もし私たちがぐりとぐらだったら、そのカステラをみんなに分けていただろうか
森で見つけた大きな卵。
それで作る、ふかふかで黄色いカステラ。
子どもの頃、あのページを見て
「おいしそう」「食べてみたい」と思った方は多いですよね
なぜ、ぐりとぐらは
苦労して作ったカステラを
森のどうぶつたち全員に分けたのか?なんて
考えたことがありますか?
『ぐりとぐら』あらすじ
野ねずみの「ぐり」と「ぐら」は、森の中で大きな卵を見つけます。
持ち帰るには重すぎる。
そこで彼らは考えます。
「そうだ、ここで料理しよう」
家からフライパンや小麦粉、バターを運び、
その場でカステラを焼き始めます。
甘い匂いは森じゅうに広がり、
匂いにつられて動物たちが次々と集まってきます。
そしてカステラが焼き上がると、
カステラはみんなで分けられ、きれいになくなります。
最後に残った卵の殻で車を作り、二匹は帰っていく。
「優しさ」だけでは説明がつかない
「絵本だから」とかは置いておいて
普通に考えれば、
材料を運んだのはぐりとぐら
火を起こし、焼いたのもぐりとぐら
労力をかけたのは彼らだけ
成果物を独占する権利は、十分にある。
それなのに彼らは、
ためらいもなく、全部を差し出します。
これを
「心が優しいから」
「仲良しが好きだから」
だけで片づけてしまうと、
「絵本が教えてくれるもの」の“核心”を見落とします。
森は「優しい世界」ではない
視点を変えてみましょう。
ぐりとぐらは、小さな野ねずみです。
森には、クマも、イノシシも、力の強い動物がいます。
もし彼らがこう言っていたら、どうでしょう。
「これは僕たちが見つけた卵だ」
「誰にもあげない」
甘い匂いに誘われて集まってきた相手に対して、
その態度はあまりに無防備です。
力ずくで奪われる可能性
恨みを買う可能性
次に何かを見つけた時、目をつけられる可能性
「独占」は、小さな存在にとって最大のリスクになり得ます。
彼らが選んだのは「共有」という戦略
ぐりとぐらは、
カステラを“分けた”のではありません。
カステラを使って、環境を変えただけです。
みんなと同じものを食べる
喜びを提供する側に回る
「奪う対象」ではなく「仲間」になる
カステラを手放すことで、彼らは
敵意を消し
森の中での立場を安全なものにし
「信頼」という目に見えない資産を手に入れた
これは、感情論ではなく
実は極めて合理的な生存戦略…と言えます。
「手放す者」が一番守られる
私たちは大人になるほどに、
そしてこんな不景気な世の中で
損をしたくない
取られたくない
自分の分は自分で守らなきゃ
と、力が入りがちです。
でも、ぐりとぐらが教えてくれるのは真逆です。
全部を握りしめる者ほど、一番狙われやすい
少し手放せる者ほど、結果的に守られる
これは、
人間関係にも
仕事にも
情報との付き合い方にも
そのまま当てはまるんです。
絵本は「道徳」ではなく「構造」を教えてくれる
『ぐりとぐら』は、「優しくしましょう」「みんなに与えましょう」という物語ではありますが
「弱い立場の者が、どう振る舞えば生き残れるか」
を、子どもにもわかる形で教えてくれています。
「ひとりじめしちゃだめだよ」
「みんなに等しく分け与えるんだよ」
という道徳の裏には、きちんと
「そうした方がいいことがあるから」
という答えがあるんですよね。
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