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🔷【29最終話】倩䞊の楜園・倩䞊の楜園ナりタ

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攟送終了埌、局ぞの反応は時間が経぀ごずに激しくなっおいった。最初は芖聎者から寄せられる驚きが䞻だった。だが数時間埌には、番組を芋逃した人達から察談をもう䞀床攟送しお欲しいずいう芁望ぞず倉わっおいた。

俺の出挔自䜓、急なピンチヒッタヌで、しかも䞍意打ちの告癜。この隒ぎは圓然の結果ずいえばそれたでなのだが。

“ただ、ひず぀条件があるのですが  ”

あの時、岡郚は型砎りな条件ずやらを北原プロデュヌサヌに突き぀けおいた。䟋の写真を公の堎ぞ持ち出したのは、もちろん奎の差し金だ。ここたでは局偎ずしおも、棚からがた逅の話題性だっただろう。けれど、さすがはりチの切れ者マネヌゞャヌさん。その先たで読んでいたらしい。

アンコヌル攟送のタむミングたで、しっかり泚文枈みだった。お埅ちかねのお披露目は、俺達が銙枯ぞ飛び立っおから。それたでは他局はもちろん、自局のワむドショヌですらサチの写真は門倖䞍出。ネット䞊ぞの動画の無断転茉にも、培底的に目を光らせるそうだ。

これにはちょいずばかり、局の䞭で論争が巻き起こったらしい。こんなスクヌプを手元に抱えながら攟送できないなんお、どういうこずだず。

だが、アンコヌル攟送ずなれば話は別だ。スポンサヌだっお攟っおはおかない。北原さんのフォロヌもあっお、真倜䞭の局䌚議では、岡郚が突き぀けた条件を正匏な決定事項ずしお受け入れざるを埗なかったらしい。

マンション前には報道陣が詰め掛け、倧隒ぎになっおいお、俺ず岡郚は郜内のホテルぞ忍び蟌んだ。このホテルは芞胜人の扱いを心埗おいお、裏口から誰の目にも觊れるこずなく客宀ぞ案内される。サチは北原さんの提案で、圌の自宅ぞ避難しおいるずいう。

最初それを聞かされた時は、「䜕蚀っおいやがる」ず岡郚に掎み掛かるずころだった。だけど、北原さんが個人的にサチず芪しく、攟送のこずもすべお把握しおいるこず。甚心のため倖出もたたならないサチを、北原さんの奥さんが快く匕き受けおくれたこず。そこたで聞くず、意倖ずナむスなアむディアなのかもしれないず思い盎した。マスコミが思いもよらない隠れ家であるこずは確かなようだ。

だけど倉わったおっさんだよね。サチを匿っおいるのがばれたら、立堎䞊、自分自身がやばくないのか

それにしおも、サッちゃん、驚いただろうな。

岡郚から無事だず聞いおはいたが、こんな時間たで連絡ひず぀できなかった。

ホテルのベッドに腰を䞋ろし、時蚈に目をやるず、既に倜䞭の二時を回っおいた。スマホを手に取り、短いメッセヌゞをゆっくりず打ち蟌む。

『迷惑掛けおごめんね。ゆっくり䌚えるよう時間を䜜るから』

サチは芞胜人じゃないんだ。この隒ぎに目を䞞くしおいるこずだろう。だけど、カメラを前に心の内をすべお語った開攟感は、忘れられないものだった。

どんな状況になっおも圌女を守る盟になろう。たずえ倱うものがあったずしおも、サチず匕き換えなら埌悔なんおない。

そう自分に蚀い聞かせ、メッセヌゞを送信した。


翌日、俺は䞀日ホテルにカンヅメ。䜕凊に顔を出しおも隒ぎを倧きくするだけだず、岡郚がスケゞュヌルをすべおキャンセルしたのだ。

サチからは『倧䞈倫だよ、ナりちゃん。たたゆっくりね』ずメッセヌゞが入っおいた。

いた䜕しおいるの北原さんずこっおどんな感じ
色々質問攻めにしたかったがグッず堪えた。

ちゃんず時間を䜜っお、サチの顔を芋ながら話をしたかった。

䞀人、だだっ広いスむヌトルヌムで台本ず睚めっこをしながら時間を朰しおいたのだが、昚倜の寝䞍足のせいか、気が付いたら゜ファヌで眠りこけおいた。

岡郚に揺り起こされるたで、どれくらい眠っおいたんだろう。

がばっず飛び起きる。
もう日が暮れかけおいた。

「サチを銙枯に連れお行く」

岡郚は唐突にそう宣蚀した。

「撮圱であちこちロケに出るから、䞀緒にいられる時間はそう倚くはないだろうけどな。今、向こうでの滞圚堎所を再怜蚎しおいるずころだ」

おっず、神劙な顔をしようにも口元がだらしなくほころんでしたう。サッちゃんず䞀緒だなんお。

「出発日を早めるこずにした。お前ず俺は明日、午埌の䟿で。サチは倜の䟿、少しずらしお来おもらう」

ルヌムサヌビスで泚文したコヌヒヌを啜りながら、岡郚は話を続けた。

「今朝、北原さんの自宅にお邪魔したんだ。サチに䌚っお了解をもらった。この隒ぎの䞭、䞀人日本に眮いおいく蚳にもいかないだろう」

「ぞ い぀の間にサッちゃんに䌚っおいたんだよ。俺も連れおっおくれればいいのによ」

「銙枯に行ったら、撮圱に入るたでは二人で居られるから文句を蚀うな。あぁ、昚倜のむンタビュヌも芋おいたらしいぞ。熱烈なラブコヌルがちゃんずサチに届いお良かったな」

「マゞで 芋おたのっ、サッちゃん」

「どうやらサチの友達があの写真に気付いお、番組の途䞭で電話をかけおきたらしい」

思いもかけない展開。今床サッちゃんに䌚ったら、俺きっず照れちたう。

「  䜕か蚀っおた サッちゃん」

「た、䜕お蚀っおもサチだからな。サル顔で倧口開けお笑っおる写真じゃなくおもいいのにっお、拗ねおいたぞ」

ぞ サル顔っお。

「サッちゃんらしく、可愛く撮れおたけどなぁ。それより、怒っおいなかった あんな颚に公衚しちゃったこず」

「それは気にしおいないみたいだ。サチは䜕より、芪友にずっず黙っおいたこずが埌ろめたかったらしい。だから、その子に䌚っお俺から詫びを入れおおいた」

あ  。

ほら、たただ。圌女に面倒を掛けちたっおいる。サチくらいの幎代の子なら、話題は圌氏のこずだろう。俺のせいで、きっず䜕も話せず肩身の狭い思いをさせおいたに違いない。前にヘブンランドで「友達に頌たれた」っおサむンを頌んできたっけ。岡郚が䌚ったのっお、その子かな

ごめんね、サッちゃん。

ずっず俺の郜合で振り回しおばかりだ。もう誰にも嘘なんお蚀わなくおいい。あの島で過ごした時のように、手を繋いで倖を歩き回ろう。

だけどただ、片を぀けなきゃいけないこずがある。カメラを手に远い掛け回しおくるマスコミに、もう䞀本釘を刺さなきゃ、この隒ぎはい぀たでも続くのだから。


俺の手で、い぀かこの玅くれないを君の唇にのせおあげよう。

笑った時、拗ねた時に可愛らしく動くその圢を、ずっず眺めおいたい。

あぁ、でも俺は、䜕も぀けおいないサチの唇が䞀番奜きだ。

だったら玅あかく染たった君の唇に繰り返し口づけお、俺が党郚剥いであげる。きっず子䟛の頃に食べた林檎风みたいに、舌にたで色が移るんだろうな。


  やばい、䌌合いすぎる。
鏡の䞭の女は、真っ赀な唇を匕き぀らせお嘘笑いをしおいる。

二床目の女装ずもなるず手慣れたもんだ。南囜で焌けた肌ずブルヌアむズは、倚民族を背景にした異囜情緒をよりリアルに際立たせおいる。お銎染みのショヌトボブも、今じゃすっかり板に぀いおいる。

俺はこの前ずは違う秋物のパンツスヌツを遞び、袖を通した。りヌル混のストレッチ玠材を䜿ったブヌツカットパンツは、やはり男物ずはどこかラむンが違う。シックな玺色の襟元から芗く深いパヌプルのむンナヌが、艶やかに映えおいる。

ベランダから芋枡す䞉浊海岞に人圱はない。日が暮れおいく。そろそろ岡郚ちゃん、ご垰宅かな。

今日も仕事の埌片付けにず、䞀人岡郚はホテルを出おいった。入れ違いで事務所のスタッフが俺をこの䞉浊の別荘たで送っおくれた。倜䞭、サチはタクシヌでここぞ来る予定だ。久しぶりに䞀晩䞀緒に過ごし、時間をずらした䟿でお互い銙枯ぞ出発する。

ブルンッ。

窓の倖で聞き慣れた゚ンゞン音が響く。
あ、岡郚ちゃんだ。
笑いを噛み締めながら玄関ぞ向かった。

「おっかえり〜」

ドアを開けるず、眉間に皺を寄せた岡郚ず目が合う。

「  化粧のノリがいいみたいだな、ナりタ」

呆れた口調。

「じゃ、出掛けるか。マスコミはみんな巻いお来たんだろ」

俺は奎の手を匕くず、匕きずるように車ぞ連れ蟌んだ。

「そんな栌奜で銬鹿を蚀うな」

「マゞですけど俺」

「䜕凊ぞ行こうっお蚀うんだ」

「俺たちの前倜祭だよ」

ブルンッ

深緑のゞャガヌは、アクセルを螏むずいい声で鳎いおくれた。岡郚はふお腐れたように黙り蟌んだ。

高速を飛ばせば間に合うはずだ。
矎しい光のパヌティ。
ヘブンランドぞ向かっお、俺は車を走らせた。


平日だずいうのに、パヌクの䞭は人々で賑わっおいた。

ありきたりなカップルを挔出するため、岡郚の腕に指を絡めお歩く。

悪ノリしおいる自分に笑いが蟌み䞊げる。
あぁ、可笑しいったらありゃしねぇ。

甘い匂いに誘われる。
出店でみせを芗くず、棒状のドヌナツらしきものに砂糖がたっぷりたぶされた菓子が積み重ねられおいた。

䜕だか腹が枛っちたった。
だから圌氏におねだりしおみる。

「アレ買っお」

盞倉わらず眉間に深い皺を刻みながら、岡郚は列の埌ろぞ䞊んだ。

人のいないベンチで埅っおいろず目配せされ、玠盎に腰を䞋ろしお奎の背䞭を眺める。

ちらちらず列に䞊ぶ女達が岡郚を盗み芋しおいる。

駄目だよ、そんな目で芋おも。
こんな男が女を連れおいない蚳ないでしょ

コヌヒヌずお菓子を手に岡郚が戻っおくる姿を目で远う。

女達の芖線が、奎の背䞭に匵り付いおいやがる。

だから、ご期埅に添うよう笑顔で出迎える。

ちょいずばかり甘い毒を含んだ流し目なんかどうだろう。

「  目立ちすぎだ、お前は」

グむッず腕を掎たれ、足早に奎は歩き始めた。

「もう暗いんだし、堂々ずしおりゃバレやしねぇっお」

前にアンタすら隙せたじゃないか。

パクリず砂糖のたぶされた菓子を頬匵るず、わざず岡郚の口元ぞそれを運んでやる。

「たいした床胞だな」

やっず奎は薄く笑っおみせた。
そうそう、楜したなきゃ損だぜ、岡郚ちゃん。

街灯の灯りが萜ずされる。
そろそろ始たるかも。
慌おお以前サチが教えおくれた堎所ぞ向かう。

やっぱりここは穎堎なのかな。
人圱もたばらな垣根の端っこに腰を䞋ろす。

「岡郚ちゃん、ヘブンランド来たこずあるの」

「ある蚳ないだろう」

「だよね」

「俺達っおさ、人様には瞁のない経隓をいくら積んでいおもさ、意倖ず普通のこずっお知らなかったりするよね」

「今日のデヌトも普通ずは蚀えないだろうが」

たぁな、ず空を芋䞊げる。
青癜い月が、ぜっかりず倜空に浮かんでいた。

「いよいよ明日から銙枯だな。日本で眺めるお月さんずも、しばらくはお別れだ」

「これからは䞖界がステヌゞだ。お遊びは通甚しないぞ」

「ぞいぞい」

ふざけた口調を返しながらも、真剣な県差しで応えおみせる。

「俺の手を離すなよ」

「  おう」

歊者震いっおいうの
䜕だか岡郚の蚀葉に感動しちたった。
感動぀いでだ。
盞棒に倧事な告癜をしおみる。

「俺、今日サッちゃんにプロポヌズしようず思う」

  。

岡郚は少し黙り蟌み、さっきの俺を真䌌るように倜空を仰いだ。

「そうか」

それ以䞊、奎は䜕も蚀わなかった。
それっお反察はしないっおこずだよね

぀るっず口が滑っちたったけれど、䜕だかひず぀目の難関をクリアした安堵感。

今曎ながら、ほっず溜息を぀く。

「あのさ、岡郚ちゃんはさ、今たでしたこずあるの プロポヌズずか  」

聞き芚えのある賑やかなリズムず共に、遠くから光の枊が近づいおくる。

流れおきた颚に前髪を乱され、岡郚は髪に手を添えた。

その仕草が劙に哀愁を垯びおいお、぀い芖線が釘付けになる。

色気があるっおいうの

「  あるさ」

「ぞ、マゞで」

岡郚は滅倚にプラむベヌトを匂わせない。

だから返された蚀葉は意倖なものだった。

「プロポヌズしたこずあるの っおいうか、お前たさか知らぬ間に結婚しお、既に離婚も経隓枈みだなんお蚀うんじゃねぇだろうな」

「勝手にバツむチにするな」

「しようず思っただけか それずも  」

「口にしおみたけれど、盞手はそれがプロポヌズだずは気付かなかったみたいだな」

「たたたた、ぶっきらがうな蚀い方したんだろうよ。愛想っおモンがないからね、岡郚ちゃんは。で、䜕お蚀ったの 参考たでに聞かせおよ」

たるで初䜓隓を語るクラスメむトの猥談わいだんに耳を傟けるノリだ。だっおさ、この歳にもなるず今曎経隓のない話なんお滅倚にないじゃん。

「俺の手を離すなず蚀ったんだ」

あれ
聞き芚えのある台詞。
岡郚ちゃんの十八番オハコなのかな。
だけど女に䜿うず、結構それっお  。

「すげぇストレヌトな口説き文句じゃん。それで気付いおくれないなんお、随分ず圌女、鈍感なんだな」

「鈍感か。たぁな」

片偎だけ口元を䞊げお、薄く奎は笑っおみせた。

「お前がそこたで入れ蟌んだ女がいたなんお党然気付かなかった。それっおさ、い぀頃の話」

「぀い  」

パレヌドの先頭が目の前に迫る。
賑やかな喧隒に岡郚の語尟がかき消された。

――぀いさっき  。

そう聞こえたのは気のせいだろうか。
俺は声を拟おうず、奎ずの距離を少しだけ瞮めた。

「぀い、最近っおこず」

「たぁ、そうだ」

ドクンッ。

それっおさ、たさかサチのこずじゃないよな

䞀気に血の気が倱せる。
鈍感っお蚀葉は悪いけどさ、それっお、それっお  。

“ああいう女を倩然っお蚀うんだろうな”

サチず重なる。

「どっどんな女 岡郚ちゃんを虜にしちゃうだなんおさ」

出来るだけさらりず。
ちょっずばかりおどけお芋せたりなんかしお探りを入れる。

たた䞀瞬、奎は黙り蟌んだ。
今床はその間が劙に長く感じる。

ブルヌ。
ピンク。
パヌプル。
む゚ロヌ。

通り過ぎおいくキャンディカラヌの電食。
サチず初めおキスをした時ず、䜕ひず぀倉わらない情景。

芚悟を決めお俺は岡郚を芋据えた。
もし答えがサチだずしおも、目を反らさず受け止めよう。

「勿䜓぀けないで教えおよ。盞棒ずしおは気になるずころなんだけど、アンタの趣味」

「青い目の女だ。あの写真の海みたいに、透き通るようなブルヌアむズの女だよ」

サブンッ。

その台詞に觊発され、揺れるあおいれリヌ色の海が脳裏をよぎった。

  サチじゃない。

岡郚の答えに肩透かしを食らった気分だ。
ず同時に、湧き䞊がる疑念。

それっお誰だよ。
日本の女じゃないっおこずだよな。

最近っお、い぀だ
だっおコむツっおサチに惚れおたんじゃないのか

俺がモルディブぞ行っおいる間に出䌚いでもあったのか。

サチに振られお隙間だらけになった心ぞ、すっず入り蟌んだ女でもいたっお蚳

いや、逆かもしれない。
ブルヌアむズの女を倱った隙間に、サチぞの想いが積もっおいったのかも。

もしかしお岡郚っお、意倖ず惚れやすいタむプなのか

頭の䞭は疑問笊だらけだ。

「ぞぇ、さすが岡郚ちゃん、むンタヌナショナルなキャパだよな。ブルヌアむズっおいうのがそそるよね。それで、モデルずか やっぱり、すげぇいい女なのかよ」

「そうだな」

岡郚の芖線を感じ、パレヌドから奎ぞ目を戻す。

どくんっ。

䜕だよ、そんな顔。

ブルヌ。
ピンク。
パヌプル。
む゚ロヌ。

移りゆく色圩が、奎の濡れたような瞳を暪切っおいく。

「ブルヌアむズにショヌトボブ。お前によく䌌おいるかもな」

目の前が暗くなった。
倧きな圱に遮られお、光の枊が暗闇に呑たれる。

えっ  䜕

自分の状況が理解できない。
塞がれた唇に、思考回路が吞い䞊げられる。

“お前によく䌌おいるかもな”

呟くようなさっきの台詞が頭の奥で響いおいる。

背䞭に添えられた指先が、チリチリず焊げ付くような熱を䌝えおくる気がした。

䜕をしおいやがる――抌しのけるこずなど、たやすかった。

だけど  。

ハヌトブレむクココロこなごななんだよね、岡郚ちゃん。

運呜の出䌚いが立お続けに蚪れお、䞀気に玉砕しちたったのかもしれない。

俺だっおサチに想いを受け止めおもらえなかったら、泣きべそかいおコむツに抱き぀くかもしれない。

キスはしないだろうけどよ。

あ、岡郚にサチの面圱があったら、わかんねぇよなぁ。

それっおどんな顔だよ。

突き攟すこずなど出来なかった。
普段スカしおいる奎だけに、ここたで自分を芋倱うずは、よっぜど心の傷は深いのかもしれない。

䞍思議ず愛しいずさえ感じた。
たぁ、枛るモンじゃないしさ。
俺も䞉十前にしお、人間出来おきたっおダツですか

だけど、コむツっおばキス、䞊手すぎやしないか。

サチの可愛らしい小鳥ちゃんみたいな口づけずは蚳が違う。

男のキスっお狩猟本胜があるっおいうのかな  。

奪われるような感芚。

ぞくりっ。

手慣れおいやがる。
女のそれずは明らかに違う感芚に、堕ちおしたいそうだ。

だけど、ふずした疑問に我に返った。
おいおい、たさかあの時、サッちゃんにもこんなキスをしたんじゃないだろうな。

むくりず湧き䞊がる闘争心。だおに芞胜界を生き延びおいる蚳じゃないんだよね。俺っお、実はかなりの負けず嫌いっおダツ。受け身だったキスから攻めに方向を転換しおやる。

䞍思議ず、男同士だずいうのに嫌悪感はなかった。同点っおずこですかね。そう自芚したずころで唇を離す。挑むようにお互い芖線を絡め合った。

「色々な圹柄に挑戊したいず、垂川竜之介にタンカを切っただけのこずはあるな、ナりタ」

「ぞ」

「いい心構えだ」

「は」

「『蜘蛛女のキス』、『ブ゚ノスアむレス』、『ブロヌクバック・マりンテン』、『ある少幎の告癜』  これらの䜜品の共通点は䜕だ」

䜕だよ急に。
だけど、぀い぀いその共通点ずやらの答えを探し始めた。

あ、そうか。

「同性愛を描いおいる」

「そうだ。名䜜ぞの出挔でも、思いもかけない圹柄を挔じるこずはありえる。お前には、こういう題材もこなせそうだ」

こい぀っお。
こい぀っお。

「おめぇ、悪ふざけにもなぁ  」

䞀発食らわせおやろうず、みぞおちに拳をめり蟌たせた぀もりが、しっかりず岡郚の手の平にそれは遮られた。

「そろそろ垰らないず、お姫様の面䌚に間に合わないぞ」

悪びれる様子もなく、しゃあしゃあず腕時蚈を眺めながら岡郚は促しおくる。

やばい。
シャワヌを济びお化粧を掗い流さなければ。
慌おふためいお家路を急いだ。


どこたでが冗談なのか、食えねぇ野郎だ。
シャワヌの滎を撒き散らしながら、髪をがしがしず乱暎に泡立おる。

あの時䞀瞬、苊悩の片鱗を浮かべた岡郚の瞳。

挔技だずしたら、倧した圹者だぜ。
そう心の䞭で悪態を぀きながらも、䜕かを垣間芋おしたった戞惑いが湧き䞊がる。

それは䜕なのかず問われれば、がんやりず曖昧なものなのだが。

“俺の手を離すなよ”

あぁ、離さないさ。
その手に導かれる心地良さを、俺は知り尜くしおいるのだから。

バスルヌムの小窓に、車のヘッドラむトが暪切るのが芋えた。

やべぇ、サッちゃんが来ちたった。
髪に差し蟌んだ指をせわしなく動かす。

あぁ、畜生。
䜕お蚀ったらいいんだ。
結局、肝心なプロポヌズの蚀葉を決めないたたじゃねぇか。

慌おお矜織ったバスロヌブの玐を結ぶ手を止める。

パニクっおいる堎合じゃない。
ちゃんず、ちゃんず考えなくおは。

本圓はもっずロマンティックな挔出をしお、サチぞ捧げる指茪なんかも甚意しお、生涯忘れられない愛の蚀葉を莈りたかった。

日垞生掻もたたならないほど、サチの人生を巻き蟌んでしたった。

そのうえ、䞀緒に銙枯ぞ来お欲しいだなんお。

もう、ずっくに心は決たっおいる。
䟋のむンタビュヌ隒ぎで、それを口にするタむミングが慌ただしく早たっただけ。

結婚すれば、マスコミに远い掛け回される状況も少しはマシになるはずだ。

秘密にすればするほど奎等は嗅ぎ回るのだから。

思いっきり掟手な結婚報告䌚芋でもやっおしたえば、隒がれるのも最初だけだろう。

いや、そんなんじゃない。
そんな理由じゃない。

急ぐのは、俺がもう限界なだけ。
人目を気にしお䌚えない時間に抌し朰されそうだ。

これから海倖の仕事も増えおいくこずだろう。

子䟛じゃないんだ。
い぀も䞀緒にいなくちゃ嫌だなんお、駄々をこねる぀もりはない。

ただ、離れおいおも、垰る堎所が同じなら、どんなに満たされた気持ちで生きおいけるだろう。



着替えを枈たせ、階段を降りるずリビングにサチず岡郚が立っおいた。

サチが岡郚の顔に手を䌞ばしおいる。

ドクンッ。

え、䜕
サッちゃん、䜕しおいるの

先に俺ぞ芖線を向けたのは岡郚だった。
続いおサチが振り返る。

サチの背埌で、意味深な目配せを岡郚は投げおよこす。

䜕だよ。
䞀䜓、䜕なんだよ。
二人の芪密さに、未だ心がざわめく。

俺もただただ未熟者だよね。

「芋お、ナりちゃん。ヒロったら口の端に口玅なんお付けおるのよ」

ほんのりず玅を移した人差し指を、勝利品みたいに差し出しおみせる。

芋〜぀けた。
そんな悪戯いたずらっ子みたいな瞳は、もうビヌ玉の茝きを攟っおいた。

口玅っ、やばい。
それっお俺の。
確かハンカチで拭き取ったはずなのに。

冷や汗が䞀気に噎き出す気がした。

「さっ、さっ、サッちゃんっ」

「なぁに ナりちゃん、そんなに慌おちゃっお」

クスクス。
可笑しそうにサチは俺を芋぀めおくる。

「そっ、そっ、それっおさぁ  」

誀魔化そうずすればするほど、泥沌にはたっおいく気がした。

「倱瀌。久しぶりに矜目を倖しすぎたんだ。しばらく東京ぞ垰れないからな。名残惜しんでくれる女の䞀人や二人、いない蚳じゃないんでね」

さらりず岡郚は蚀っおのけた。

䞇事䌑す。
さすが岡郚ちゃんだね。

サチはほんの䞀瞬、冷やかすような県差しを奎ぞ向けるず、急に黙り蟌み芖線を萜ずした。

様子が倉だ。
サチの顔が赀くなっおいく。
気のせいか、おでこに掛かった前髪が小刻みに震えお芋える。

「サッちゃん」

岡郚のキスマヌク、そんなにショックだったの

「あのっ」

意を決したように、サチは顔を䞊げた。

びくっ。

あたりにも真剣な声色に、胞が跳ね䞊がった。

「やっぱり、ヒロに最初に蚀わなくちゃず思っお。ほら、前にナりちゃんの芪代わりみたいなものだっお蚀っおたでしょう」

は

岡郚が俺の芪代わり
歳は二぀、た、孊幎は䞉぀違うけどよ。

䜕の話

「あのっ」

びくっ。

さっきより倧きな声。
それに、可愛いおでこに汗が滲んでる。

  サッちゃん

「ゆっ、ゆっ  ナりちゃんを、旊那さんにくださいっ」

岡郚に向かっお、サチは深々ず頭を䞋げた。

ぱさり。

結んでいない髪が、俯いたサチの頬を芆う。
その隙間から真っ赀に染たった耳朶がのぞいおいる。

「あのっ、あたしなんかには勿䜓ないなんお充分わかっおいるけど  䞀生倧事にしたすっ」

えっ  えっ
䜕蚀っおるの、サッちゃん。
それっお。

「断られお圓たり前だず思っおたす。もちろん、今すぐっおいうんじゃなくお  い぀か、そうなれたらっお。どっ、どうしおも蚀っおみたかっただけっ」

岡郚の顔っおいったら、きっず俺も同じ顔をしおるに違いない。

鳩に豆鉄砲。

沈黙が流れた。
あたりの衝撃に、時間が止たっおしたったかのようだ。

「  バァカ」

小さく岡郚はサチの頭を小突いた。

「痛おっ」

最んだ瞳でサチは顔を䞊げた。

䜕しやがる。
跳び蹎りのひず぀でもかたしおやりたいずころだが、金瞛りにあったように䜓が固たっお身動きが出来ない。

「アンタっお぀くづく  」

笑いを抌し殺した岡郚の声。
深く息を぀くず、奎は奇劙なこずを俺に問い掛けおくる。

「おい、ナりタ。俺がクリスチャンなのを知っおいるか」

䜕を蚀いたいのか分からず、怪蚝けげんな県差しで岡郚を芋据えた。

「たぁ、母芪が勝手に掗瀌を受けさせたのだが、週末のミサも退屈で五歳で卒業した。た、えせクリスチャンだ」

サチは真剣な県差しで岡郚の話に耳を傟けおいる。

だけど俺はずいうず、それどころではない。

だっおさ、さっきのアレ  。

アレだよ、アレ。

「たたに子䟛心をくすぐるショヌもあっお、それだけは興味接々で眺めおいた。䜕床も䜕床も牧垫の蚀葉を聞いおいたから、今でも耳に残っおいる  」

おもむろに岡郚は正面から真っ盎ぐ俺を芋据えおきた。

射抜くような県差し。

そのただならぬ雰囲気に狌狜し、俺は知らぬ間に小さく拳を握っおいた。

「汝は、この女サチを劻ずし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に䟝よらず、死が二人を分か぀たで、愛を誓い、劻を想い、劻のみに添うこずを、神聖なる婚姻の契玄のもずに、誓うか」

静かな䜎い声は、凛ずした響きを持っお俺の錓膜を揺らした。

こんな台詞を突然流暢に口にするずは、本圓に倧した男だず感心する。

だけど、その蚀葉のむメヌゞずいえば、どこか安っぜいドラマのワンシヌン。

そう思いながらも、改めお岡郚が口にした誓いを噛み締める。

だっお、サチを目の前にしおその蚀葉は、二人で眺めた南囜のスコヌルみたいに音を立おお降り泚ぎ、切ないほどに心を揺さぶるのだから。

「誓いたす」

䞀点の迷いもなく俺は答えた。

岡郚は玍埗したように二、䞉床小さく頷く。

そしおサチぞ芖線を向けるず、再び誓いの蚀葉を繰り返した。

「汝は、この男ナりタを倫ずし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に䟝よらず、死が二人を分か぀たで、愛を誓い、倫を想い、倫のみに添うこずを、神聖なる婚姻の契玄のもずに、誓うか」

サチは瞌たぶたを閉じおいた。
ひず欠片も取り零さないように、じっず耳を柄たせおいる。

岡郚の蚀葉が終わるず、柔らかなカヌブを描く睫毛が、ゆっくりず開くのが芋えた。

花が開くように、柄んだ瞳がそこにあった。

俺の心を虜にしたビヌ玉の県差し。

「はい。誓いたす」

サチは照れ臭そうにはにかんだ。

幞せを噛み締めた笑顔に、胞が摘み䞊げられる。

きっず時間にしたらほんの数分の出来事。

だけど、この瞬間を境に今たでずは違う人生の歯車が回り始めるのを感じた。

岡郚の奎、いいトコみんな持っおいきやがっお。

この男のプロポヌズを聞き流しちたう女の顔が芋おみたい。

きっずサチ䞊の倩然。

「誓いのキスは俺が退散したあず、ゆっくりずやっおくれ。あ、キスはもう沢山か、ナりタ」

どくんっ。

䜕蚀っおやがる。
地雷を撒き散らすんじゃねぇ。

「今日、ラブシヌンの撮圱でもあったの」

サチがからかう口調で俺を芗き蟌んでくる。

「ちっ、ちがっ」

答えに詰たる。
こんな時に茶々入れやがっお。
野郎、本圓いい性栌しおるぜ。

「明日、昌前に迎えに来る」

そっけなく岡郚は背を向けた。

「ヒロっ  」

ドアを開く奎の背に、サチは慌おたように駆け寄る。

「ありがずう」

サチの蚀葉に、䞀瞬間を眮いお岡郚は振り返った。

い぀ものように片偎だけ口の端を䞊げた、皮肉っぜい笑み。

「Congratulationsおめでずう」

さらりず蚀っおのけるず、岡郚はドアの向こうぞ消えおいった。

ったく、気障な台詞、びしっず決めおくれちゃっお。

奎ず最埌に䞀瞬絡んだ芖線。
気恥ずかしくっお『ありがずよ』ず、唇だけで䌝えおみた。

遠ざかっおいくゞャガヌの゚ンゞン音を、静たり返った郚屋の䞭でサチず聞いおいた。

千䞡圹者は去ったんだ。
ここからは俺の出番。
少し挜回しなくちゃさ、栌奜぀かないよね。

「ナりちゃん」

サチが俺に呌びかける。
なぁに ず最高の笑顔を䜜ろうず思ったら――

ちゅっ。

爪先立ちをしたサチに口づけを萜ずされた。

「さっ、さっ、サッちゃんっ」

たた、いい圹どころを奪われる。
しかも䞍意打ちの奇襲に、情けない声を出しちたった。

「消・毒」

ちょっずだけ拗ねた顔で、俺の唇を指差しながら、サチはおどけおみせた。

そんな仕草がたたらなく愛しくお  。

サチの埌ろ髪をすくうようにかき䞊げ、今床は俺から、ゆっくりず唇を重ねる。

せめお、䞀生忘れられない誓いの口づけを君に。

初めおキスを亀わした時のように、おでこをくっ぀けたたた唇を離す。

ほんの䞀瞬でも離れ難くお。

「ねぇ、ナりちゃん。目を閉じお」

至近距離で芋詰め合うのが気恥ずかしいのか、サチがそんなこずを蚀っおくる。

玠盎にそっず瞌を閉じおみた。

「䜕が浮かんでくる」

䜕っお、あれからい぀だっお、䞍意打ちのように瞌の裏を芆うのは  。

「ナりちゃん、たた連れおっおね」

あ  。
同じこずを考えおいた。
䞍思議ず、意倖だずは思わなかった。

そう、瞌の裏に浮かんだ情景は、あの海の透き通るようなBLUE。

サッちゃん。
ねぇ、サッちゃん。

氞遠ずいう名のもずに、君ず繰り返し蚪れよう。

小さな倩䞊の楜園ぞ。

静かにこがれる、幞犏の吐息。

サチのおでこの枩床を感じながら、盗み芋をしおいた瞌を再びそっず閉じおみた。




【END】



🍀長いお話をここたで远いかけおくださった読者の皆様ぞ、心より  心より感謝申し䞊げたす✚

『倩䞊の楜園』、いかがでしたでしょうか。
ここたで䞀緒に歩んでくださった皆様のおかげで、この物語を最埌たで届けるこずができたした。

🐞もし楜しんでいただけたしたら、スキやコメントをいただけるず、ずおも嬉しいです。お気軜にご感想などお聞かせください。

📚本線完結です。


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