イチから始める.hack//感染拡大 Vol.1 ver1.06
振り向くと道化師のような装備を見にまとった少女が立っていた
どうやらデータドレインする所を見られてしまったらしい…
上手く説明できず言い淀む俺。察しがいいのか少女は話題を変えてくれた
どうやらこの少女もBBSを見て来たらしい。各地でいろんなトラブルが起こっている事を教えてくれた。
おしゃべり大好き少女の一方的な井戸端トークに花が咲き始めようとしたその時
「ん?あぁぁぁっ!」
と明後日の方向を見て叫んだ
何事かと思いその方向を見る俺。しかし何もない…
ま、まさか…バグ修正対応にストレスが溜まり過ぎた開発者の生霊というやつが、み、見えるのか!?
ちょっと怖くなり少女を見て反応を待っていると
「お鍋焦げちゃった……(T. T)」
(火つけながらゲームは危ないですよ奥さん)
子供の頃は火元から離れる時は必ずコンロの火を消すこと!と口酸っぱく言われていた。この時代、テレビの再現VTRでは火を付けたまま家の電話に出て長話。そこから火事になるなんてのがよく放送されていたものだ…
というわけで、お鍋こげちらかし少女『ミストラル』は「今度パーティに誘ってね♪」と言いアドレスを俺に押し付けログアウトした…
結局なんの手がかりも得られなかった俺は街へ帰る
ホームタウンへ転送されるや否や目の前にいたPCに声をかけられる
「おまえ、いい目をしている」
(今日という日は何事か…)
そこにはキリっとした眼つきにおかっぱ頭、緑色のドでかい甲冑のような防具を身にまとい、俺の身長の2.5倍は長い斧槍を手にゲート前に立っていた
新手の勧誘だろうか…初対面に”おまえ”とはいい態度をしている…
『ぴろし』というこの男は、知り合いのPCが極悪モンスターにひどい目に合っていて、そのモンスターを倒しに行くから俺に立会人になってもらいたいらしい…いるか?俺?
態度は気に食わないが手がかりがなくなった事と、なんとなく面白くなりそうだったので快諾した。男とモンスターの決闘、見届けさせてもらうぜ
決闘場所に選ばれたフィールドに降り立つ。ぴろしは極悪モンスターが生息しているダンジョン最深部にいるはずだ
平原を探索するとダンジョンらしきデカイ塔のような建物を発見
『塔で決闘』ってな
だが不思議なことにこのゲーム。どれだけ高く構造物が出来ていてもダンジョンは地下にしか伸びていない
The World七不思議のひとつである。ちなみに罠のかかった宝箱を罠解除用アイテムを使って開けると、たった今使った罠解除用のアイテムが入っている事がある。これも七不思議のひとつ
ダンジョン最下層に到達するとそこにはぴろしとモンスターが対峙していた
まさに今、”男”と”モンスター”の…”プライド”と”ただのプログラム的行動”を賭けた死闘が繰り広げようとしていた…!
ぴろしは斧槍を手に突く、切る、スキルの回転攻撃で攻める
相手はゴツゴツした大きい岩顔のモンスター。頭に木が生えているのがちょっぴりお茶目。左右には拳のように丸い石が浮遊している
自身の岩顔をぶつけたり、浮遊する丸い石が自身の周りを幾度となく旋回し連続してぶつける事でぴろしに的確にダメージを与えている
(お、押されて…いる…)
助太刀を提案するも手出し無用と返答
決闘とはいえここで死なれても面倒になる気がしたので助太刀した
ロックヘッドと呼ばれる岩顔の強そうな見た目のモンスターだが2対1となった今、敵に勝ち目はない。攻撃スキルを使用し難なく倒す
決闘に水を差す形となったがぴろしに不満はないらしい。戦利品を俺に譲り激闘を終えた彼は今、すがすがしい顔だ
去り際に俺にアドレスを押し付け退場セリフを言いその場を後にするぴろし
本当は自分が危なくなったら助太刀に来てくれる人を立会人なんて言い方で傍に置いておきたかったから俺を誘ったのでは…
その昔、小学生くらいの時か。俺の友人Dが「俺の友達がゲームの攻略でわからない所あるから教えてくれ!」と電話でいきなり聞いてきたことがあった。幸い攻略法を覚えていた俺は電話越しに攻略法を伝えると後日、友人Dは「あの時の電話、俺の友達じゃなくて俺が知りたかったんだよね~」と自白してきた。今思えばあの意味のないプライドと見栄はいったい何だったんだ。しかもネタばらしされても『あっ、そっか~ふ~ん』くらいしか思わんて。しかし俺が友人Dに冗談で間違った攻略法を伝える事を危惧しての事だったとしたら策士。友達の友達には嘘つきづらいもんな…あとたしかにあの頃の俺は冗談がキツかったかもしれん…過去に反省…
つまりぴろしには知り合いのPCなんていなくて自分が倒せないから立会人なんて言い訳をして俺を…
過去の事、今の出来事、人は人と共に成長していく…
大切な何かを胸に、俺もその場を後にした…
つづく…
