったことを考えると、ざっくりと関係者の3〜4割くらいが豊島区の方と捉えて良いかもしれません。


無為と作為の狭間で

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ここから最終パートに入ります。その前に、大前提が一つ。

これから語るのは、本質的にはすべて「野暮なこと」です。

運営者として、利用者がこんなアクションをしてくれたら良いなという理想はありますし、そのために日々さまざまな取り組みに挑戦しています。

けれど、人間が生き物である以上、人間同士の間で起こる化学反応は、予想も統制もできない一つの奇跡です。その奇跡の前では、どんなに凝った仕組みも仕掛けも、ちっぽけなものに過ぎません。

あるべき姿を描くことは重要なことですが、そのビジョンを実現するための手段として人を捉えてしまった時点で、そこにはもう大切な何かが欠けてしまっている。運営者としてのエゴを脇に置かない限り、場に魂を根付かせることはできない。

手を加えすぎず、あるがままを見つめ、自然の流れに身を委ねること。場づくりを始めてみて、無為であることがどれほど大切で困難なことなのか、いま身を持って学んでいます。

ただ、無為であることは、ほったらかしであることと同義ではありません。
適度な枝の剪定や肥料の投下が植物の生命力を活性化させるように、良いさじ加減の手入れも同様に大切なのです。

ありのままを根気強く眺める無為の姿勢と、必要に応じて手を加えていく作為の姿勢。この両者の狭間を漂いながら、答えのない問いに日々向き合っています。

これから語る内容は、運営者の「作為」をめぐる話です。


「たむろの口実」をどうつくるか

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ここまでご紹介したとおり、ひがいけポンドはポップアップスペースとしては及第点といえる盛況を見せています。しかし、出店の多様さに反して、出店者同士やその周辺にいる関係者同士の交流がそこまで進んでいない現状があります。

そもそも出店する人たちのモチベーションはさまざまです。単純に施設の立地やコスパに魅力を感じて出店する人もいれば、ポンドのコンセプトに共感して出店してくれる人もいる。実感としては、時間とともに後者のモチベーションでポンドを利用する人が増えている印象があります。

ただ、モチベーションはさておき、お金を払って場所を借りているという図式は同じです。各々が金銭を介した消費的な関係のもとで、別個にポンドと繋がっている。

場所貸しで稼ぐことだけを志向しているなら、それで充分かもしれません。ですが、ポンドが目指しているのは、人びとのインディーズ活動を通して地域の生態系を生み出すことです。そこで重要なのは、いかに関係を多層化し、関係者同士をミックスしていくかということ。

相性の良さそうな出店者同士を運営の僕らが繋ぐことはできますし、出店者同士のチャットグループなどをつくって交流を促すこともできます。
(本稿執筆時点で、出店者コミュニティについてはまさに準備中)

けれど、そこに作為が入りすぎるのも、なんだか違う気がする。

例えるならそれは、異なる魚同士を一つの水槽に無理やり放り込むようなものです。飼い主からすれば多様性を望んでの行為であっても、魚からすればおせっかい極まりない行為ですし、思わぬ拒絶反応が生まれる可能性もあります。

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僕ら運営者がやるべきなのは、自然と互いが共生できるビオトープをつくることです。心地よい関係性の土壌を作ることができれば、自然と新たなアクションは芽吹くもの。逆に、関係づくりをすっ飛ばしてアクションだけを煽っても、一過性のもので終わってしまう可能性が高い。

関係性の土壌を耕すためには、多くの人がその場に居合わせる時間が大切です。けれどいまのポップアップの仕組みは、良くも悪くも消費的関係の上に成り立っており、コミュニティの「溜め」が生まれにくい。

ここで言う「溜め」は、「たむろ」と言い換えても良いかもしれません。たむろというと、イカツイ若者たちが夜の公園で騒いているような、ちょっとネガティブなイメージを持つ人もいると思います。しかし実際には、生活の至るところにたむろの風景は存在しています。コンビニのイートインスペースでおしゃべりする高校生たち、公園のベンチで井戸端会議をするママ友集団、行きつけのスナックに足繁く通うシルバー世代…。彼らはほとんどの場合、明確な目的を持って集まっているわけではありません。なんとなく集まって、その場その場の話題に花を咲かせている。ありふれた光景ですが、こういう無為な時間を互いに共有することで、人との絆は育まれるものです。

明確な目的が無くても集える「たむろの口実」をどうデザインするか。

2022年上半期のメインテーマはまさにこれでした。この課題を解消するための取り組みが、すでにいくつか芽吹き始めています。

「ミドルウェア」としてのゴミ拾い

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2月から始まったゴミ拾いとコーヒーブレイクのイベント「Cleanup & Coffee Club」(以下CCC)は、ひがいけポンドの課題感を解消する上で重要な役割を果たしています。

CCCの取り組みはごくシンプルです。月1回、日曜日の朝に集合し、チームごとにゴミを収集。ゴミ拾いが終わったらコーヒーを飲んで自由に談笑します。

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たったそれだけの集いにも関わらず、各回平均10人程度、多いときには20人弱が参加する活動に成長しました。豊島区のWEBメディアで紹介されるなど、各方面からいま注目を浴びています。

たしかにゴミ拾いは、誰でも気軽に参加できるハードルの低い活動です。清掃活動を通して、地域貢献や社会奉仕の欲求も満たすことができる。ですが、それだけの理由で10数人の若者が日曜日の朝にわざわざ集まるでしょうか?

CCCの活況の背景には、実は「手段」と「目的」の転倒が潜んでいます。

CCCは「縁づくりとしてのゴミ拾い」をコンセプトに掲げています。つまり、ゴミ拾いは目的ではなく、地域で縁をつくるための手段なのです。

多くのゴミ拾い団体は清掃活動自体が目的となり、その副産物として結果的にコミュニティが生まれる構図になっています。動員に際しても、いかにゴミ拾いがソーシャルグッドな活動かを伝えることに躍起になっている団体がほとんどです。

しかし結局のところ、「自分のまちを綺麗にしたい」という利他的欲求は、「自分のまちで友だちをつくりたい」という利己的欲求には勝てません。CCCは、自分たちの中にも内在するこのインサイトを見逃しませんでした。

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“仲間感”をキーワードに、クリエイティブも普通のゴミ拾い団体とは一線を画すものを目指しました。ストリートカルチャーを彷彿とさせるイラスト。あえて簡体字を混ぜ込むことで中国や台湾のカルチャーのエッセンスも取り込み、ステートメントもあえてエモーショナルな描写に振り切って書くことで、実現したいシーンを表現しました。

コンセプトとクリエイティブがバシッと噛み合ったことで、結果的に多くの人びとが参加する現在の状況が生まれています。ポンドの関係者についても、ポップアップ出店者同士が繋がったり、CCCの参加者が別のポンドの企画に参加してくれるなど、CCC立ち上げ以降、コミュニティのミックスが確実に進みました。

今後、CCCの「C」を入れ替えることで、ゴミ拾い以外の形で地域の紐帯づくりに取り組んでいくアイディアも進行しています。たとえば「Cleanup & Curry Club」と称して、カレーをみんなででつくるなど、遊びゴコロのある企画がさまざま生まれそうです。
*主宰の高田将吾さんの記事を参考に貼付いたします


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高田さんとの会話の中で、ひがいけポンドとCCCの関係性について、興味深い示唆を受けました。

現在のポンドとCCCの活動をスマートフォンに例えてみると、ポンドはOSで、各ポップアップはアプリである。CCCは一見するとアプリに見えるけれど、実はOSとアプリの中間にある「ミドルウェア」なのではないか、と。

ミドルウェアとは、基礎的な制御を行うOSと各業務に特化した処理を行うアプリケーションの間で複雑な処理を行ってくれる、いわば触媒のようなものです。ここまでの文脈でいうところの、「コミュニティの溜め」や「たむろ」がまさにこれに該当します。

アプリというアクションが生まれるためには、ミドルウェアという触媒=関係性が構築されていなければならない。テクノロジー領域に明るい高田さんらしい、納得の指摘でした。

この「ミドルウェア論」を受け、さらにもう一つの試みに乗り出すことになります。

「ケの日」は「ケアの日」

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それが、先述の制作日誌でも触れた「Snack etc.」の取り組みです。CCCが"朝のたむろ"だとしたら、スナックは"夜のたむろ"を担保する企画といえます。月2回ほど、夜の19時過ぎから22時ごろまで、僕がキッチンに立ってお酒を振る舞っています。

営業回数は本稿執筆時点でまだ4回のみですが、毎回お客さんのカテゴリが違ってとにかく面白い。ポップアップ出店者やメンバーシップ会員などのポンド関係者に加え、近隣在住・在勤の方や、区外在住の僕の知人など、いろんな属性の方がミックスされ、すでに面白い生態系が生まれつつあります。

柳田國男の民俗学でいう「ハレの日」(非日常)/「ケの日」(日常)にたとえるなら、CCCは前者で、スナックは後者に置き換えられるかもしれません。そしていま実感しているのは、「ケの日」は「ケアの日」でもあるということ。

自分の話に耳を傾けてくれる人がいるだけで、人の心は癒やされるものです。仕事や家庭で誰かと会話する機会はあっても、どうしてもそこには肩書や役割というラベルが張り付き、本当に自分が話したいことを話せていない人も多いのではないでしょうか。スナックでは、お酒の力も手伝って日中の集いよりも深い対話が生まれ、互いをケアする風景が意図せずつくられています。

静と動/柔と剛の二項関係で言うならば、ひがいけポンドはポップアップスペースという性質上、「動」や「剛」の側面に光が当たりがちです。しかし、関係性を成熟させていくためには、スナックが提供するような「静」や「柔」の時間も欠かせません。静謐でやわらかな居場所があればこそ、人は安心して次の一步を踏み出すことができる。アクションの前に、まずはケアが必要だということを、スナックを通して強く感じました。

僕は音楽を作り続けている

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すっかり長くなってしまいました。

書いても書いても語り尽くせない数々のエピソードが、いまのひがいけポンドには溢れています。言い換えるとそれは、まちの関係性の編集が着実に進んでいる証拠といえるかもしれません。

もしも編集物に例えるなら、ひがいけポンドはつくづくZINE的な空間だと思います。自主制作のZINEのように、さまざまな人の「好き」が縦横無尽に編み込まれ、一言で要約できない魅力を発している。

同じ編集物でも、やっぱりマガジン(雑誌)とは違うな、と感じます。ZINEはマガジンよりももっと無軌道で、偶発的で、編集者の作為を超えた”予定不調和”を感じさせるものです。マガジンは編集方針に基づいたある種のハーモニー(調和)を志向しますが、ZINEはさまざまな声が自在に響き合うポリフォニー(多声音楽)的な編集物といえます。ZINEという音楽の中では、全く違う種類の声が互いに打ち消し合うことなく、同じ時間軸の中で共生している感じがある。

編集ではなく「偏集」と呼びたくなるような、このダイナミックさがZINEの魅力であり、文字通り人びとの偏愛的なアクションの積み重ねが、いまのポンドの”らしさ”を作り上げてきました。

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場の“らしさ”とは、頭で論理的に理解するものではなく、もっと身体的に感受されるグルーヴのようなものだと思います。明確な言語として共有されてはいないけれど、たしかにポンドには特有のグルーヴがあり、そのグルーヴに共振する人たちがどんどん集まってきている印象があります。先に僕は運営者として目指すべき場をビオトープになぞらえましたが、ビオトープとはまさに生物同士が心地よいグルーヴを響かせる場そのものです。

そう考えたときに、運営者として自分が本当にやるべきことは、絶えずグルーヴを刻み続けることではないかと、最近になって思い至りました。

どんな楽器がジョインしても、それぞれが音を打ち消し合うことなく、心地良くノれるリズム隊でいること。そのために、相手の音に耳を澄ませ、刻々と変わるセッションの様相を敏感にキャッチし続けること。

奇しくも僕は、かつて音楽活動に打ち込み、その道を志した時期もありました。もう昔のように声高らかに弾き語ることはできないけれど、今でも僕は、別の形で音楽を作り続けているのかもしれません。

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