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決断した先にしか生まれない

「キミ以外に誰が今回の先陣を切るの。キミしか思いつかないよ」

そう長沼さんに言われた。

こういうことを言われると、俺は一応考える。自分がやっていいのか、誰かに迷惑をかけないか、そもそも人が来るのか、面白いと思ってもらえるのか。考えているうちに「逃げたい」となる。たぶん、何かを始めるときに一番簡単なのは、始めない理由を探すことだ。時間がない、お金がない、準備が足りない、もっと上手くできる人がいる。理由なんていくらでも作れる。

でも今回のことは、最初から完璧な企画があったわけではない。なんとなく「やってみる?」というところから始まった。そこから少しずつ話が膨らんで、気づけば9月18日に俺が先陣を切ることになった。

企画というのは、話しているだけではいつまでも企画のままだ。「じゃあ、やります」と言った瞬間に、もう簡単には「やっぱやめます」と言えなくなる。決断というのは、可能性を責任に変えることじゃないのか。

そして、決断する前も怖いし、決断したあともずっと怖い。決めた瞬間に急に腹が据わる訳じゃない。むしろ「本当にこれでよかったのか」という別の怖さが出てくる。今もずっと怖いし、身体は毎日震えている。冗談抜きで。毎日吐きそう。トイレで。8Mile冒頭のEminemみたいに。

こういうイベントが近づいてくると、俺はピリピリする。食欲もなくなる。目つきも鋭くなって、夜も眠れなくなる。落ち着かないし、人に対しても優しくなれない。命が燃えているから。そっちに忙しいから。人生はいつだって決断の連続だ。何もかも。人生全てが。でも命を削らないと、俺はきっとダメだったんだ。本当にツラい。しんどい。いつだって正念場。

たぶん、決断という本質を身体は理解しているのだ。だからこんなにも毎日ツラいんだ。そんなことは分かってんだよ。

でも、一度決断してしまうと「自分が決めたんだから」という力が生まれる。誰かに命令されたわけでも、成功を保証されたわけでもない。ただ自分で決めた。そして、ウダウダしてる奴のイベントに、いったい誰が来るんだよ。少なくとも俺は行かない。だから俺は今、色々な決断を下そうとしている。自分の人生に。それくらいいつだって何かをするときはマジなんだよ。

「こんなにマジになって」と思う人もいるかもしれない。でも、マジになれなくてどうすんだよ。

別に肩に力を入れて、深刻な顔をしていろという話じゃない。楽しむためにこそ、自分がやると決めたことくらい、自分を信じたい。本気で向き合っていないものに、人がわざわざ時間を使って集まってくれるとも思えない。そして適当にやって、やり切れないまま終わる自分も大嫌いだ。そんな奴が一番ダサい。

俺は、軽はずみなことをする人や、思いやりのない人は大嫌いだ。何より、そういうことをしてしまった自分を知っているし、時々そういうことをする自分を知っている。でも、その上で、俺はそういうのが大嫌いだ。

人には、人からは見えない事情や現実がある。みんな色々抱えて、それでもここまでやってきたんだよ。だから、優しくなれるし、厳しくもなれる。簡単には言えないことを知っているからこそ、誰かに対しても簡単には言わない。それでも必要なときには、優しいだけではなく厳しいことだってする。だって俺はそうするって決めているから。そうやって、それぞれが自分の人生を生きている。

だから今回来てくれる人たちにも、ほんの少しだけ同じ気持ちを持っていてもらえたら嬉しい。お店にも、働く人にも、そこで過ごしているほかのお客さんにも、それぞれの時間がある。堅苦しくしたいわけではない。節度やマナーや礼節を持って、その場にいる人みんなで気持ちよく過ごせれば、あとは思い切り楽しめばいい。

良い日は、誰か一人が作るものではなく、その場にいる人間が、それぞれ少しずつ持ち寄って作るものだと思う。とりあえず一歩踏み出して、その先でまた決めていく。

それはまるでブリコラージュのように。

そんなこんなで、周年祭のトップバッターになっている。ずいぶん雑な話だ。でも、人生なんて案外そんなものだ。やってみなければ、何が生まれるのかわからない。

今回は、過去を振り返るためだけのものではなく、「じゃあ、これからどうする?」を考えるための時間でもある。ここまで来たことを確認したら、その先はまだ何も決まっていない。だから誰かが最初に何かをする必要がある。今回、たまたま俺が最初に歩き出すことになった。それだけ。

初めて個展をやったとき、そこの店のオーナーに言われた。

「ガッツみせろよ」

そのときの俺が何を考えていたのか、細かいことはもう覚えていない。でも、その言葉だけはずっと残っている。やると決めたなら、最後までやれ。怖くても、格好悪くても、ちゃんと自分の足で立て。そういうことだったのかもしれない。あのときもずっと毎日怖かった。

あれから何年か経って、今になっている。

そして、ここまで色々と書いてきたけれど、俺がやりたいのは、そんなに難しいことじゃない。

「良い日にしたいと心から想っている」

そう言われたから。だから俺は、それに応えるだけ。本当にそれだけ。俺はいつだってそれくらい考えている。


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