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録音覚書(2007~14):第2交響曲/交響詩「葬礼」

  • 第2交響曲, フリート, ベルリン国立歌劇場管弦楽団 / ビンダーナーゲル(Sp.) / ライスナー(A.) / ベルリン教会合唱隊, 1924, (21:52, 10:08, 12:26, 6:02, 33:17), ベルリン, MONO, Deutsche Grammophon / Naxos Historical

  • 第2交響曲, オーマンディ, ミネアポリス交響楽団 / コリンヌ・フランク・オーウェン(Sp.) / アン・オマーレイ・ギャログリー(A.) / ツイン・シティ・シンフォニー・コーラス, 1935.1.6,7, (19:38, 9:06, 9:41, 5:31, 32:59), , MONO, RCA Victor / Membran

  • 第2交響曲, ワルター, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / チェボターリ(Sp.) / アンダイ(A.) / ウィーン国立歌劇場合唱団, 1948.5 (Live) ,(21:33, 10:23, 10:35, 13:32, 24:17), ウィーン, MONO, Classica d'Oro

  • 第2交響曲, クレンペラー, アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 / ヴィンセント(Sp.) / フェリアー(A.) / アムステルダム・トンキュンスト合唱団, 1951.7.12(Live), (9:17+8:42,9:32, 10:35, 4:05, 8:38+7:34+7:05+6:33), アムステルダム、コンセルトヘボウ, MONO, Decca

  • 第2交響曲, シューリヒト, ヘッセン放送交響楽団 / ヒュッツ(Sp) / ヘフゲン(MS) / フランクフルト歌唱アカデミー合唱団, 1960.5.13(Live), (20:48, 11:04, 10:52, 5:07, 35:54), フランクフルト, MONO, Originals

  • 第2交響曲, シューリヒト, フランス国立放送管弦楽団 / ゼーリヒ(Sp.) / ザレスカ(MS.) / フランス国立放送合唱団, 1958.2.20(Live), (19:54, 10:52, 10:43, 5:07, 35:39), グスタフ・マーラー音楽祭, MONO, INA / Altus

  • 第2交響曲, シューリヒト, シュトゥットガルト放送交響楽団 / マック=コザック(Sp.) / テッパー(A.) / 南西ドイツ放送シュトゥットガルト声楽アンサンブル、シュトゥットガルト・バッハ合唱団, 1958.4.17, (19:49, 10:11, 10:47, 4:57, 33:47), シュトットガルト、リーダーハレ, MONO, hänssler

  • 第2交響曲, バーンスタイン, ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団 / ヴェノーラ(Sp.) /トゥーレル(A.) / カレッジエイト合唱団, 1963.11.24, (1:23:56), ニューヨーク, STEREO, 放送映像

  • 第2交響曲, バルビローリ, ハレ管弦楽団 / ザレスカ(MS.) / エリオット(Sp.) / ハレ合唱団, 1959.3.12 (Live), (20:42, 9:56, 10:53 5:41, 34:05), マンチェスター、自由貿易ホール, MONO, Barbirolli Society

  • 第2交響曲, バルビローリ, ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 / シュターダー(Sp.) / ベーカー(A.) / 聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団, 1965.6.3 (Live), (21:55, 10:40, 11:26, 5:24, 34:04), ベルリン、フィルハーモニー, MONO, Testament

  • 第2交響曲, バルビローリ, シュトゥットガルト放送交響楽団 / ドナート(Sp.) / フィンニレ(A.) / シュトゥットガルト州立音楽・舞台芸術学校合唱団, 1970.4.5 (Live), (21:12, 10:19, 11:21, 4:45, 33:02), シュトゥットガルト、リーダーハレ, STEREO, EMI

  • 交響詩「葬礼」第2交響曲第2~5楽章, 若杉弘, 東京都交響楽団 / 佐藤しのぶ(Sp.) / 伊原直子(A.) / 晋友会合唱団, 1990.3.30(Live), (23:16, 9:56, 11:31, 4:36, 34:05), 東京、サントリーホール, STEREO, fontec

  • 交響詩「葬礼」, リッケンバッハー, バンベルク交響楽団, 1988.1/5, (22:28), バンベルク、クルトゥールラウム, STEREO, Vergin Classic / Musical Heritage

  • 第2交響曲第2楽章, アーノルド・シェーンベルク, キャディラック交響楽団, 1934.4.8(Live), (11:25), MONO, PRISTINE Audio

  • 第2交響曲, ギルバート・キャプラン, ロンドン交響楽団 / ヴァレンテ(Sp) / フォレスター(A) / ロンドン交響合唱団、オードウィン合唱団、BBCウェールズ合唱団、カーディフ・ポリフォニック合唱団、ダイフェルド合唱団, 1987.7.27-29 / 1988.1.29, (22:22, 10:15, 10:40, 5:20, 34:26), カーディフ、聖デイヴィッドホール, STEREO, IMP

  • 第2交響曲, ギルバート・キャプラン, ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 / ナジャ・ミカエル(Sp) / ラトニア・ムーア(A.) / ウィーン楽友協会合唱団, 2002.11/12, (23:17, 11:09, 10:52, 5:29, 35:01), ウィーン、楽友協会大ホール, STEREO, DGG

  • 第2交響曲(ギルバート・キャプラン、ロブ・マテス編小オーケストラ版), ウィーン室内管弦楽団 / ペテルセン(Sp.) / ベクル(MS.), 2013.2.17, (23:29, 10:56, 10:47, 5:19, 36:09), ウィーン、コンツェルトハウス, STEREO, AVIE

  • 第2交響曲(ヘルマン・ベーン編2台ピアノ版), ベーン、ウェーバー / ベクリー(Sp.) / ヴァーミリオン(A.) / バンツァー、ハーヴェストフダー室内合唱団, 2008.11.17, (19:11, 9:35, 10:17, 5:02, 31:31), ハンブルク、ライスハレ小ホール,STEREO, musicaphon

  • 第2交響曲(ブルノ・ワルター編4手ピアノ版), トレンカー、シュパイデル, 2012.9.5-6, (22:35, 9:24, 10:24, 5:24, 35:40), マリエンミュンスター、アプテコンツェルトハウス, STEREO, Dabringhaus und Grimm

第2交響曲は、マーラー受容が本格化する以前、長さや規模の面で演奏・録音が相対的に容易である第1交響曲や第4交響曲が取り上げられることが多かった時にも既に、合唱付きの大作として一定のプレゼンスを保っていた感がある。それ故、歴史的な録音には事欠かない。ワルター、クレンペラーというマーラーを直接知る指揮者にはセッション録音、ライブ録音交えてかなりの数の記録が残っているし、例えばその後の世代を代表するバーンスタインにも、ケネディ追悼のための放送された映像記録も含め、幾つもの録音記録が残っている。

フリートのものはマーラーの交響曲の最初の録音として著名である。いわゆるアコースティック録音というレコード初期の方式よるもので、そのための制約が大きく、音質に限れば、それ以降の録音方式のものと比較することは困難であり、クレンペラーの回想等で知られるマーラー直伝の演奏記録という観点で貴重な記録と考える。(フリートのこの録音については、別に取り上げた記事。「「リハーサルのとき私がいったすべてのことをどうぞお忘れなく!」 ーオスカー・フリートの第2交響曲の録音についての覚書」を書いていますので、そちらもご覧頂ければ幸いです。)

一方、オーマンディの2種の録音のうちの先のミネアポリス交響楽団(現在のミネソタ管弦楽団)を指揮した録音は、フリートのそれとは異なって電気式の録音であり、長らく第2交響曲の録音の定番で、戦前の日本の国策ニュース映画のBGMとして用いられたのも、この録音と思われる。(こちらについても、別に記事「戦前のニュース映画における第2交響曲の利用について」)にて紹介しています。)

1880年生まれのシューリヒトもまた、第8交響曲のミュンヘン初演に立ち会っており、早くも1913年9月にヴィースバーデンで第8交響曲の指揮をしており、第2交響曲と第3交響曲はシューリヒトのレパートリーの中で重要な位置を占めていた。1958年、1960年の第2交響曲ののべ3種類のライヴはシューリヒトのマーラー解釈の卓越を証する貴重な記録である。

バルビローリの3種の録音記録のうち、ベルリン・フィルのものとシュトゥットガルト放送交響楽団のものはいずれも本来の意味でのライヴ演奏で、演奏には傷が少なくない(特に後者)。その後バルビローリ協会からリリースされたハレ管弦楽団との演奏は放送用音源のようだが、他の作品でもそうであるように、ハレ管弦楽団との演奏にはバルビローリの解釈の意図の徹底という点で明らかなアドヴァンテージがあり、一聴の価値があると考える。

第2楽章のみではあるが、シェーンベルクが亡命先のアメリアで指揮をした演奏の録音(放送されたようだ)が残っていて、指揮者シェーンベルクを窺わせる記録として、大変に興味深く貴重に思われる。演奏スタイルとしては、無調や十二音技法の「前衛」のイメージからは意外に感じられる程に、たっぷりとしたポルタメントは時代の様式を感じさせ、寧ろ彼の初期作品との繋がりを思わせるようなロマンティックで歌に満ちたものだが、同時に聊か神経質に感じられる程に行き届いて丁寧な感じがあるのもまた彼らしい。

なお同じく抜粋としては、第4楽章の歌曲「原光」のみをグレン・グールドが指揮をした映像(歌唱はモーリーン・フォレスター、1957年2月20日、カナダのCBC放送の「クライスラー・フェスティバル」という企画の一部として上演・放送されたもの)が残っていたりするが、これは寧ろ歌曲の演奏記録とすべきかもしれない(上記リストには含めていない)。フォレスターの歌唱は勿論だが、若き日のグールドの指揮(彼は左利きだったようだ)も彫琢の深い、隅々まで行き届いた解釈の素晴らしいもので、マーラーに憧れていたというグールドがもし指揮者としての活動を行っていたら…という想像をも掻き立てる貴重な記録である。

一方リッケンバッハーのものは単なる抜粋ではなく、第2交響曲第1楽章の初期形態である交響詩「葬礼」の形態を演奏したもの。マーラー協会全集でも補巻として総譜が出版され、最近はコンサートで取り上げられる機会も増え、録音も増えたが、リリース当時は貴重な録音だった。かつて若杉・東京都交響楽団のマーラー・ツィクルスでは、交響詩「葬礼」の日本初演に続けて第2交響曲の第2~5楽章という形態の演奏が試みられたが、これは丁度、若杉が第1交響曲では避けた、第1交響曲に「花の章」を挿入するような もので疑問が残る。(ちなみに私は事情もあって、「葬礼」のみ聴いてその後は聴かなかった。)

また第2交響曲といえば、この曲だけをレパートリーにする指揮者として有名になった実業家・マーラー研究者であるギルバート・キャプランの名前を忘れることはできないだろう。2種の演奏の録音、ファクシミリの出版に加えて、2管編成に縮小したバージョンを作成して、自ら指揮した録音もリリースされている。

近年では、かつてマーラーの作品に接するためにはコンサートホールに赴かなければならなかった時代に作品にアクセスする手段として作成された、ビアノ編曲版まで録音されるようになってきているが、独唱2人と合唱を必要とする第2交響曲についてもその例外ではなく、ヘルマン・べーン編の2手ピアノ版、ブルーノ・ワルター編の4手ピアノ版のいずれも録音が存在する。一方、クレンペラーの回想には、第2交響曲のピアノ編曲を行ってマーラーに見せたというエピソードがあり、もし残っていれば、ということを思わず考えてしまうが、残念ながらこちらについては出版・演奏の情報は確認できていない。

上記のように第2交響曲の録音記録には興味深いものが数多く含まれるが、その中でもワルターの1948年5月のウィーンでの第2交響曲の演奏記録の歴史的価値は揺るぐことがないだろう。これはワルターがアンシュルス直前に指揮した第9交響曲以来の、里帰り公演であった。今日我々は幸いにして ワルターがウィーンに別れを告げた第9交響曲、ワルターがウィーンと再会した折の第2交響曲のいずれの記録にも接することができる。だが、それだけではなく、この記録はマーラーのウィーンでの復活を告げる公演の ドキュメントでもあるのだ。ライブ特有の傷はあるし、録音の状態は良好とはいえないけれど、この一期一会の演奏の持つ例外的な力、それに立ち会った会場の異様な雰囲気は充分に感じ取ることができる。これほどまでにこの曲の歌詞が 重みを持って一言一言噛み締めるように歌われ、それを支えるパッセージが各楽器によって歌われ、聴き手の心に染み渡ってくる演奏は稀であろう。21世紀の今日、この曲の力は最早既に喪われたとする見方 もあるようだが、仮にそれを認めたとしても、このような記録に接することによって、その音楽の持つ偉大な力に触れる経験をすることは今なお可能なのである。

(2025.12.29増補改訂してnoteにて公開)


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