何度も読み返す人生を思う小説
『アナン、』(上・下)
時々読み返す愛読書の一つは、『アナン、』(飯田譲治・梓 河人/著)です。
ファンタジーであり、男の子の成長物語であり、人の生涯を描いた人間ドラマでもあります。
人生があり、愛があり、人の心の暗い部分も描かれている、不思議で深い本です!
第一ページ目に、こうあります:
すべての親と、すべての子へ
主人公は、生きることをあきらめようとした、記憶喪失のホームレス・流(ながれ)。
彼が赤ちゃんを拾ったところから、長い物語は始まります。
その赤ちゃんはアナンと名づけられ、育っていきます……。
アナンの成長物語といってもいい、ファンタジーです。
下巻の帯に、こう書かれていました:
人間の持つ可能性を信じたくなる。
そんな奇跡の物語だ。
愛する人のために生きること
この作品を通して思うのは、(人は愛する者のためなら、自然と、ものすごい力があふれてくる)ということ。
アナンに出逢った流や、ホームレスたちが、アナンのために必死に子育てをしていく姿は、胸を打たれずにはいられません。
無気力で、日々を何とかやり過ごすだけだった彼らが、変わっていく様子は、圧巻でした。
アナンとアナンの生み出す芸術の魅力、流、早苗さん、その娘の千草ちゃん、亀之助さん、毬絵ちゃん、健太くん、猫のバケツ、電波青年……。
様々な登場人物の一人一人を、共に見守りながら読み進めるうちに、じんわりと愛着がわいてきます。
中でも、下巻終盤に再登場する電波青年のシーンは、大好きで、思わず涙しそうになりました。
人が人を想うって、やっぱり素晴らしいと、心から思える傑作です。
あとがきより
飯田譲治さんのあとがきに、こうあります:
長いのか短いのかはわからないけれど、人生が旅であるということを、最近実感するようになってきた。
人生にはいろんなことがある。楽しい瞬間も、死にたいと思う程の絶望感も、誰もが体験する人生の要素だ。流とアナンの人生は創作の中で生み出されたものだが、この作品を追体験することによって、ぼく自身が学ばせてもらったことも数え切れないくらい存在する。
『アナン、』を読むたびに、不思議と身体の奥から力がこみ上げてくるような気がします。
人を、人生を、誰かを大切に思うことを、改めて想います。
「美しい物語だ。力に満ちた物語だ」(北上次郎氏)という、この作品を、少しでもたくさんの方に知っていただきたいと、願っています。
『ぼくとアナン』(梓 河人・著)
ちなみに、『アナン、』に登場する、流の愛猫「バケツ」目線の物語、『ぼくとアナン』があります。
お子様にぜひおすすめです。
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